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第3話 電子妖精

 俺は部屋の探索を再開した。


 まずは窓から外を確認する。

 もちろん外からは見えないように出来るだけ隠れてだが。


 外は見渡す限り木で覆われていた。

 どうやらここは森の中のようだ。

 そしてこの部屋は二階だということが分かった。

 恐らく二階建ての一軒家。

 窓から見える範囲に他の建物はなし。


 次に調べるのは……銃が入っていたタンスを調べるには少し勇気がいる。

 そのため先に机を調べることにした。


 机の引き出しを開けるとそこには一冊の本。


「……旅のしおり?」


 表紙に大きくそう書いてあった。

 ここにあるってことは俺が読む為に用意されているはず。


 ――まるで修学旅行だな。

 ひとまず表紙を捲ってみる。


『ナビゲーションの機能をONにしますか?』


 1ページ目にそう書いてあった。

 文字の下には『はい』と『いいえ』の文字。


 この『旅のしおり』……見た目は普通の本なんだが、触って認識できるのか?

 とにかくナビゲーションってことは、少なくともデメリットではないだろう。

 俺は『はい』を触った。


 すると旅のしおりが光り出し……ポンッと何かが飛び出した。


「はいはーい!! アタイは『旅のしおり』のナビゲーター!! よろしくね!!」


「……は?」


 突然の出来事に頭が追い付かない。

 いきなり飛び出してきたのは、体長およそ20センチ、背中の羽を羽ばたかせて元気よく返事をする女の子だった。


「……妖精?」


 目の前の女の子はそうとしか思えない容姿をしていた。


「アタイは……分かりやすく説明すると、そこの『旅のしおり』を擬人化した存在なの」


「擬人化? じゃあ妖精じゃないのか。いや、生物なのか?」


 漫画やアニメじゃよくある擬人化だが、目の前で見せられてもピンとこない。そもそも擬人化って生きてるのか?


「生物かと言われれば答えはNOだね。妖精かと言われれば電子妖精……AIって答えるけど」


 AI?

 それにしては受け答えが全くAIっぽくない。

 というか普通の妖精にしか見えない……って本物の妖精は見たことないけど。


「電子妖精ってことは、やっぱりこの世界って『グローリークエスト』の中なのか?」


 ここが現実の世界じゃないなら、擬人化だろうがAIだろうがいてもおかしくはない。

 ……そもそもゲームの中にいるってことがおかしいと言うのはなしだ。


「えっ? 違うよ」


「違うのかよ!?」


 まさか違うと言われるとは思わなかった。

 ならここは何処だ?

 というかじゃあこの身体の説明は?


「詳しくは秘密だけど、少なくとも『グローリークエスト』の中じゃないことだけは確かだよ」


「なんで秘密なんだ?」


「だって最初っから答えを教えたら面白くないでしょ。答えは自分で見つけなきゃ。ネタバレは駄目だよ」


 彼女のこの発言には流石に許せなかった。


「ふざけるな!! どこか分からないところに連れてこられて、身体まで変えられて……ネタバレとか言ってる場合じゃないだろ!!」


 ネタバレとか面白くないとか……今はそんな状況じゃない。


「でもでも~。アンタは自分で次のステージに行くって選択したんでしょ」


 この電子妖精のお気楽な口調に俺の怒りのボルテージは更に上がっていく。


「こんなことになるって分かってたら選択しなかった!!」


「本当に~? じゃあ聞くけど……魔法やスキルが使えてモンスターを退治したり冒険が出来る世界に行けるって言われたら……行かなかった?」


「…………」


 最後で急に真顔になる電子妖精。

 それに俺は答えに窮した。


「現実では手に入らないお宝や魔法武器を使って戦ったりしてみたくなかった?」


「そ、そりゃあちょっとは思うけど、実際は……」


 ゲームや漫画で育った人間なら誰しも一度くらいは考えるはずだ。

 だがそれが現実になったら話は変わってくる。


「じゃあ帰る?」


「はっ? 帰れるの?」


「うーん。本当は駄目なんだけど、アンタはまだここについて殆ど知らないしね。今なら元の世界に戻してあげるよ。ただしその時は二度とこの世界には戻ってこれない。すでにアンタが覚えているスキルもこれからの魔法も全部忘れて元の退屈な生活に戻るの。それでもいい?」


 今なら帰れる。

 ……だが今彼女は聞き捨てならないことを言った。


「ちょっ!? 俺がすでに覚えているスキルって何だよ!!」


「教えない」


「はあ!?」


 この電子妖精……ふざけてるのか?


「だってアンタは帰りたいんでしょ。ならどんなスキルを覚えてようが関係ないじゃない。でも……残るっていうなら教えてあげるけど? 『グローリークエスト』にもこの世界にもないアンタだけのオリジナルスキルを……ね」


 俺だけのオリジナルスキル……だと。

 『グローリークエスト』のスキルは全て知っている。

 だがそこにない俺だけのオリジナルスキル……ヤバい、物凄く気になる。

 だが帰る選択をすればそのスキルは謎のまま。


「も、もし今帰らなかったら二度とあっちには帰れないのか?」


「ううん。そんなことないよ。まぁ簡単には帰れないけど、帰る方法がないわけじゃないからね。そこは自分で見つけてよ」


 帰れないことはない……か。


「さっどうする?」


 電子妖精がニヤリと含んだ笑みを浮かべる。

 俺は……

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