第34話 スキル習得
「いよいよスキルの習得だな」
モンスターの方は、ホブゴブリンまでで一旦終了。
残った3つの魔石をスキルカードへと変換させる。
残念ながら欲しかった探知系スキル【魔力探知】は現在ホブAが所持している。
だけど、他のスキルは持っていそうだし、残りの2体もリーダーとおそらく命中スキル持ち。
そして探知系のスキルと命中補正のスキルを持った2体のはずだ。
俺は一気に3つの魔石をスキルカードにした。
――――
統率
レベル:3
レア度:☆☆
このスキルを持つ者が命令を下すと部下の能力が上昇する。
――――
手に入れたスキルは統率。
やはり部下を鼓舞するスキルのようだ。
だがそれよりも……
「これ……最初からレベルが3になってるんだが?」
「それはこのゴブリンが持っていた時点のレベルが3だったのよ」
リーダーゴブリンが所持していた時点でレベル3だったから、カードになってもレベルは3だったと。
そっか……スキルレベルって1からスタートじゃないんだ。
ゴブリン語に関しては、元々スキルじゃなかったからレベルが1だったってことなんだろう。
「じゃあこれを覚えると、いきなりレベル3の統率が手に入るのか?」
「そういうことになるね。あっもちろんレベルで図鑑の種類は変わらないから」
レベル1だろうとレベル3だろうと統率のスキルとして扱うってことか。
「そういえば、ウチの連中のスキルレベルって分からないのか?」
モンスターカードには所持スキルしか書いてないから、レベルまでは分からない。
そもそも仲間が持っているスキルはカードにできないので、ナビ子が説明してくれないと、そのスキルの詳細すら分からない。
まぁ『グローリークエスト』時代にあるスキルや名前である程度は分かるが、女王の威厳などはゲームでは存在しなかったし、他のスキルも微妙に違う。
「カード化のレベルが上がったら、分かるかもね」
やはり今は分からないらしい。
レベルが上がれば……今のところレベル5までにはそれらしいものはない気がするが、怪しいのはレベル4の登録か?
登録と書いてアナライズって呼ぶらしいけど……考えたらアナライズって分析って意味だよな?
ちょっとニュアンスが違うかもしれないが……登録済みのカードの詳細を調べるって感じなのかもしれない。
まぁレベル4じゃなくても、その内分かるようになるなら、気長に待つことにしよう。
「あっそうだ。カードモンスターもスキルレベルは使えば上がるからね」
「えっそうなの!? カードモンスターは成長しないんじゃなかったの?」
「体の成長はしないけど、スキルだけは回数による使い込みの成長だからね。一定の回数使えばスキルのレベルだけは上がるよ」
そういうことか。
ならサイレントビーの隠密や消音はレベルを上げておきたいな。
――――
看破
レベル:2
レア度:☆☆☆
嘘を見破るスキル。
現在のレベルより高いレベルの隠匿スキルやレア度の高いスキルには通用しない。
――――
「嘘を見破るスキル?」
俺が探知系スキルを持っていると思っていたゴブリンの魔石から手に入ったスキルは看破だった。
なんかレア度が星3もあるんだけど……このスキルでサイレントビーを見つけて倒した?
「要するに言葉だけじゃなく、見た目の嘘も見破れるスキルってことね」
ナビ子が補足してくれる。
なるほど、確かに嘘は言葉だけじゃない。
広い意味で言えば、隠密で姿が見えない状態も、本来の姿じゃないから嘘ってことになる。
ってことは、他にも変装や偽物……贋作とかも見破れるようになるってことだよな。
このスキル……現在のレベルが2ってことは、サイレントビーの消音と隠密のスキルレベルが1なのかな?
それとも隠密や消音のレア度が星3以下だから見つかった?
この説明文じゃ、レア度が低くてレベルが高いスキルがどうなるのかまでは分からないよな。
星4以上の隠匿系スキルがあれば、レベル1でも見破れない可能性がある。
検証が必要だけど……うん、これはかなり優秀なスキルじゃないか?
