第305話 スキル回収
「おいおい。これはちょっとやりすぎじゃないのか?」
俺が運営男を捕まえて30分後、エイジとタクミ、それからサナを連れたラビットAがテレポートでやって来た。
運営を目の前にするとどうなるか分からないので、ナビ子やサテラ、ルースは置いてきたらしい。
そして、運営男の成れの果てを見たエイジが呆れたように言う。
まぁエイジが呆れるのも無理はない。
なぜなら、現在、運営男は石の壁に埋まっており、顔だけが浮かび上がっている状態になっていたからだ。
その顔も声を出せないように猿ぐつわをしている。
「いや、俺もこんなことしたくなかったんだけどさ。コイツ、やたらと頑丈なんだよ」
カードマスターのスキルが取られる心配が無くなったから、直接触って登録することに成功。
そしたら、この男、本当に100以上のスキルを持ってやがった。
その100以上のスキルの中に、完全防御というスキルがあった。
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完全防御
レア度:☆☆☆☆☆
レベル:10
登録された攻撃を無効化する。
なお、物理攻撃はその限りではない。
登録するには一度その攻撃を受けなくてはならない。
レベル1:下級魔法完全防御
レベル2:下級スキル完全防御
レベル3:中級魔法完全防御
レベル4:中級スキル完全防御
レベル5:未登録魔法ダメージ軽減
レベル6:自己治癒促進・極
レベル7:健康維持
レベル8:上級魔法完全防御
レベル9:上級スキル完全防御
レベル10:自動登録
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かなりヤバめなこのスキル。
おそらくプレーヤーに渡すはずだったスキルだったんだろう。
俺の魔法を無効化した能力もこれみたいだ。
どうやらこの世界に来る前に、俺や他のプレーヤーから報告があった魔法などを全部登録してきたらしい。
本来なら攻撃を受けないと登録できないはずなのに……まさにチートだな。
レベル10の自動登録の能力があるから、登録されてない魔法も、二度目からは無効化される。
だから、つららマシンガンも、もうこの男には通じないらしい。
下手に時間を掛けて戦っていたら、ヤバかったかもしれない。
そして、自己治癒促進・極というスキルを持っていて、怪我をしても、あっという間に傷が治る。
状態異常も、同じく星4の健康維持ってスキルですぐに回復する。
しかも、同じ魔法は登録されて無効化されるから効かなくなるし。
お陰でソーンバインド自体は一度解かれない限り無効化はされないが、付与効果は一度しか使えず、すぐに回復する。
付与がなかったら、ソーンバインドの拘束能力もそこまで強くないので……仕方がないから石の中に埋め込んだ。
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ストーンプリズン【土属性】レア度:☆☆☆☆
土属性の上級拘束魔法。
石の牢獄。
壁と完全に同化することにより、対象を拘束する。
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簡単に言えば石化の状態異常ということになる。
これが普通の石化なら、すぐに回復するだろうが、これは石の壁の中に埋まっている状態。
壁がなくならない限り、石化が解かれることはない。
ちなみに外から無理に壁を壊せば、身体ごと破壊されてしまうだろう。
自己治癒では部位欠損は治らないので流石に死んでしまう。
これでようやく安心できるってことだ。
まぁそれでも油断はできないし、スキルイーターを考えると壁にも触らない方がいいだろう。
「とりあえず、脅威なのはスキルイーターとスキルの量なんだよ。なんとかスキルを無効化できないか?」
既に全員で情報の共有は済んでいる。
「魔吸虫のように体内で取り込んだ魔素を食って、魔力を使えないようにすることは可能だ……が、これも状態異常扱いになると、その完全防御とどちらが優先されるか分からない」
スキルが使えなくなるのが先か、完全防御で防がれるのが先か。
微妙なところのようだ。
「いっそのこと、先に全てのスキルを奪ってしまえば、無効化する必要もなくて丁度いいと思うんだが」
「でもなぁ……どうやってスキルを奪うよ?」
そもそもスキルイーターを持っているのは向こうで、こっちはスキルイーターを持っていない。
