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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第7章 カードマスター
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第301話 牧場の危機

 俺は庭で遊んでいたラビットAを返還(リターン)で呼び戻し、解放(リリース)する。


「シュート。どーしたの!?」


 普段は呼び戻されないから、ラビットAも、ただ事ではないと気づいた様子。


「牧場が大ピンチなんだ。テレポートを頼めるか?」


 まだ、ここと牧場間のテレポートは試したことがない。

 だけど、ここから牧場まではブルームよりも近い。

 ブルームからここまでテレポートできたラビットAならできるはず。


「きゅい! やってみる!」


「エイジ。こっちのことは任せた。それから……ナビ子をよろしく」


 ナビ子をこの敷地内から出すわけにはいかない。

 ナビ子はラビットAと一緒にいたはずだから、急いでこちらへ向かっているだろう。


 俺はナビ子に出会う前に、ラビットAのテレポートで牧場に向かった。



 ****


「きゅい! とーちゃく!」


 ラビットAのテレポートで無事に牧場まで到着。

 若干気持ち悪いが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「サナ! どこだ!」


 俺は大声でサナに呼び掛ける。


「シュートさん! こっちです!」


 家を挟んで向こう側……厩舎の方からサナの声が聞こえてきたので、俺とラビットAはそっちへ向かう。


 すると……そこにはサナと、そのサナを守るように、バルとミスト。

 ルースはサナから離れ、オロオロと戸惑っている。


 そして、正面には見知らぬ男。

 男は俺と目が合うと、俺に向かって銃を構える。


「じゅ、銃だと!?」


 こいつ……プレーヤーか!?


「シュートさん! 避けてっ!! 絶対に触っちゃ駄目!」


 サナが叫ぶ。

 俺も迎撃できるように、ブラストガンを召喚……するよりも早く男が俺に向かって引鉄を引く。


 くっ間に合わな……

「シュートっ!」


 隣りにいたラビットAが俺を力いっぱい蹴り飛ばして、俺をその場から吹っ飛ばす。

 ラビットAも俺を蹴った反動で、反対側へすっ飛ぶ。

 そして俺とラビットAが立っていた場所に、黒い煙のような物が通過する。


 普通の弾じゃない!? 何だ? あの銃から何が撃たれたんだ?


「ブリザードーム!」


 俺が戸惑っている間に、ラビットAが男に向かってブリザードームの魔法を唱える。


「むっ!?」


 男の周囲がドーム状に包まれ、中で吹雪が吹き荒れる。

 真っ白で中が全く見えないが……あの吹雪の中で無事で済むわけがない。


 一応気をつけながら、俺はラビットAに近づく。


「シュート。だいじょーぶ?」


 ラビットAは魔法を発動中のため、俺の方をチラリと見てすぐにブリザードームに視線を戻す。


「ああ。問題ない。助かったよ」


 ラビットAがいなかったら、俺は今頃黒い霧に飲まれていただろう。

 それに、すぐに攻撃に転じることができるのも。

 本当、戦闘に関しちゃ、ラビットAは天才的だと思う。


「シュートさん。ラビットAちゃん」


 男が捕まったので、サナ達もこちらへ来る。


「シュート! これは一体どういうことなんだい! それに、ナビ子はどこにいるの?」


 ルースが詰め寄る。

 だが、どういうことなのかは俺の方が聞きたい。


「サナ。あの男は誰なんだ?」


「あの人は……ルース君の話だと、運営の人らしいです」


「運営!?」


 新しいプレーヤーじゃないのか!?


「そうだよ。あの方は運営の一人だよ」


 あの方……運営の人間だったから、ルースはサナから離れて戸惑っていたのか。


「運営が……まさかこの牧場を狙って?」


 俺を裏切り者認定して、カードモンスターである牧場のモンスターを……。


「いえ。あの人は私を狙ってました」


「サナを?」


 もしかして、俺と一緒に裏切ったことがバレたのか?


「あの方はサナの天運を手に入れるからって言ってた。裏切り者達を処分するためにって……ねぇシュート。達ってどういうことなの? シュートはサテラと改造プレーヤーと戦っていたんじゃないの?」


 ルースが尋ね……いや、糾弾する。


「……俺は運営を裏切って改造側についた」


「やっぱりそうなんだ」


 ルースは半ば予想していたようだ。


「……ナビ子とアイビーは?」


「ナビ子は置いてきた。アイビーは……現在眠ってもらっている」


「そう。壊してはいないんだね?」


「ああ」


 それを聞いて、ルースは少し安心したような表情を浮かべる。

 ルースもアイビーのことは気にかけていたらしい。


「サナは? 知ってたの?」


「うん。黙っててごめんね」


「そっか。じゃあサナもシュートと同じように向こうについちゃったんだ」


「うん。それでね。ルース君にも仲間になって欲しいんだけど……」


「ボクが? 無理だよ」


 サナの誘いにルースは悩みもせずに断る。

 断られると思っていなかったのだろう。

 サナが目を見開いて驚く。


「ボクはアイビーみたいに運営信者じゃないし、サナのことは嫌いじゃない。ううん、心情だけならサナの方が好きだよ。でもね、ボクは電子妖精だから、創造主には逆らえないよ」


 ……ここでも電子妖精の呪いか。


「良かったぁ。私、ルース君に嫌われたかと思った」


 サナが安堵する。

 嫌いだったら、どうしようもないけど、仕方なく敵となるんだったら、どうにかなる。


「良くないよ。サナは好きだけど、運営を裏切るなら敵だからね」


「なら、ナビ子と同じように、運営の影響下に置かれなくなったら? そうしたら俺達の仲間になれないか?」


 要するにルースもライラネートに連れていけばいいだけの話だ。


「まぁそんなことができれば考えなくもないけど……」


「よし、じゃあここが片付いたらライラネートに戻るぞ」


 まぁあの吹雪の中で無事だとは思わないけど。

 ……死んでしまったかな?


「シュート。油断しない方がいいよ。相手は運営だよ?」


 ルースが言う。


「シュートが今までの行動はナビ子が全部報告しているんだよ。万全の対策を立ててこの世界にやって来ているとは思わないかい?」


 ……ブリザードームはブルームで使用したことがある。

 そのデータがあれば、対策されてても……


「ラビットA。ブリザードームを止めろ」


 俺の指示にラビットAはブリザードームを唱えるのを止める。


 ドームが消えて、雪の塊だけがその場に残る。

 普通なら、完全に凍えてしまっているんだろうが……男は熱を発しながら、無傷で雪の中から現れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 刺客をこっち側に送ってきたって事は地球側に残っているかもしれない体は 可能性1)残っている訳ではない 可能性2)害してもこちら側には波及しない 可能性3)害してもこちら側での影響は軽微 可能…
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