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第34話 快適な海中生活

 次の日。

 今日は外に出ずに合成で一日を過ごす。

 メンバーは俺とナビ子にラビットA。

 結局ラビットAもカードに引きこもらずに、すっかりいつも通り。

 まぁ家の中だとニオイもしないから、他の場所と変わらないってのもあるだろうが。


「きゅい! がんばる」


 それ以上に、今後の海を快適に過ごすための魔法開発ってことで、ラビットAも意欲的だ。


「私は……はぁ。商談に行ってきます」

「マスター。行ってきます……」


 アズリアは昨日に引き続き今日も商談と無人島に関しての聞き込み。

 護衛は変わらずティータにお願いしている。

 俺たちが家にいるのに、自分たちだけ仕事に行くからか、アズリアもティータも足取りが重く……うん。

 やっぱり近いうちにアズリアには何らかの形で報いなければ。

 ティータにもね。


 そして、残った一人……鈴風はと言えば。


 さっきから少し離れた場所でカチャカチャと……準備しているのは茶道具。

 どうやらお茶を点てるつもりのようだ。


 町の外のモンスターは代わり映えせず、かといって無人島にも行けない。

 その為、今日のところは俺たちの見学をすることにしたようだ。

 ったく、暇ならアズリアの護衛をしてくれたっていいのにな。


「わたくしのことはお気になさらず」


 いや、気になって仕方ないんだが。

 鈴風がお茶を点てることができるのもビックリだし……流石にこれは武芸百般とは関係ないよな?


「うわぁ。鈴風ってそんなこともできるんだ」

「きゅぎゅか、すごーい」

「ふっこの程度、日本人なら当然のたしなみというもの」


 いや、現代日本人はお茶を飲んでも茶道のたしなみはないから。

 ……どうでもいいけど、着物姿で茶を点てる鈴風は様になるというか。

 帝都の料亭のように和室があれば、さぞや絵になっただろう。


 っとと、本当に気を取られてどうするんだって。


「え~っと、とりあえず新しい魔法として……」

「きゅい! ニオイをどーにかするー!」


 ……あ~ニオイ対策ね。

 ソリッドエアがニオイを遮断できても、動きづらいのと気配を察知しにくいから、日常生活では使えないって結論に至ったんだが……。

 ぶっちゃけニオイ対策は、もうどうでもいいと思うんだよね。


「もうニオイに関しては適応力のスキルで慣れればいいんじゃね?」

「きゅぴえ!? てきとー!」


 適当って言われても……だって、元々引きこもったラビットAを外に出すための口実だったし。

 多分、対策しなくても、もうカードに戻ることもないだろうし。


 それに対策したとしても、ニオイを遮断する系じゃ、鼻が利くラビットAの場合だとデメリットもあるし。


 それならいっそのこと、ニオイそのものに慣れてもらったほうが早い。

 スキルがなくてもそのうち慣れるんだから、スキルがあればすぐに慣れるだろう。


「きゅむむ……本当に慣れるかな?」


 それでもラビットAは微妙な感じ。

 う~ん。どれだけ苦手なのか。


「もうラビットAは心配性なんだから。ほら、ラビットAはシュートのニオイにも慣れたでしょ。だから大丈夫だよ」

「きゅ? そっか!」

「……その例えはどうかと思うんだが」


 それだと俺のニオイが臭かったって言っているように聞こえる。


「……シュート、気づいてないの? 汗とか足とか口とか……」

「口臭きゅート」

「ちょっ!? うそ!? ……マジ?」


 ヤバい。すっごく恥ずかしいんだが!?

 そう思っているとナビ子とラビットAが笑い出す。


「あははっ。冗談だよ冗談。冒険中で数日過ごした時の話だから。普段は大丈夫だよ」

「きゅしし。でも、耳の裏はちゃんと洗ったほーがいーかもー」


 なんだ。冗談……と、微妙に納得できないんだが。

 そりゃ、冒険中は汗臭くなったりするけど……ラビットAのはガチだろ。

 ……うん。今日から耳の裏は重点的に洗うことにしよう。


「んん。というわけで、今回のメインは……海中で快適に生活するための魔法開発だ」


 気を取り直して今回の本題を説明する。

 今回の本題はニオイ対策ではなく海中対策。

 頼りのソリッドエアじゃ海中で息ができても、一時間ごとに使わなければならない。

 海にはクラーケンのような大物もいるし……下手に戦闘中に効果がなくなると、本気で死ねる。


 ってことで、ソリッドエアを元に海中でも長時間呼吸ができる魔法。

 ついでに暗い海中で視界良好で、さらに自由に動き回れるようになれば言うことない。


「やはりテキオート……」

「いや、それはいいから」


 ボソッと呟く鈴風に思わず突っ込む。

 確かにそれで全て解決するんだけどさ。


「きゅう? テキトーオー?」


 う~ん。おしい。

 適当じゃなくて適応な。

 ……いや、ラビットAの場合だと、適当の方が合っている気がする。


 このラビットAに食いついたのは鈴風。


「おや? 興味がありますか?」

「きゅい!」

「いいでしょう。説明しますから、こちらに来なさい。お茶もご馳走しましょう」


 その言葉にラビットAはトテトテと鈴風に近づく。


「よいですか。そもそもひみつ道具とは未来から……」

「きゅむきゅむ」


 おいおい。猫型ロボットの話から語り始めたぞ。

 ……もう二人のことはほっておくことにして、ナビ子と相談することにする。


「ぶっちゃけ、ソリッドエアと適応力のスキルを合成すれば、ピッタリの魔法が完成すると思わないか?」


 呼吸ができるソリッドエアと、どんな環境でも適応する適応力。

 相性バッチリだと思うんだが。


「ねぇ。それって魔法じゃなくてスキルでいいんじゃない? スキルを覚えれば魔法みたいに毎回カードを使う必要なくなるし」


 ナビ子の言う通り、スキルは覚えさえすれば魔法カードみたいに毎回カードを使う必要はなくなる。


「確かにスキルの方が便利だけど……仮にスキルが完成しても二つほど問題がある」

「問題?」

「そう。ひとつ目は……人間が使えるか不明ってこと」


 スキルの中にはモンスター専用スキルが多数存在する。

 主に身体的特徴のせいだけど。

 仮に水中呼吸のスキルがあったとして、鰓がないと呼吸できなかったり……無理やり取得して自分の体に鰓ができたら嫌すぎる。


「もう一つはレベルの問題」


 合成後はレベル1になるから……下手すると海中で呼吸ができるようになるのにレベル10になるのが条件だといつになることやら。

 逆に魔法ならカードを使う手間はあるけど、レベルは関係ない。


「ってことで、今回は魔法にする予定だ」

「なるほどねぇ。納得したわ」


 ナビ子が納得したことで、合成を考える。


「それなら、ささっとソリッドエアと適応力で合成しちゃおうよ」


 それな。

 でも……ソリッドエアはともかく、適応力は3枚しかない。

 失敗すると……ねぇ。


「本来ならこういう時に仮想合成使うと思うんだけど……」

「いや、それは封印中だし」


 封印を解くくらいなら失敗したほうがいい。

 まぁ失敗してもまだあと2枚あるか。


 ってことで、ちゃちゃっと合成。

 それと同時に鈴風の側にいたラビットAが立ち上がる。


「……ライファスキン?」

「きゅい!! テキトーオー!!」


 俺の合成とラビットAの創造魔法が同時に完成した。

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