表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/449

第17話 鈴風対策

 鈴風と再会した次の日。

 俺たちは予定通り商店街巡りを行う。


「じゃあアズリア。終わったら連絡してくれ」


 アズリアとは商店街にある一番大きな店の前で別れる。

 この後は俺たちが買物で、アズリアはファーレン商会の商会長として取引先との商談だ。

 ただ商談相手とは言え流石にアズリア一人にするのは……昨日のこともあるしね。


 ってことでアズリアの護衛兼サポートとして妖精女王(ティターニア)のティータを呼び出す。


 ティータを選んだ理由は三つ。

 一つ目は護衛としての能力の高さ。

 二つ目が秘書のようにアズリアをサポートできること。

 最後に見た目や品の良さ。

 この三点を満たすのがティータしかいなかった。


 同じく妖精女王のメーブは……一応条件はすべて満たしているけど、夜の女王ということもあり、ちょっと妖艶というか。

 妖精だけど色っぽ過ぎる。

 お昼の商談じゃなくて、夜の接待の時に活躍してもらいたいものだ。


 そして、なんちゃって妖精のナビ子に関しては言わずもがな。

 護衛の能力や秘書としてのサポートはできるだろうけど、品の良さがねぇ。


「ティータ。アズリアのこと、よろしく頼むな」

「お任せくださいマスター」


 うん。もはや存在そのものが優雅で気品溢れている。

 どこかのアタイ娘とは大違いである。


「あによ」


 おっと。

 そのアタイ娘が不穏な空気を感じたのか俺を睨んでくる。

 ……俺もティータの方がいいな。


「……チェンジで」

「なにがチェンジよおおおお!!!」

「あたっ!?」


 ナビ子の必殺キックが炸裂する。

 そんなんだからチェンジって言われるんだぞ。


「すいません。私もナビ子さんよりティータさんの方をサポートに……」

「申し訳ございませんマスター。わたくしもマスターのお側にいたいのですが、この役目はアタイ娘には……」

「きゅビ子はがさつだから」

「なんで全員でアタイをディスってんのよおおお!!」


 全員からからかわれて涙目になるナビ子。

 流石にちょっと遊び過ぎたようだ。


 反省……あれ?

 でもさ、俺もナビ子から似たようにディスられることが多くない?

