第27話 シザークラブ
「もう、うみ嫌い! おうち帰る!」
散々な目に遭って、拗ねてカードに戻ったラビットA。
「……ねぇシュート。ラビットAが引きこもっちゃったけど、どうする?」
「どうするって……落ち着くまでそっとしとくべきだろ」
いつもならそこら辺でいじけるのに、カードに戻るくらいだから、いつも以上に怒ってる。
多分にんじん料理を用意しても釣られるかどうか……。
おうち帰ると言ったくらいだし、下手するとライラネートに帰るまで出てこないかもしれない。
「……サナに連絡して、牧場に戻してやった方がいいのかな?」
サナにはラビットAの分身カードを持っているから、連絡すれば向こうで解放してくれるだろう。
「駄目駄目。そんなことしちゃ、仲間はずれにされたと思って、ラビットAが本当に拗ねちゃうよ」
「いや、でもさぁ」
「いいシュート。本当に牧場に帰りたかったら、ラビットAはカードに戻らずテレポートで帰ってるよ」
それなのにカードに戻ったということは……まだ海を楽しむことを諦めてないと。
もしかしたらカードの中で対策魔法を考えてたりするかもな。
ってなわけで、やっぱりラビットAが落ち着くまではそっとしておくことにする。
「シュート。これからどうする?」
どうやらナビ子もこれ以上遊ぶ気にはなれないみたいだ。
「とりあえず……シザークラブの確認かな」
さっきから確かめたくて仕方がなかった。
なにせ久しぶりに自分で手に入れた新しいモンスターだ。
「……そのモンスターのせいでラビットAが引きこもったってのに」
一方でナビ子は微妙な表情。
確かにラビットAにとどめを刺したのはシザークラブが尻尾を挟んだからだ。
あれがなかったら、ラビットAはまだ遊んでいたに違いない。
「それはそれ、これはこれだ」
「……シュートもブレないよね」
ほっとけ。
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シザークラブの死体【素材】レア度:☆☆
シザークラブの死体。
上質の素材になるかどうかは貴方次第
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へぇ。星1かと思ったけど、星2なんだ。
星1は……なんだろ。ワイルドクラブとかいるのかな?
自分で解体すれば上質な素材になるかもしれないが……面倒なので、このまま分解。
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シザークラブの魔石【素材】レア度:☆☆
シザークラブの魔石。
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当然ながら魔石も死体と同じ星2。
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シザークラブの肉【素材】レア度:☆☆
シザークラブの肉。
茹でて食べると美味しい。
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肉……見た目は完全にザリガニなんだけど。
ロブスターみたいな味だったら嬉しいな。
いや、そもそもクラブなんだからカニなんじゃ?
甲羅も硬そうだったし……鈴風にでも食べさせてみるか。
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シザークラブの甲羅【素材】レア度:☆
シザークラブの甲羅。
様々な素材に適している。
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様々な素材か。
甲羅だから防具にできそうだけど……ああ、でも砕いてビスクにしたり料理にも使えそう。
そういえば、肥料とかにもできるんじゃない?
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シザークラブの爪【素材】レア度:☆☆
シザークラブの爪。
武器の素材に適している。
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ラビットAの尻尾を挟んで離さなかったんだから、武器の素材としてはかなり使えそう。
ふむ。甲羅だけ星1だけど、他は星2か。
手動で解体すれば、星3とかになったのかな?
まぁ素材はこの程度で、いよいよ本命。
魔石をモンスターカードへと変化させる。
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シザークラブ
レア度:☆☆
固有スキル:怪力、砂隠れ、砂泳
クラブ系初級モンスター。
砂の中に身を隠し、獲物を狙う。
怪力自慢の爪に挟まれると、人間の足など簡単に引きちぎられる。
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へぇ。面白いスキルを持っているな。
「怪力って中級スキルよね」
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怪力
レア度:☆☆☆
力が上昇するスキル。
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同種のスキルは、星1が腕力、星2が剛力、星3が怪力なので、星2のモンスターに対して破格のスキルだと思う。
「人間の足を簡単に引きちぎるって……よくラビットAの尻尾は無事だったな」
痛がっているだけで、千切れはしなかった。
というか……切るじゃなくて、千切るってのが、怪力スキルのヤバさを物語っている。
「流石に星2のモンスターの攻撃で致命傷にはならないよ」
あれでもラビットAは星5のモンスター。
見た目じゃ分かりにくいが、身体能力そのものもずば抜けているってことか。
次は砂隠れ。
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砂隠れ
レア度:☆☆
砂中で気配を消すスキル。
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一言で言えは砂専用の隠密スキル。
レア度は星2と隠密と同じだが、特化している分、隠密性が増している可能性はある。
「しかし……それでも探知で気づくんじゃないのか?」
「えっいやぁ……はははっ」
ナビ子……遊びに夢中で探知をサボってたな。
ラビットAも第六感が働かなかったことを考えると、完全に油断してたっぽい。
……自業自得じゃないか!?
「そ、それよりも次のスキルを見よ!」
……まぁいいけど。
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砂泳
レア度:☆
砂中を泳ぐスキル。
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砂泳……すなえいでいいのかな?
その名の通り砂の中を泳ぐスキルのようだ。
「うちのワームやカエルが地中移動を覚えているけど、あれと違うのかな?」
「う~ん。予想だけど、あっちは地中でこっちは砂限定じゃない? 後は泳ぐから早かったり」
なるほど。
移動スピードや土質によって移動できるかの差か。
まぁ星1スキルだから、そこまで大したスキルでもないか。
そして個別スキルはなしと。
野生産だから仕方ないけど、ちょっと残念だな。
それにしても……アズリアが言っていた町の外はモンスターが出るから自己責任ってのは、こういう意味だったんだな。
多分、この砂浜にはシザークラブ以外にも隠れているモンスターがいるはず。
「町の中の砂浜にはモンスターがいないんだろうなぁ」
漁業ギルドがしっかり管理しているんだろう。
うん。それならお金を払っても町の中の砂浜に行く。
潮干狩りや海竜石探しで足を失いたくないもんな。
「……他のモンスター探す?」
俺は少し悩んで首を振る。
「いや、一旦町に帰ってアズリアたちと合流しよう」
せっかくだからもう少しモンスターを集めたい気もするが、ラビットAがいない状態ではねぇ。
足失いたくないし。
ラビットAのこともあるし、色々と対策を考えて出直すことにした。




