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第33話 ホブゴブリン

 ゴブAを合成させるため、2体目のゴブリンもカードにする。


「……なぁナビ子。ゴブAも今のゴブBもスキルが表示されないんだが?」


 ゴブAの時から気になってはいたんだが、2枚目のゴブリンにも固有スキルと個別スキルが表示されていない。


「スキルを持ってないと表示されないよ。今までもそうだったでしょ?」


「いや、確かにそうだけど……えっ!? ゴブリンって固有スキルすら持ってないの?」


 今までのモンスターは、個別は持ってなくても固有スキルはあったぞ。


「そりゃあ今までは昆虫みたいに特殊なモンスターばっかだったからね。特に個性もない最弱モンスターならこんなもんよ」


 マジか……俺はそんな奴らに苦戦してたのかよ。


「……もしこの個体をスキルカードにしていたらどうなっていたんだ?」


「そうだねぇ……他のゴブリンで試してみたら?」


 あっこの誤魔化し方はナビ子も知らないとみた。


 ふむ……試してみたいが……

 現時点でスキルにしようと思っているゴブリンは3体。

 合成を考えると4体はモンスターにしないといけない。


 試すとしたら1体だけか。

 ……1体だけ確かめて、もしそのゴブリンがスキルを持っていたら、今回は諦めるか。

 駄目だったとしても、この後まだ100体のゴブリンが手に入るんだから、そこで確かめればいいだろう。


 俺は1体のゴブリンの魔石を手に取る。


「スキル変化(チェンジ)


 初めて唱える言葉で、魔石は一瞬にしてカードへと変換する。


「さて、記念すべき初めてのスキルカードは……」


 ――――

 ゴブリン語

 レア度:☆

 レベル1


 ゴブリンの言葉が理解できるようになる。

 レベルが上がると話せるようになる。

 ――――


「へぇ……スキルを持ってなかったら、その種族の言語がスキルになるんだ」


 ナビ子が感心しているが……やっぱり知らなかったのか。

 こんな風にナビ子が知らないことってのは他にもあるんだろうな。


「このゴブリン語があれば、ゴブリンが話していることが分かるのか」


 ってか、ゴブAの話が理解できるようになるのか。

 ……先に試していれば、さっきあんなに苦労して話を聞く必要がなかったかもしれない。

 だけど……それは今からでも遅くはないか。

 これからもゴブリンは仲間にいることになるし、悪くないスキルかもしれない。


「ナビ子。スキルを覚えるにはどうすればいいんだ?」


「えっ!? シュート……ゴブリン語を覚える気なの?」


 何故かナビ子が驚いている。


「当たり前だろ。ゴブAやBの言葉が分かるようになれば、便利じゃないか」


「そうかもしれないけど……それはちょっと待った方がいいと思うの」


「どうして?」


「あのね、スキルって鑑定や分析のスキルで簡単に見破れちゃうの。それで……シュートがゴブリン語のスキルを持って街に入ったらどうなると思う?」


「……もしかしてゴブリン扱いされる?」


 それは流石に嫌だな。

 下手したらその場で殺されかねない。


「流石にゴブリン扱いはされないと思うけど、ゴブリンを操ってる怪しい人に見えるかもしれないよ。もしその街がゴブリンの被害に遭ってたら、真っ先に疑われちゃうよ」


 ……確かに普通の人間はゴブリン語なんてスキル持ってないもんな。


「あれっ? でもさ、俺には言語翻訳のスキルがあるじゃん。あれと結合とかしないの?」


 最初に一回聞いただけだが、確かそんな説明だったような……

 エルフ語で単語をひとつ覚えたら、エルフ語を言語翻訳で習得したことになるんだっけ?

 それとは別のことなのかな?


「言語翻訳のレベルが4まで上がれば統一も出来るだろうけど……言語翻訳のスキルはまだレベル1だからねぇ」


 そういえばエルフ語習得もレベル5だっけ。

 そしてレベル2が読みでレベル3が書き。

 そういえばレベル4は聞いてなかったな。

 だとしたらレベル4が言語統一って感じなのかな?

 4で統一するから5で簡単習得できるようになると見た。


「じゃあ最低でもレベル4までは待っていた方がいいってことか」


 俺だって周りからゴブリンと話せる……なんて思われたくないもんな。

 ちょっと不便だけど、さっきと同じようにすれば意思疎通は可能だし、今はいいか。



 ****



 残りの2体をゴブリンにして計4体のゴブリンが誕生。

 そして4体目だけスキル持ちだった。


「ま、ま、ま……魔力探知いいい!?」


 なんでこっちに探知系スキル持ちがいるの!?

