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第22話 新たな同行者

 決闘から一夜明け。


 鈴風と合流したのだが……朝っぱらだというのに酒を飲んでる。

 ……もしかして夜通し飲んでたのか?


「……随分とご機嫌だな」

「ご機嫌? はっ冗談。わたくしは敗者。ご機嫌であろうはずがありません」


 そう言う鈴風は楽しそうに酒を注ぐ。

 ……どう取り繕っても、負けたヤケ酒には見えない。

 どうやら無事に引退できたみたいだ。


「まぁいい。まずはこれを返す」


 俺はアズリアから受け取った静嵐刀を鈴風に返す。


「一応言っておくが、俺がアズリアから聞いたのは決闘が終わってからだからな」

「あの決闘をした後で疑うわけないでしょう」


 アズリアがいつ鈴風から静嵐刀を預かったのか。

 昨日問い詰めた……というか、普通に話してくれたが。

 その話によると、アズリアは先日の商談時に鈴風と会っていたのだそうだ。


 何故商談の席に鈴風がいたのか。

 どうやら俺を探しに来ていたらしい。

 前日に酒場で商談の護衛をすると言っていたので、ファーレン商会の商品を取り扱っている商会にいると思ったそうだ。

 俺を探していた理由は、当然だが決闘前に静嵐刀をカードにしてもらうため。


 カードの修復機能に関しては、カード化の初期能力だからムサシも知っていた。

 ラビットAとの決闘は激戦になるだろうから、万が一を考えて修復できるようにしたかったと。

 実際にポッキリと折れたんだから、その行動は正解だったわけだ。


 ただ肝心の俺が買物でいなかったから、代わりにアズリアが引き受けたと。

 まぁ鈴風はカード化のことを知っているから、他人にバレなかったのなら、別にかまわない。

 そこでアズリアも使えるのであれば、出来れば決闘まで秘密にしてほしいとお願いしたと。


 理由としては、ガチでの戦いに余計な情報を与えたくなかったかららしい。

 カードにすることで武器の名前や詳細も分かるから対策できる。

 それと……決闘中に武器が壊れても仕方がないとは思うが、狙って破壊するような真似はしない。

 が、その武器が修復できるなら話は別。

 むしろ優先的に武器破壊を狙ってたかもしれない。

 なにせ決闘前は武芸百般の能力を知らなかったから、武器を失えばこちらが圧倒的に有利になると思っただろう。

 そして破壊するだけなら、叩き折らずとも腐蝕系の魔法とか、より簡単な方法はいくらでもある。


 ただ鈴風は武器を失えば負けるつもりだったから……それをされると興ざめだったと。

 まぁアズリアが約束を破って俺に伝える可能性は十分考えられただろうけど……それでもいいとは思ってたんだろうなぁ。

 ガチで戦えないのは残念だけど、剣闘士を引退するという鈴風の目的は果たせるのだから。


「ほう。完全に元通りですね」


 静嵐刀を受け取った鈴風はじっくりと観察しながら言う。

 元通りと言っても新品のようにではなく、あくまでもアズリアがカードにする時の状態だけど。

 ちなみに返す際には解除(リセット)してカード化から完全に解放している。

 俺の物じゃないから、手放すときは完全に解除するのがマナーだ。

 もちろんまた頼まれたらカードにすることも考えるけどな。


「では、こちらも渡しましょう」


 きたきたきた!

 鈴風から三つの魔石が手渡される。

 ここには秘密を知ってる人しかいないから、自重する必要がない。

 俺はこの場ですぐにカードにする。


 ――――

 アイスワイバーンの魔石【素材】レア度:☆☆☆☆


 アイスワイバーンの魔石。

 ――――

 ――――

 ホワイトフォックスの魔石【素材】レア度:☆☆☆


 ホワイトフォックスの魔石。

 ――――

 ――――

 イエティの魔石【素材】レア度:☆☆☆


 イエティの魔石。

 ――――


 おおっ!?

 アイスワイバーン以外の魔石はホワイトフォックスとイエティか。


「どれも冬限定のモンスターの魔石。文句は言わせません」


 文句なんかあるはずがない。

 まさかここで冬限定のモンスターが三体も手に入るとは。


「よし。じゃあこれでお互いの要件は終わりだな」

「待ちなさい」


 俺がさっさと席を立とうとするのを止める鈴風。

 ったく。こっちは一刻も早く今貰った三体をモンスター化して確認したいってのに。


「シュート。貴方はこれからどうするのです?」

「……出来れば今日にも帝都を離れるつもりだが」


 帝都で観光したかった博物館は行ったし、買い物も済んだ。

 他にも行きたい場所はあるが……決闘で一躍有名になったラビットAを連れて観光なんか出来ない。

 かといってラビットAを表に出さずに観光すれば、絶対にラビットAが拗ねるし。

 それに観光よりもアイスワイバーンの方が大事。

 一応アズリアがもう一度商会に挨拶回りをするってことなので、それが終わり次第、帝都を出発したいと思っている。


「帝都を出てどちらへ向かうのです?」

「港町アクアパッツァだ」

「港町……ふむ」


 何やら考え込む鈴風。

 ……あんまりいい予感はしないな。


「シュート。実はわたくしはしばらくの間、暇になりまして」


 うん。知ってる。

 そして鈴風がこの後言おうとしている言葉も。


「言っとくが、連れて行かないぞ」

「…………」


 だから先手を打つことにした。

 だって鈴風を連れて行ったとこで絶対面倒なことにしかならない。


「わたくしはまだ何も言っておりませんが?」

「ならそれ以外で言いたいことがあるのか?」

「…………」


 ないよな?

 するとそこで鈴風が先程魔石を取り出した袋から……更に別の魔石を取り出す!?


「実はわたくしが持っている魔石はまだいくつか残っておりまして……わたくしの願いを聞くのであれば、シュートにこれを差し上げてもいいと……」


 この時点で俺に断るという選択肢はなくなり、鈴風がアクアパッツァに同行することが決定した。

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― 新着の感想 ―
[一言] き、きっとバトル大好きさんが近くにいれば勝手に強敵をどんどん倒して魔石を持ってきてくれてWin-Winに・・・ イロイロ大変そうだな
[良い点] シュート君は相変わらず即堕ちですねー… だがそれが良い!(・∀・´)
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