第24話 三体の氷結モンスター
ムサシに魔の覚醒スキルを覚えさせ、落ち着いたところで。
アクアパッツァへはまだまだあるし、お待ちかねの魔石タイムといきますか。
ちなみに同行を許可した際の魔石は、鈴風が満足する度に渡すってことらしく、まだ貰っていない。
ってことで今回は決闘の報酬だった三つの魔石。
最初はもちろんアイスワイバーンから。
――――
アイスワイバーン
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:翼竜、竜の息吹、氷結
個別スキル:火属性弱体
翼竜系上級モンスター。
氷雪地域を渡り生活している。
氷のブレスを吐き、吹雪を巻き起こす。
――――
魔石と同じくレア度は星4。
ってことは、普通のワイバーンが星3で、星5は特殊個体って感じかな。
「ギルドで聞いた話でござるが、翼竜種は渡り鳥のような習性があるそうでござる」
へぇ。ワイバーンにそんな習性があるのか。
アイスワイバーンに関しては、雪が降っている場所を渡り飛んでいると。
んで、冬の帝都付近にやってきたから退治したと。
固有スキルは三つ。
――――
翼竜
レア度:☆☆☆
飛翔、硬質化、ブレス、咆哮、再生を有した種族特有のスキル。
――――
似たようなスキルだと、フォレストドラゴンが竜スキル、グリムが竜王スキルがある。
竜には飛翔の能力がなかったり、竜王には王の威圧があったりと、細かな違いはあるものの、根本的には変わらない。
種族特有だからか、カード化みたいにレベルで解禁ではなく、レベル1から全能力が使え、レベルは能力アップになるようだ。
二つ目の竜の息吹はグリムも持っていた。
口から出すブレスや咆哮などの威力が上がるスキルだ。
氷結は……なんだろう?
――――
氷結
レア度:☆☆
氷結属性を得る。
他属性が使えなくなる代わりに氷結属性の威力が増加する。
――――
なるほど。
本来、氷結属性なんて存在しない。
というか、水属性の一部に氷――氷結が含まれている。
だから水の素質などを持っていれば、水魔法と氷魔法の両方を使えるのだが……この氷結スキルを所持していると、水魔法が使えなくなり、代わりに氷魔法の威力が上がると。
このアイスワイバーンは魔法は使えないが、ブレスなどに氷結属性が付与されるのだろう。
う~ん。
メリットなのかデメリットなのか微妙なスキルだな。
「氷結スキル以外にも、植物魔法しか使えなくなる深緑もあります」
へぇ。流石はティータ。
ナビ子とは違って、為になる補足をしてくれる。
今度、全属性で特化スキルを探してみるか。
ってことで……うん。固有スキルは普通に強い。
問題は……個別スキルの方。
――――
火属性弱体
レア度:☆
火属性の攻撃を受けると弱体化する。
――――
合成とは違い野生産だから、個別スキルには期待してなかったが……火属性耐性じゃなくて、火属性弱体て。
完全にデメリットしかないスキルだ。
つーか、元々火属性は弱点だろうに、さらに弱くなるとか。
つまり、コイツはアイスワイバーンよりも弱い固体ってことか。
まぁ別にその辺はどうでもいい。
新たなスキルを与えればいくらでも強くできるしね。
それに、しばらくはこのままだけど、将来的には星5を目指してもらうつもりだし。
うん。これはこれで満足満足と。
続いてはホワイトフォックス。
――――
ホワイトフォックス
レア度:☆☆☆
固有スキル:水の素質、氷結、擬態、危険察知
個別スキル:逃げ足、化生
狐系中級モンスター。
氷雪地域に棲息する真っ白な狐。
常に冷気を纏っており、生きているホワイトフォックスに触れると凍傷を起こす。
その冷気を纏った毛皮は夏でも涼しく、高級素材として取引されている。
歳を重ねるごとに尻尾の本数が増え進化する。
――――
とりあえず真っ先に気になるのは化生のスキル。
――――
化生
レア度:☆☆☆
姿形を変え欺くスキル。
――――
う~ん。化け狐?