 探知スキル持ちの魔石は別にしていたはず……


「もしかしてナビ子が間違えた?」


「失礼ね!! アタイは間違えてないんかないよ!」


「じゃあ何で魔力探知持ちのゴブリンが生まれるんだよ」


「それは……シュートが予想したゴブリンが間違えたんでしょ。アタイはちゃんとシュートが区別しておけって言ったゴブリンの魔石を別にしただけだもん」


 ってことは、俺の予想が外れた……と。


「でも俺はちゃんとサイレンがやられたゴブリンを指定したぞ」


「このゴブリンDはサイレントビーを倒したゴブリンじゃなくて、上空のフェアリーを見つけたゴブリンだよ」


「え……マジ?」

「マジ」


 確かにフェアリーバタフライを見つけたゴブリンは、俺が探知系と思っていたゴブリンと違う。

 フェアリーバタフライを倒したゴブリンは、命中スキル持ちだと思って別にしていたが、フェアリーバタフライは上空を飛んでいただけなので、特にスキルを持っていなくても見つかるから特に気にしてなかった。


「じゃあサイレンをやっつけたゴブリンは……?」


 俺の勘違いだったってこと?


「一応サイレンを倒したのは事実だし、そっちはそっちで別のスキルを持ってるんじゃない? ‥…まぁたまたま倒しただけかもしれないけど」


 ……そういうことになるのか。

 たまたまは考えられないから、多分何かしらのスキルは持っているはず。

 珍しいスキルかもしれないし、このままスキルカードにすればいいか。

 とりあえず今回は4体のゴブリンはもうモンスターにしたし、このゴブリンを合成させてみることにした。


 ――――

 ホブゴブリン

 レア度:☆☆

 固有スキル:威圧

 個別スキル:魔力探知、棒術


 ゴブリンの上位個体。

 ゴブリンに比べ全てにおいて上回る。

 もしホブゴブリンを見かけたのなら注意が必要だ。

 ホブゴブリンがいるということは、他の上位個体も存在するかもしれない。

 ――――


 ゴブリンAとDを合成させた結果は、半ば予想通りのホブゴブリン。

 定番中の定番だよな。

 ただ見た目は随分と逞しくなっている。

 1メートル程度だった身長は1,5メートルになっている。

 筋肉もつき、迫力もある。

 ベレッタでは何発当てても勝てそうにない。

 この個体が昨日あの場所にいたら、俺は多分戦闘には参加しなかっただろうなぁ。


 固有スキルの威圧は、自分よりも弱い相手に有効のスキルで、相手を怯ませることが出来る。

 また、ゴブリンのように同族の下位種には絶対に有効、別種族は下位種って意味じゃなく、単純に自分より弱い相手って意味になるらしい。

 だから仮に上位種でも自分より弱かったら怯む可能性もあるらしい。

 まぁ同族なら上位種には効かないらしいが。

 たとえ弱いゴブリンキングがいたとしても、それには通用しないってことか。


 ウチのメンバーならどうだろう?

 ラビットAやキラーホーネットなら効きそうにないが、同じ星2でも他のモンスターには有効そうだ。

 サイレントビーは星3だけど……どうなのかな?

 まぁ仲間だから威圧を使うことはないけど。


 ただ……残っているゴブリンにはかなり有効だ。

 巣に残っているのは全てゴブリン。

 相手が何体いようと、威圧があれば、ホブゴブリン1体で全滅させることすら可能そうだ。


 個別スキルは魔力探知と棒術。


 魔力探知は先程のゴブリンDからの引き継ぎ。

 魔力探知は周囲の魔力を感じるスキル。

 生き物や植物、道具などの魔力を宿したものを感知できる。

 ワイルドディアを発見できたのは、ワイルドディアの魔石の魔力を感知したからだろう。

 だからナビ子の気配察知のように生き物を察知するスキルとは違うらしい。

 そのため、魔力を隠蔽されたり、魔石を持たない動物には反応しないようだ。


 棒術は、剣術や槍術、弓術などと同じで武器を扱うスキルだ。

 各武器系のスキルを持っているだけで、その武器をより上手く扱うことができる。

 簡単に言えば才能。

 棒術は長い棒を扱うのに適したスキルになる。

 おそらく棍棒を扱う才能だろうが……俺の鉄パイプにも効果がありそうだ。

 まぁ鉄パイプはすぐにお別れのはずだから、俺に棒術は必要ないかな。

 もし銃術だったら是が非でも欲しかったかもしれない。


 ちなみにもう1体のホブゴブリンは個別スキルを持っていなかった。


「よし、お前らはホブAとホブBな」


 スキル持ちをホブA、もう一方をBとした。


 2体のホブゴブリンは分かったと頷く。

 ついさっきまでゴブA~Dと呼ばれていたけど、名前を変えても特にワガママを言わない。

 やはりラビットAが特別のようだ。

 ただ……文句は言ってないけど、どことなくホブAの方が、Bに比べて表情が豊かな気がするんだよなぁ。

 やっぱり個性はあるのかな。


 とりあえず頼もしい2体の仲間がここに加わった。

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