「肝心の銃が使えないからなぁ」
俺のスキルを奪った、運営男が持っていた銃。
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強欲の銃【武器】レア度:なし
異界で作られた、全てを奪い尽くす悪魔の銃。
強欲系スキルを魔弾に込めることでスキルを発動することができる。
奪った物はスキル使用者へ還元される。
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俺のラビットファイアが魔法を撃つ神殺しの銃なら、こっちはスキルを撃つ悪魔の銃らしい。
これを使えば、運営男のスキルを奪えると思ったんだが……銃を撃った者じゃなくて、魔弾にスキルを入れた者へ還元されると。
ってことは、運営男のスキルを奪っても、運営男に返されるだけで全く意味がない。
「俺も自分のスキルを回収したいし……殺された仲間もスキルを取られただろうから、それも回収しないと」
モンスターカードはまだ死んだままなので、誰がどのスキルを取られたか分からないが、ちゃんと元に戻してあげたい。
「あっ、シュート君。それなんだけど……」
サナがおずおずと話しかける。
凄く言いづらそうだ。
「ごめんなさい! あの子達は……私が殺しちゃったの!!」
通信機で聞こえたサナの逃げてって言葉。
あれはルースからスキルイーターのことを聞いたサナが、スキルを奪われないようにモンスターたちを逃がそうとして叫んだ言葉だったらしい。
あの後、モンスターたちが死んで戻ってきたから、俺は運営男に殺されたんだと思ったが……実はそうではなく、モンスターたちがカードに戻ってくるために自殺したとのこと。
「私……森に逃げてって言ったつもりだったのに……ごめんなさい」
確かに死ねばカードに戻ってこれるし、スキルも取られない。
でも、森に逃げたら追いかけられてスキルを奪われていたかもしれない。
そう思ったからのモンスターたちの判断だったと思う。
まぁ結果から言えば、間違った行動ではない。
でも、自殺していくモンスターを見るなんて、モンスター好きのサナとしてはトラウマものの経験だったに違いない。
というか、俺が見てもトラウマものだったと思う。
「だからさ。サナのせいじゃないし、気にするなって」
気休めにしかならないと思うが……まぁ本当に気にしないでもらいたいと思う。
「というか、じゃあ被害にあったのって俺だけ!?」
それはちょっと恥ずかしいと言うか……しかも完全に油断しただけだし。
「シュートだけなら、回収なんて言わずにまた覚え直せばいいだけじゃないか」
確かにそうだけど……せっかく上げたレベルが……。
「いやいや、言語翻訳だけは取り返さないと」
あれは換えがないから絶対に取り返さないと。
それに、どのみちスキルイーターや完全防御は取り上げないと。
「なぁ。改造スキルでスキルイーターみたいな魔道具を作れない?」
ちなみにスキルイーターの合成レシピの素材はスキルスティールなど、盗んだり奪ったりする系のスキルが必要で、現状合成することができなかった。
「いや、作るも何も……もうあるだろ?」
「へっ?」
持ってたっけ?
「おいおい。ついさっき修理が完了したって言ったばかりだろ」
そっか。偵察機か。
確かにあの偵察機は観察眼などを奪って保管していた。
それを修理したんなら、偵察機でスキルを奪えるかも。
「でもさ。その偵察機のスキルって、この人のスキルを使ったんじゃないの?」
タクミがそう質問する。
確かにその可能性が高い……というか、そうとしか考えらない。
なら、銃と同様にスキル使用者に還元されたり?
「たとえ元がこの男のスキルだったとしても、あの三姉妹にスキルが渡っているんだ。この男に還元されることはないだろう」
なるほど。
もし、偵察機が回収したスキルがこの男にしか返却できないんなら、アザレア達にスキルが宿るはずがないと。
宿ったことで、偵察機が回収したスキルは誰にでも使うことができる。
問題は、どのレベルのスキルまで回収できるかだが……。
「俺が修理した偵察機だぞ。星5のマスターまで……いや、星6まで全て回収できるに決まってるじゃないか」
ヤバい。エイジが格好良すぎる。
というか、何気に今の発言って、改造スキルが星6になってるって言っているようなものだよな。
……まぁいいけど。
ってことで、修理したばかりの偵察機で運営男のスキルを奪えるか試してみることにした。




