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第32話 ゴブリンの解体

本日2話目の投稿です。

 いつものごとく、ナビ子先生の教えでゴブリンを解体する。

 解体自体はホーンラビットで大分慣れたのだが……流石に人型のモンスターの解体はちょっと気が引けた。


「ゴブリンのお肉は、硬くて食べても美味しくないから破棄して構わないよ」


 ってことで、肉を解体しなくて済んだのはありがたい。

 ゴブリンの肉はレア度もないらしいので破棄しても問題ないらしい。

 破棄はカード状態で解除(リセット)すれば無くなるから簡単だ。

 だけど……他の冒険者とかはどうしてるのかな?

 やっぱり魔石とか必要な部分だけ回収して放置なのかな。

 そういえばナビ子が死体や魔石は還元されるって言ってたから、放置でも問題ないのかもしれない。


「ゴブリンで素材になる部分は角と睾丸だけ。角は武器に、睾丸は精力剤などの薬品の素材になるよ」


 俺は言われたように素材だけ回収する。

 どうでもいいけど、よく睾丸とか恥ずかしげもなく言えるよな。

 電子妖精だからなのか、素材としか思ってないからなのか分からないが、言われるこっちの方が恥ずかしいわ!

 ってか精力剤の材料って……何となく理由はわかるけど、素材がこれだと知ったら絶対に飲みたくなくなるよな。


 ――――

 ゴブリンの睾丸【素材】レア度:☆


 ゴブリンの睾丸。

 薬品の材料となる。

 オークの睾丸より効果が落ちる。

 ――――


 こっちは薬品の素材ってちゃんと書いてある。

 ……でもやっぱりオークの方が効果が高いんだ。


 ――――

 子鬼の角【素材】レア度:☆


 ゴブリンの角。

 素材となる。

 ――――


 こちらは特に詳しい説明が書いていない。

 素材ってことだけど……何の素材になるんだろうか?