ラビットAみたいに人になったりして。
雪で狐で……手袋とか買いに行ったりして。
とりあえずカードのイラストは人型ではなく、思わず触りたくなるような真っ白のモフモフの狐。
しかも……見た感じ小狐って感じ。
説明文にあった尻尾は……二本に見える。
これ……カードから出したら絶対かわいいと。
あまりモフり属性のない俺でもモフりたいと思うもん。
でも……触ると凍傷するって罠だよな。
攻撃方法は魔法だけか。
ただ、水の素質を持っているけど、氷結スキルのせいで、アクアのような水魔法は使えないと。
代わりにアイスのような氷魔法の威力アップするけど……うん、戦闘要員ではなく癒やし要員だな。
最後はイエティ。
――――
イエティ
レア度:☆☆☆
固有スキル:氷結、怪力
個別スキル:器用、投擲
魔獣系中級モンスター。
雪山に棲息する二足歩行の魔獣。
非常に凶暴な性格により発見されると襲いかかってくる。
火属性の攻撃が有効だが、頑丈な体と怪力により、接近戦は控えた方がいい。
――――
一言で言えば雪男……というより雪ゴリラだな。
イラストだけだと具体的な身長は分からないが……少なくとも人間と同じ身長ではなさそう。
小さくても3、4メートル位はありそうだ。
頑丈とか怪力云々を別にしても、そんな巨体と接近戦はしたくない。
でも、個別スキルの器用と投擲が気になる。
遠距離攻撃ができるイエティ?
……雪玉を作って投げたりして。
にしても、三体全てが固有スキルに氷結を持っているのな。
もしかして氷雪系モンスターはもれなく氷結スキルを持っている?
……流石に三体じゃ判断できないか。
本当なら三体ともカードから呼び出してみたいけど……今はアクアパッツァに向けて街道を移動中。
何度か馬車ともすれ違ったし……ユニコーンに驚かれたけど。
でも、アイスワイバーンやイエティは……ユニコーンの比じゃなく大騒ぎになると思う。
残念だけどここは自重すべき。
だけど……ホワイトフォックスだけなら大丈夫かな?
どう見ても大きくないし、何より癒やされたい。
モフるのは……凍傷の恐れがあるが、マスターの俺なら大丈夫なんじゃないかなぁと。
御者台でモフりながらまったり移動。
めっちゃやりたい。
ただ万が一に備えて解放は御者台ではなく地面で。
ユニコーンをストップと言ってホワイトフォックスを解放。
――現れたのは全長1メートル程度。
尻尾が30センチくらいありそうだから、体長は70センチくらいの小狐だった。
ビックリするくらい真っ白で、予想通り……いや、予想以上のモフモフっぷり。
……狐ってこんなにモフモフだったっけ? と思うくらいのモフモフ。
狐と知らなかったら、犬か狼と間違えていたことだろう。
問題は触っても平気かどうか。
俺は御者台から降りてホワイトフォックスに近づく。
「あああーー!!! 何してんのさ!」
突然後ろから聞こえた声にビクッとなる。
振り向くとそこにはナビ子にラビットA、それに鈴風が馬車から降りてきていた。
どうやら馬車が止まったから様子見で降りてきたようだ。
「シュート!! アンタまた勝手に新しい子を……新しい子を仲間にする時は、アタイも一緒っていつも言ってるでしょ!」
いや、お前は楽しく女子会してただろと。
「大体シュートは……いや~ん。何この子。すっごくかっわい~」
俺に文句を言おうとしたナビ子がホワイトフォックスを見て一気にデレッデレになる。
「きゅむむ……」
対して複雑そうな表情のラビットA。
またマスコットポジションが脅かされるとでも思っているのだろう。
「てっきりモンスターか盗賊でも現れたかと思ったら……」
期待外れとばかりのバトルジャンキー鈴風。
流石にホワイトフォックスは獲物としては対象外………いや、鈴風は一回倒してるから!?
こんな可愛い子を退治するとか極悪人か?
「うひゃああっ!?」
ナビ子が悲鳴を上げる。
どうやらナビ子がホワイトフォックスに突貫し……冷たさに思わずってとこみたいだ。
……うん。冷たいだけで凍傷は起こらないみたいだな。




