第4話 カードマスターレベル8
「もうね。正直コレクター魂とか全っ然わかんないけど! もう完全防御を取得しようなんて言わないよ」
いくら言っても無駄だと分かったのかナビ子が折れた。
俺としてはコレクター魂は伝わらなかったが残念だ。
つーか、そこまで強調しなくてもいいのに。
「でもさ。前から持っていた統率とか隠蔽は覚え直さないの?」
それなら運営男から奪ったわけじゃないからいいでしょとナビ子が言う。
確かに他のスキルは覚え直すか上位スキルに変更したが、隠蔽と隠蔽と統率スキルだけは再取得しなかった。
「その2つはカードマスターで代用できるから必要ないしな」
冒険者カードに表示されたカードマスターのレベルは8。
運営男と戦った時にはレベル4だったから、それを考えると引きこもっていてもちゃんと頑張ってるんだぞと。
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カードマスター
レベル1:ハイアナライズ
レベル2:カード呼出
レベル3:スキル共有
レベル4:仮想合成
レベル5:カード分身
レベル6:カスタマイズ
レベル7:ロックオン
レベル8:カード化スキル貸与
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レベル1のハイアナライズは鑑定結果のカードが手に入る。
もはやなくてはならない必須能力だ。
レベル2のカード呼出は、カード図鑑に収納されているカードを手元に呼び出す。
戦闘などでは必須クラスだけど、引きこもっている最近じゃとんと使っていない。
レベル3のスキル共有はカードモンスターのスキルを使用できる。
これがあるから隠蔽も統率も……任意発動型のアクティブスキルは自分で取得せずとも使おうと思えばいつでも使える。
なので言ってしまえば俺が取得するのは常時発動型のパッシブスキルだけで十分。
……静寂はパッシブじゃないけど? いやいや、あれは最重要スキルだろ?
レベル4の仮想合成は合成結果が分かる。
あの事件では役に立ったが、ランダム合成のワクワク感がなくなるからレベルを上げた時点で封印中。
おそらく二度と使うことはない。
そしてレベル5はカード分身。
一見カード複製の能力と同じじゃね? と思いがちな名前だが、その能力は全く違う。
カード分身はモンスターカードを複製する。
例えばラビットAのカードにカード分身を使うと、ラビットAのカードが二枚になる。
……といっても別にラビットAが二人になるわけじゃない。
単純にカードが二枚になるだけ。
それって意味あるのか? と、最初は思った。
ぶっちゃけ同じカードが二枚あったところで、本物のカードは保存用として図鑑の中に入れて、分身カードで使用するくらい。
でも、カード呼出で本物を呼び出してしまうから意味がない。
なんだ使えない能力じゃん。と思ってしまった。
これの本当の用途は、自分で使うのではなく第三者。
第三者にカードを貸すことが目的となる。
例えば代理人スキルを持ったナビ子。
ナビ子に分身カードを渡しておけば、俺とナビ子のどちらからでも呼び出すことができる。
一応、優先度は本物の方だから、俺が使用中はナビ子が使うことができない。
それと当然だけど分身カードを合成には使えない。
だからナビ子が勝手にラビットAを合成したりはできない。
って、偶々ナビ子が代理人スキルを持っていたから良かったものの、そうじゃなかったら本当に死にスキルか?