 ホーンラビットの角ならある程度大きいし、硬さもあるから使い道はありそうだけど、ゴブリンの角は大きくないから使い道なんてなさそう。

 ……削って薬品の素材? いやいや流石にないな。

 それからこのゴブリンの角だけじゃない。

 たとえば昆虫のアゴやら虫の皮とか、そういった素材も用途不明だ。


「こういうのって素材って、武器と合成させると特攻武器とかになりやすいんだよ」


 俺の疑問にナビ子が答える。

 たとえば俺の鉄パイプとゴブリンの角を合成すれば、ゴブリンへ大ダメージのある武器……たとえばゴブリンサーベルへと変化する可能性があるらしい。


「セットにしても同じ効果があるよ」


 セットにしたら鉄パイプにゴブリン特攻か……レア度が高くて絶対に合成しない武器に特攻を付与させたいときに利用できそう。

 ……まぁその場合はゴブリン特攻じゃなくて、ドラゴン特攻とかを付与させたいけど。


「キラービーの針なんかは特攻じゃなくて、マヒ効果付与の武器とかに変化しそうだよね」


 なるほど、全部か全部特攻ってわけじゃないのか。


「もちろんこれはカード合成だけじゃなくて、鍛冶や錬金術にも同じことが言えるよ。……まぁ技術的に難しいし、あまり利用はされないみたいだけどね」


 まっそりゃあそうだよな。

 ただその技術的に難しいことを、合成では一瞬でやってしまうってことか。


「まぁ素材関係も色々と試さないと駄目ってことだな」


 現時点の武器が鉄パイプしかないか試しようがないけど。

 ……今度、鉄じゃなくてそこら辺の木の枝で木刀でも作って試してみようかな。


「さっ、ゴブリンの死体はまだまだ沢山あるからさっさと全部解体するよ」


 まだ1体が解体終わっただけ。

 角と睾丸の2種類だけとはいえ、残り7体……先は長そうだ。


 ****


 目の前には8個の魔石。

 肉の解体をせずに済んだので、なんとか午前中に解体が終了した。

 これがきっとオークの解体だったら、めちゃくちゃ大変だっただろうな。

 ……その時が来る前に分解のレベルにまでカード化のスキルを上げておきたいな。


 さて、昼休憩後、いよいよ合成に入る。


 まずはスキルカードにする予定のリーダーと探知ゴブリン、それから命中補正のゴブリンの魔石を別にする。


「その魔石はどうするの?」


「この3つはあとでスキルカードへと変換させるんだ。でも……先にモンスターカードの方を終わらせる」


 とりあえずゴブリンのモンスターカードを5体作る予定だ。

 そのうち4体のゴブリンを合成して進化させる。


 ――――

 ゴブリン

 レア度:☆


 子鬼系の下級モンスター。

 繁殖能力に優れ、多種族からも子を成すことができる。

 単体では非常に弱い存在だが、狡猾な部分もある。


 特に群れで行動するゴブリンは注意が必要。

 その群れには確実に上位種がいる。

 上位種のゴブリンは中堅の冒険者でさえ苦戦するため、決して駆け出しの冒険者はゴブリンだからと侮ることなかれ。

 ――――


 弱い代名詞のような感じかと思ったけど、結構真面目に書かれてある。

 というか、群れで行動するゴブリンには確実に上位種か……


「なぁナビ子。ゴブリンの巣に上位種がいるのかな?」


「アタイの危険察知は巣に届いてないから分かんないよ」


 だよなぁ。

 ってことで、ゴブリンの巣を偵察したサイレントビーに聞いてみることにした。

 昨日ゴブリンにやられたサイレントビーだが、昨日の時点でカードを確認すると、サイレントビーのカードが白黒で使用不可になっていた。

 そして今朝起きたらカードがカラーに戻っており、無事に解放(リリース)することができた。

 少し不安だったが、ナビ子の言ったとおり、一晩でちゃんと元に戻るようだ。


 サイレントビーにゴブリンのことを確認すると、サイレントビーが確認する限りでは上位種の存在はなかったとのこと。

 それと捕虜になっている人間とかもいない様子。

 100体のゴブリンがどうやって生まれたか気になっていたんだが……人間の女性が捕まっているわけではなかったようだ。


「というか、わざわざサイレンに聞かなくても、ゴブリンに直接聞けばいいのに」


 ……それもそうだ。

 たった今ゴブリンがカードになったばかりだし、直接聞けばよかったんだ。


 俺はさっそくゴブリンを解放(リリース)して呼び出す。

 現れたゴブリンは……あれっ?


「なんか昨日と随分印象が違うな」


 出てきたゴブリンは昨日敵として対峙した時と全然違った。

 別に味方になったから敵意がなくなっただけ……ではない。

 一言で言うと……さわやか?

 くすんだ深緑の肌は明るい緑色の肌に。

 醜悪な臭いはまったく無くなっていた。


「野生のゴブリンはお風呂にも入らないし、不衛生だからね。カードになってキレイになったんでしょ」


 要するにカードになって生まれ変わったことにより、汚れも何もかも落ちてスッキリしたらしい。

 ……ゴブリンも衛生面に気をつければ、こんなにも変わるものなのか。

 うん、こっちの方が全然いい。


「じゃあお前はゴブAな」

「ゴブ!」


 人型で知恵がある分少し怖かったが、他のカードモンスター同様、ゴブAに反抗の意思はなさそう。

 それにゴブAの言葉は分からないが、こちらの言葉はちゃんと理解できる模様。


 俺はゴブAから詳しい話……結局いつもの『はい』、『いいえ』の二択だが、話を聞くことが出来た。

 あそこにいたのは全てゴブリンだけで、最近この山にやって来た。

 どうやら元の住処を追いやられて、この山に逃げてきたらしい。

 詳しい内容は分からなかったが、冒険者や人間が襲ったわけではないようだ。

 もしかしたら、もっと強いモンスターにでも襲われたのかもしれない。


 とにかくここにはゴブリンだけで逃げてきた。

 だからアンブロシアの前で待ち伏せして慎ましく暮らしていたと。

 下手に目立って、ここにいることをバレたくなかったようなのだが……


 ただ俺達が襲撃したことで、残ったゴブリンが暴れ始めるかもしれない。

 ……山を下りて暴れだしたら大変だな。

 ここは責任をとって俺達が残りのゴブリンも全部引き受けることにしよう。

 というか、ゴブリンのカードが全然足らない。


 その為に……このゴブAを進化させることにする。

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