「あっもしかしてクコの実とかも区別つくようになるのかな?」
あの3つの実……俺はカードでしか判別できないんだよなぁ。
「いや、クコの実は嘘ついてないから……それは鑑定スキルの方じゃない?」
そっか、正体が分かるじゃなくて、嘘が分かるスキルだから、駄目なのか。
3つの実はそっくりだけど、偽ってるわけじゃないもんな。
「あっでもでも~。商人がグミの実をクコの実って販売していたら、違いには気づくかもね」
なるほど、それなら商人が嘘をついてるから、グミの実と分かるかもしれない。
鑑定の代わりにはならないけど、似たようなことは出来るかもしれない。
レベルを上げて期待してみよう。
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命中補正
レベル:5
レア度:☆
遠距離攻撃が命中しやすくなる。
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こっちは予想通りのスキルだ。
しかもレベル5と高い。
遠距離攻撃や命中しやすいってことは、ベレッタも命中しやすいだろうし、覚えない選択はない。
「この3つ――統率と看破と命中補正のスキルは習得して問題ないよな?」
これはゴブリン語のように、見られて困るスキルじゃない。
「いいけど……それだとスキル5つになっちゃうよ? 5つ持っている人もいないことはないけど、結構目立っちゃうかもしれないね」
確かに。
普通の人は基本的に3つ。
ちょっと強い冒険者とかなら5つくらい持ってそうだけど、冒険者にもなってないど新人が5つはかなり目立……
「いやいや、そもそもカード化なんて誰も持ってないスキルを持っている時点で目立ちまくりだろ!」
多分5つのスキルを持っていることよりも、見たこともないレアスキルを所持している方が目立つ。
だったら5つスキルを持っていてもいい気がする。
まぁそれでも流石にゴブリン語は悪目立ちしすぎるから習得できないけど。
「隠匿系のスキルがあれば困らないのにね」
隠匿系のスキルか……
「それって隠密でもいいのか?」
隠密ならキラービーの魔石が余ってるから、ひとつくらい手に入りそう。
「へっ? 隠密は少し違う気が……やっぱり隠蔽かな、それから隠さなくても妨害とか阻害とか……カード化だけ隠すなら偽装でもいいかもしれないね」
隠密は違ったらしい。
確かによく考えると、隠密は隠れるで、今必要なのは隠すだもんな。
カード化スキルが隠密を覚えるならともかく、俺が覚えても意味がない。
そして隠すなら隠蔽、隠さずに邪魔立てするなら妨害や阻害。
……妨害と阻害って何が違うんだろ?
それから隠すでも邪魔するでもなく、誤魔化す偽装。
カード化を別のスキル――たとえば剣術とかに見せればいいのか。
「どのスキルも鑑定で見破るのは難しいと思うよ」
鑑定は確認するスキル。
人を確認すれば名前や所持スキルが分かるし、アイテムの名前が分かるスキル。
だけど鑑定は嘘を見破るスキルではない。
さっきの話だとグミの実をクコの実のように説明して販売する。
それだと実を鑑定すればクコの実だと確認できるから嘘だと分かる。
だけど、グミの実に偽装スキルでクコの実に見せかけていたら、鑑定でもクコの実となる。
つまり表面上しか確認できないスキルのようだ。
なので隠蔽で隠していたら見つけられない、偽装で別のスキルに見せかけても見破れない、妨害で鑑定を妨害すれば、そもそも見ることすらできない。
まぁ妨害系だけはレベル次第で妨害できなくなるらしいが。
ってことは、妨害系以外の方が欲しいスキルかもしれない。
「偽装か……擬態なら手に入るかもしれないけど……」
擬態は自分を別のものに見せるスキル。
偽装は対象を別のものに見せるスキル。
隠密と隠蔽のように、対象の範囲の違いがある。
カード化スキルを別のものに見せるのなら、偽装スキルってことだ。
擬態はフェアリーバタフライが所持している。
モンスターカードになっているからスキルカードには出来ない……というか、したくないけど、この山にいる幻惑蝶の中には擬態持ちがいるかもしれない。
いやいや、この山は昆虫のモンスターがたくさんいるんだ、
それこそ蝶以外の昆虫でも擬態のスキル持ちはたくさんいるだろう。
「多分擬態から合成で偽装が作れるんじゃないかな?」
なるほど。
ってことは、偽装スキルは手に入りそうだな。
というか、隠蔽も隠密で作れないかな?
うん、スキルは普通に手に入りそうだな。
俺は隠匿系のスキルが手に入ることを見越して、3つのスキルを使うことにした。
「自分がスキルを覚えたいときは、胸にカードを当てて解放すればいいよ。モンスターに使いたいときは、そのモンスターとカードが接触していれば大丈夫だよ」
「普通に解放でいいんだ」
「スキルは覚えるか装備するかの二択しかないからね。これが魔法なら使用が解放で覚えるときがセットになるよ」
魔法の使い方は既に習っていたから解放なのは知っている。
そして覚えるのはセットか。
スキルと習得する方法が違うのは紛らわしいが、魔法は使うこともあるからってことだろう。
間違えて自分の胸に当てた状態で魔法を解放したら……壮大な自爆だよな。
とりあえず今回はスキルだから自爆はないけど。
俺はスキルカードを胸に当てて解放と唱える。
するとスキルカードが俺の中に吸い込まれるように消えていった。
どうやら無事にスキルを習得できたようだ。




