第33話 これからの方針
クラーケンなど大物の話を聞いたからか。
それとも無人島に興味を持ったからか。
どちらにせよ、拗ねてカードに引きこもるのは勿体ない思ったようで。
「もー。きゅートはしょーがないんだから」
減らず口を叩きながらも、テレポートでアクアパッツァへ帰還。
拠点に帰り、アズリアと鈴風と今日の情報交換をする。
……アズリアはともかく、鈴風はちょっと不機嫌そう。
「私の方は無事に良い取引ができそうです」
アズリアは無事にこの町の商会長と商談できたようだ。
ただ……俺が聞きたいのはそっちじゃないんだよなぁ。
「えと、ソリッドエアの効果の方は……」
「そうですね……結果から言いますと、微妙かと」
「び、びみょう?」
ニオイが防止できたか防止できなかったじゃなくて、微妙とは。
「え~と、なんと言いましょうか。無事にニオイは防止できたのですが、終始ぬいぐるみの中に入っているような、居心地の悪さといいますか」
あ~それは。
俺も宇宙服を着ているイメージだったもんなぁ。
「別に視界が悪くなるわけでも、中が暑いわけでもないのですが、歩く際に抵抗感がありまして。それから、私はスキルを所持してませんが、いつもより周囲の気配を察知しづらい感じがします」
周囲と完全に遮断されるから、気配が感じにくくなるのはそうかも。
「最後に……魔法の持続時間は一時間のようです」
なるほど……一時間か。
少なくとも海に潜り続けるには……一時間ごとに発動させるってのも忘れそうだし。
まぁ魔法カードの威力が一律だから一時間だが、ラビットAが全力で唱えた場合はもう少し持続時間が長くなるか?
「う~ん。確かに微妙かも」
「でしょう」
やはりソリッドエアを改良する方がよさそうだ。
続いて鈴風の報告。
「この辺りのモンスターは帝都となんら変わりません」
それが不機嫌の理由らしい。
せっかく新しい町にやって来たのに、代わり映えしないモンスターとしか戦ってないとなれば、バトルジャンキーの鈴風としては不満だろう。
……これは、クラーケンの話はしない方がいいな。
絶対にラビットAみたいに文句を言うに決まっている。
「えっと、じゃあ俺の方は……」
ってことで、クラーケンのことは伏せつつ報告。
あっもちろん刺し身で日本酒を楽しんだことも。
不機嫌な鈴風を相手に煽ったりしたら、マジギレされかねんからな。
なので、フライングレイが有用なスキルを持っていたことと、無人島を発見したことくらいしか報告することがないけど。
「……随分と楽しそうで」
「釣りだけではないとは思いましたが……やはり大人しくはしないんですね」
あれぇ?
クラーケンのことを話してないのに鈴風に睨まれてるぞ。
アズリアも苦笑いを浮かべているし。
「その無人島。この町で存在が知られているか、調べてみましょうか?」
「あっそうだな。頼む」
確かにそれは必要なことだ。
これからあの無人島を探索するつもりだけど……誰かの使用地とか、すでに調べつくされた後ってんなら、あの無人島自体の価値が微妙になる。
よし、無人島の探索はアズリアの調査待ちとして、最優先は魔法の開発。
「魔法の開発はラビットAにも協力してもらうぞ」
「きゅい!」
ラビットAは魔法の創造で、俺は合成方面からってことで。
あっラビットAにはその前にこの家の塀づくりをしてもらわないと。
んで、無人島が未開ってことなら、魔法開発と並行して無人島探索。
島の探索はホブAたちに任せればいいだろう。
「わたくしにも探索させなさい」
あっはい。
好きにして下さい。
んで、魔法開発が完了したら、はれて海の中へ。
「こんなスケジュールでいこうと思うんだが」
「いいんじゃない?」
「きゅい! がんばる!」
ナビ子とラビットAは問題なしと。
「では私は明日にでも無人島のことについて話を聞いてきます」
「うん。そっちは任せる」
アズリアも問題ないようだ。
にしても……ぶっちゃけアズリアには頼りっぱなしだな。
今度、アズリアの仕事も手伝ってやろう。
「ちょっと待ちなさい。明日、無人島探索ができないのであれば……わたくしがやることがないではないですか!?」
……知らねーよ。