 むむ……そう考えるとあまり可哀想じゃないかも。



 ****


「いいか。気になるものは片っ端から買うんだ。絶対に遠慮するなよ」

「分かってるよ」

「きゅい! まーかせて!」


 食材だろうが日用品だろうが武器だろうが。

 ライラネートで見たことのないものは何でも買う。

 なぁに金はいっぱい持っているんだ。

 最悪、足らなくなったとしても、アンブロシア辺りを売れば金は手に入る。

 気にせずバンバン使えばいい。



「シュートシュート。へんてこなニンジン!」


 ラビットAが持っているのはニンジンの色をしているが……断面に無数の穴。


「ラビットA。残念だがそれはニンジンじゃなくてレンコンだ」

「きゅみぃ。ざんねん」


 ニンジン色したレンコンとか……ニンジン味なのかレンコン味なのか。

 当然買えるだけ買う。



「シュートシュート。ライラックの香水だって。ライラックの花ってライラネートには咲いてなかったよね?」


 そういえば見たことない。

 う~ん。香水もいいけど、ライラックの花の種が欲しいな。

 牧場で育てられるんだったら育てたい。


「アザレアやサナへのお土産にどう?」


 なるほど香水はお土産にいいかもしれない。

 よし、ちょっと多めに買っておこう。



「あっシュート。お魚! お魚がある!」


 おっ本当だ。魚介が売ってる。

 アクアパッツァから一日の距離なら、氷魔法とかで新鮮な状態で持ち帰ってこれるんだろうな。


「でも、アクアパッツァに行けばもっと新鮮な魚介が食べられるし」

「そっかぁ」


 流石にここで魚介を買う必要はなしと。



「やっぱり海と言ったらセーラー服よね!」

「きゅへへぇ。どーお?」


 セーラー服の試着をしたラビットA。

 水色のスカーフがアクセントとしてすごく似合ってる。


「いや~ん。ラビットAかっわいー」

「きゅみぃ」


 うん、かわいい。

 だけどセットのセーラー帽がうさ耳用ではないため、そこだけが残念。

 それに普通の服なので耐久性もないし……。


「とりあえず買うだけ買って、後で合成で強化しようか」

「きゅい!」


 合成で魔法耐性とか諸々あげて冒険でも着れるセーラー服にしてやろう。


「いーなーラビットAは。ちゃんとサイズがあるんだもん」


 ラビットAは子供服と同じサイズだもんな。


「ナビ子もちゃんと着られる服があったじゃないか」

「着せかえ人形用じゃない!!」


 まぁ殆ど見かけない妖精用の服なんて普通に売っているはずがない。

 むしろ着せかえ人形の服でもあっただけマシじゃないかと。

 というか、この世界にも着せかえ人形とかあったんだなと。

 思わずドールハウスごと購入しちゃったよ。

 ……店員にはこの子(ナビ子)の家用ですって言い訳しながらね。



 ****


 その後も買い物を続け……アズリアから終わった連絡がきたので、買い物を終え、アズリアと合流。


「流石にちょっと疲れたね」

「きゅぺぇ」

「私も今日はもう……」


 と、アズリアまで疲れ切っていたようなので、大人しく宿へ帰る。


「……中々いい取引ができました」


 詳しい話は聞かないけど、どうやら上々の結果に終わったみたいだ。


「そういえば商談中に商店街で爆買している客がいると話題になっていましたよ。流石に連れですとは言えませんでしたが」


 アズリアが苦笑いしている。

 そりゃあ商談中にそんな話聞かされたら、他人のふりをするしかないよなぁ。


「そういえば途中から変な視線を感じたね」

「そりゃあ、あんだけ騒いでたらな」


 たくさん商品は買ったから、店側からしたら上客だったろうけど、客側からしたら喧しいと思われていたに違いない。


「そうじゃなくて……多分、決闘の噂が広まってるのよ」


 ああ、そっちか。

 昨日の酒場で聞いた人が言いふらしまくってるだろうからな。

 決闘相手の特徴が知れ渡っていてもおかしくない。


「ねぇシュート。ラビットAは鈴風に勝てるかな?」

「勝ってもらわなきゃ困る」


 だってラビットAが負けたら俺が戦うことになるんだぞ。

 それに魔石のこともあるし。

 レアな魔石……一体どんなモンスターの魔石をもらえるんだろうか。


「あの……私まだ鈴風さんのスキルを聞いてないんですが、シュートさんはご存知なんですよね?」

「一応……運営から貰ったスキルだけは知ってる」


 それはナビ子が知ってるから教えてもらえた。

 だけど、それ以外に自力で習得したスキルとかは知らない。

 半年前に会った時に聞いてみたんだけど、知りたかったら勝負しろと言われたので聞かなかった。

 ハイアナライズすることも考えたけど……バレたら大変だしね。


 だから鈴風がどんなスキルを持っているか知らない。

 まぁ向こうも俺のスキルはカード化しか知らないし、公平と言ったら公平……いや、ラビットAのことは全く知らないんだから、こっちの方が優位か。


「ではその運営から頂いたスキルというのは?」

「えっと『疾風迅雷』ってスキルだ」


 俺は分かっている範囲で答える。


 ――――

 疾風迅雷:自己強化系のスキル


 レベル1:迅雷風烈

 雷属性と風属性の魔法取得

 レベル2:電光石火

 瞬発力大幅向上

 レベル3:一刀両断

 斬撃に大幅補正

 レベル4:心頭滅却

 属性攻撃軽減

 レベル5:臥薪嘗胆

 修業の効果が増加する

 ――――


 絶対強者が戦闘特化のスキルだとしたら、疾風迅雷は自己強化に特化したスキルらしい。

 ハイアナライズをしたわけではないので、レア度は分からないけどおそらく星5だと思う。


 各能力もナビ子に聞いた程度で詳しい能力までは分からない。

 レベル1の迅雷風烈の雷と風魔法はどのレベルまで取得可能なのか。

 電光石火や一刀両断がどの程度補正がかかっているのか。

 少なくともブラックドラゴンの懐に入って首を切り落とすレベルなのは間違いないけど。

 心頭滅却の属性攻撃軽減って……それこそ火もまた涼しってか?

 そしてレベル5の臥薪嘗胆は筋トレとかの効果が増加らしい。

 俺も似たような増強薬を持ってるけど……仮に1%の増加とかでも毎日のように戦っていることを考えると、洒落になってないと思う。


 これ以上はナビ子も知らない。

 詳しい詳細は取得プレーヤーの相方にしか教えてないそうだ。

 あっもしかしたらフェイクを見破った看破能力もあるかも。

 星5のスキルなら見破られて当然だ。


 ともあれバトルジャンキー具合を考えてもレベル5以上は確実だろう。

 それどころか俺のカード化やエイジの改造スキルのように、カンストして更に上の……星6スキルになっている可能性だってある。


「流石に星6スキルを所持していたらラビットAでも勝てないぞ」

「そんなことないもー!!」


 俺の言葉にラビットAが怒る。

 とは言ってもなぁ。

 ラビットA自体は星5なわけなんだし。


「鈴風対策として今からラビットAを強化させるか?」


 合成して更に進化させる……今が星5のカグヤだぞ?

 それ以上の進化があるのか? 下手したら弱くなる可能性だってありそうだ。


「だいじょーぶ。らくしょー」


 楽勝って……何でそんなに楽観的なんだ?

 とりあえず現在のラビットAを確認する。


 ――――

 カグヤ

 レア度:☆☆☆☆☆

 固有スキル:魔を極めし者、月の加護、プリンセス

 個別スキル:創造魔法、千里眼、第六感、不可侵、剣術、杖術、自力成長、眷属召喚、覚醒


 魔兎族の姫。

 あらゆる魔法を使い、あらゆる魔法を無効にする。

 魔法に関して右に出る者がいない。

 月からの使者という説もある。

 ――――


 うん。以前と変わら……んん?


「おい。覚醒なんてスキル持ってたっけ?」

「えっ? アタイ、そんなスキル知らないよ」


 ナビ子も知らないと。


 覚醒って言ったら、魔の覚醒が思い浮かぶ。

 素質<覚醒<極意<極めし者 の順で強化されるので、覚醒は魔法の中級スキルになるんだけど……これは覚醒としか書いてないんだよなぁ。


「ラビットA。この覚醒ってスキルはなんなんだ?」

「きゅへへー。ひみつへーき!」


 秘密兵器って……この様子だと取得していたことも、その能力も知っているみたいだ。


「ちなみにどんな能力か教えては……」

「ひみつー。お楽しみなの」


 このやろう……。

 しかしラビットAの余裕はこのスキルが原因なのは間違いない。


 結局俺たちはラビットAを信じて、これといった鈴風対策をせずに決闘へ挑むことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