第31話 海のモンスター
海のモンスターを全く見かけないから、沖に出て確認することにした俺とナビ子。
沖に出るといっても、船はないし、海の中を進むわけではない。
「ってなわけで、適当に海の上を飛んでくれ」
「グルルゥ」
グリフォンに乗って空から確認するのだ。
海上からだとモンスターは見つからないかもしれないが、釣りで時間をかけたから、今回は偵察みたいなもの。
見つかれば御の字ってことで。
「えへへ。こうやってダブリンとつぐみんに乗るのも久しぶりだね」
「クイッ」
「クルックー」
ナビ子はグリフォンではなく、自分専用のモンスターであるスイートツグミとカラドリウスに乗って移動する。
乗るのは久しぶりでも、時間があるときには、世話をしているのは何度も見かけているから、大事にしているのは知っている。
……そういえばこの二匹は一回進化してから随分とご無沙汰だな。
ナビ子はこの二匹以外に自分のカードは持ってないから……よし。
どうせもうすぐ新たなモンスターが大量に増えるから、その時にこの二匹も合成してやるか。
それから数十分。
アクアパッツァから30キロくらい離れただろうか。
未だにモンスターの影も形も見えない。
それどころか、見渡す限りの水平線。
別大陸とか……無人島でもいいから見つからないものかと。
「ねぇねぇシュート。海のモンスターってどんな子がいるのかな?」
そうだなぁ。
「やっぱり有名どころでいうと、クラーケンとか、シーサーペントとか……リバイアサンとか?」
「……大型ばっかじゃない」
そうは言われても、やっぱり海の定番どころといえばそうなるだろ。
多分、どれも星4とか星5だと思うから、是非とも手に入れたい。
「後は……そうだな。マーマンとかマーメイドとかサハギンとか……それこそセイレーンとか?」
「半魚人タイプってことね。……シュートさいてー」
「なんでだよ!?」
そりゃあ、マーメイドって美しいってイメージがあるし、是非とも仲間にしたいという思いはあるが。
マーマンやサハギンも言ってるんだから、さいてーはないだろうに。
「じゃあナビ子の方はどういったイメージを持ってるんだよ」
「アタイ? アタイはね……やっぱりサメかな」
サメ……ねぇ。
確かに定番っちゃあ定番だな。
「アタイのデータによると、最近のサメって、空を飛んだり宇宙に行ったり……タコと合体したり、頭が6個もあったりするんだよ」
「……どこのB級映画の話だよ」
ナビ子の知識は電子妖精時に運営から与えられたもの。
……どう考えても、そのサメ映画の知識は必要ないよな。
うん。きっとナビ子を作った運営はサメ映画が好きだったに違いない。
「まぁでもサメなら……海の上からでも見つかるかな?」
サメと言ったらやっぱり海面に現れる背びれ。
あの恐怖心を煽る音楽とともに現れてくれたら……
「あっシュート。あれっ!?」
「サメか!?」
「いや、サメかどうかは分からないけど……ほれ」
ナビ子が指した方角には……ちょっと離れた場所で広範囲に水しぶきが。
何か集団で移動している?
う~ん。ここからじゃ遠くて何かわからない。
だがようやく見つけた生き物の気配。
「よし、ちょっと近づいてみようか」
「グルルゥ」
グリフォンに水しぶきの方へ向かわせる。
……そこにはB級映画のサメよりもありえない光景。
「うわぁ……」
見えてきたのは……猿の群れ。
多分30匹以上はいるであろう猿の群れが、泳ぎながら移動していた。
「……なんで猿?」
これが陸地に近い場所なら、遊んでいるのかと分からなくもないが、陸地なんかどこにもない海のど真ん中じゃなぁ。
「ねぇシュート。この猿たち、足が魚じゃない?」
「えっ!?」
ナビ子の言葉にもう一度猿の群れをよく見てみる。
水しぶきでよく見えないが……なるほど。
確かに水しぶきを上げているのは足ではなく、魚の尾びれのように見える。
よし、とりあえずハイアナライズして図鑑確認だな。
―――
シーモンキー
レア度:☆☆
上半身が猿、下半身が魚の半獣半魚のモンスター。
――――
入手してないので詳しい説明文はないけど……うん。そのまんまだな。
う~ん。数は多いけど、レア度は星2だから、そんなに強くはないかな?
「……捕まえるか」
流石にこのまま見逃すのはもったいない。
「どうやるの?」
一番簡単なのは、あの群れに広範囲の魔法をぶっ放すこと。
星2のモンスターだから、星3の魔法を使えば全滅するだろう。
ただ、それでシーモンキーの死体を回収できるかといえば……地上とは違い、波に流されたり、海中に沈んだりして全部は回収できないだろう。
回収できないのに全滅させるのは……流石にねぇ。
とりあえず数枚だけ手に入ればいいだけだし。
「グルルゥ」
グリフォンが何か言いたげに俺に向かって鳴く。
「もしかして任せろって言ってるんじゃない?」
「グル!」
どうやらその通りらしい。
任せろってことなら、任せるけど……俺が乗ってると邪魔ってことだな。
なら別の飛行モンスターを用意してと。
俺はロック鳥を呼び出して乗り換える。
「グルルゥ!!」
グリフォンは一鳴きすると、シーモンキーに向かって急降下。
海面にいたシーモンキーを一瞬のうちに両前足の鉤爪で掴む。
「「「キキキぃぃ!!」」」
突然襲われたシーモンキーは慌てて海の中へと潜っていく。
そりゃグリフォンに襲われたら慌てて逃げるよな。
「グルゥ」
戻ってきたグリフォンの両前足には二体のシーモンキーが。
……まぁ二匹で十分か。
「よーしよし。よくやったぞ」
俺はグリフォンを労ってシーモンキーを受け取る。
掴んだだけだと思っていたが、どうやら既に二匹は死んでいるみたいで、アッサリとカードになる。
「あっシュートあそこ! エイが空を飛んでる!」
「なにっ!?」
空飛ぶエイだと!?
絶対モンスターに違いない。
「よしグリフォン。次はエイ狩りだ!」
「グルルゥ!!」
モンスターも欲しいけど、エイヒレでお酒が飲めたら……。
いいじゃんいいじゃん。楽しくなってきた。