……と、この時点では思っていた。
レベル6のカスタマイズは、図鑑を自由に並び替えすることができ、それをお気に入り保存することができる。
よく使うものを最初のページとか……というか、この能力が使えるようになったから、引きこもったってのがある。
使えるかどうかと言われたら、完全に趣味の世界だと思う。
レベル7のロックオンは対象に触らなくてもカードにすることができるかなり有用な能力。
今までは直接触れないとカードに出来なかったが、ロックオンを使えば五メートル以内の範囲の物をカードにできる。
もちろん普通にカードにするときと同じく、生き物や他人が触れている物はカードにできない。
更に通常と違いカードにする対象を知っていなければならないという制限がある。
未知のものはハイアナライズで登録してからってことだな。
それから複数同時にカードにすることもできない。
あそこに見えるもの全部カードになれ、とかはできないってことだ。
この能力の一番の活用方法は、敵の攻撃魔法や矢などの遠距離攻撃を触らずにカードにできることだろう。
登録さえできていれば、遠距離攻撃はほぼ無力化できるのはありがたい。
今までは触れなきゃカードにできなかったから、かなり危険だったもんな。
そして問題のレベル8スキル。
カード化スキル貸与という名前の通り、このスキルはカードマスターの前のスキル、カード化スキルを第三者に貸し出すスキル。
つまりこの能力を使えば、誰でも好きにカード化スキルを使用できるってわけだ。
もちろん無条件で貸与するんじゃなくて、ある程度の俺の方で制約つけることが可能だ。
貸与するには俺が直接触れなくてはならないから、近くにいる人限定。
そして一度貸与した後は、どんなに離れていても、貸与した相手が嫌がっても、俺の意思でいつでも自由に回収することもできる。
カード化スキルを持って逃げ出そうってことはできないと。
それから使える能力も制限できる。
どうやらレベルの概念がないようなので、カード化の中の能力を好きにカスタマイズして貸与できるみたいだ。
例えば解放と返還だけしか使えないとか、合成や分解だけしか使えないとか。
変化を制限したら、自分でカードを作ることができなくなる。
そして……ここでさっきの微妙な能力――カード分身が活躍する。
カード化スキルを貸与した相手に俺のカードモンスターの分身カードを渡せば、俺のモンスターを呼び出すことが可能ってわけだ。
いやぁマジでぶっ壊れの能力だと思う。
ってことで、詰んだ。
だってさ。誰に貸与すればいいのさ。
現状カード化スキルを知っている俺の協力者は五人。
アザレア、アズリア、アゼリアの三姉妹。
天運スキルの持ち主でプレーヤーのサナ。
ドワーフのおっさんで鍛冶師のガロン。
他にもカード化スキルのことを知っている人はいるが、身近な人はこの五人だけ。
ちなみにレベル9になるための条件は、カード化スキル貸与の使い込み千回。
一人に貸与する度にカウントされるが、スキル共有の時同様、一人に貸与と解除を繰り返してもカウントされない。
同一人物で回数を増やすためには、24時間以上経過する必要がある。
仮にこの五人にカード化貸与を使ったとして、レベルが上がるのは200日後。
引きこもっていた日数よりも長い。
そこでもう少し条件を広くしてラビットAなどカードモンスターに貸与しようと試みた。
カードモンスター全員に貸与したら二日で終わるから楽勝だ……と思ったんだが、どうやらカードモンスターには貸与できないらしい。
ズルはできないってことだな。
ってことで、対象は五人だけだが……その中でも現時点で貸与している人物はアズリアとサナの二人だけ。
サナは牧場の世話でモンスターカードを共有できると便利だから。
分身カードさえ渡しておけば、カードモンスターは俺の手元と牧場を自由に行き来できるってわけだ。
アズリアはファーレン商会の納品に便利だから。
今までは俺が納品に行っていたけど、アズリアがカード化を使えたらアズリアの出勤時にカードを渡すだけで納品が終わる。
うん。引きこもりが捗るな。
残りの三人のうちガロンとアゼリアは必要ないと断わられた。
ガロンは合成で武具を作るよりも自分で作った方がいい言って。
それでも便利だから使えよ……と思うが、いざ取得すると楽な方へ流されるかもと恐れているんだそうだ。
まぁ一度使ったら手放せない便利さなら、知らないほうがいいってことだろう。
アゼリアは合成には興味があるようだが、カードに興味はなかったようで、別にいらないとのこと。
そして最後の一人。
スキルと魔法の研究者であるアザレアは当然取得したいと言ってきたので、一度は貸与したのだが……カード化の研究で仕事はサボるは部屋から出てこないわ変な奇声を上げるわと駄目駄目くんになったので強制回収した。
回収した後のマジ泣きの土下座はさすがの俺もドン引きした。
もちろんそれから一度も貸与していない。
ってことで現状はサナとアズリアの二人だけ。
これだと二年以上かかってしまうが……まぁたまにアザレアやガロンにも貸与したりして回数を稼ぐか。




