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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第6章 プレーヤー決戦
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第287話 スカウトの理由

「ひとつ目は俺の戦力目当てだったとして、のこりは?」


 確か俺を誘った理由が3つあると言った。


「ふたつ目はスキルだ。カード化のスキルは俺の改造と非常に相性がいい」


 それは俺も常々思っていたこと。


 俺の合成では、同じ武器を作った場合、腕のある鍛冶職人の作った武器よりも劣る。

 量産品しか作れないのが唯一の欠点だった。


 一方、改造スキルは既存品を改造し、一級品を生み出す。

 もし俺のカード化で作った量産品に改造スキルを使えば、どれほどの相乗効果が生まれるだろうか。


「その相性の良さを生かせば、俺が考えている計画で、運営からこの世界を守れるはずなんだ」


「その計画とは?」


「それは正式に仲間になったら説明する」


 う~ん。もったいぶるな。


「最後は……サテラとの一件だ」


 あのダンジョンでの出来事が?


「あの時の詳細はサテラから聞いた。あれは全面的にこちらに非があるから申し訳なく思う」


 そういってエイジが頭を下げる。


「別にもう気にしていないから、そんなに何度も頭を下げなくていいって」


「しかし、俺が知らなかったとはいえ、スタンピードを起こして大変なことになっていたんだろ?」


 こいつ……魔王みたいな身なりのくせに、ちゃんと他の人の心配もするんだな。


「まぁそれもさっきサテラから聞いたし」


 エイジの指示でなく、運営への報告のためだってな。


「でも、それと俺を仲間にするのとどう関係があるんだ? 言っとくけど、あの時の俺は思い出したくないくらいサテラにボロッカスにやられたんだぞ」


 あの時は、なんとか口八丁でサテラを煙に巻いただけで、全勢力を投入しても、サテラに敵わないほどボロボロにされた。


「だからだよ」


 だからって……弱いから仲間に引き入れやすいと思ったのか?

 だとすると、さっきの戦力の話も、捨て駒みたいに聞こえるぞ。


「あの時のシュートは絶対勝てないサテラに立ち向かった。しかも、運営からペナルティをもらう可能性もあった。……もしかして、ペナルティあった?」


「いや、結局サテラが戻らなかったからなかった」


 まぁ強いてあげれば、サナが俺のベッドに潜り込んだくらいだ。


「ペナルティなかったのか。それは良かったけど、ペナルティは覚悟していたよな?」


「まぁ……その可能性は考えていた」


 実際、ナビ子が帰還するまで不安だった。


「だろ? なのにサテラに立ち向かったのは、そこにいるドラゴンを、そしてスタンピードから人々を守るため。違うか?」


 あの時点でスタンピードは解決していたが、グリムに関してはその通りだ。


「だからシュートはこの世界のことを好きだと思った。俺と一緒に運営からこの世界を守ってくれると思った。いくらシュートのスキルが必要でも、運営側なら誘えないだろ」


 ……なんだか恥ずかしくなってきた。

 要するに、俺がアイビーみたいに運営派じゃないと分かっていたから誘ったってことか。


「理由は分かった。納得もした。個人的にはエイジの意見に賛成だが、仲間になるかは話は別だ」


 俺はナビ子の方を見る。


「ナビ子はどう思う?」


「どうって……そもそも、アタイは何で運営と対立しているのかすら知らないんだよ」


 ……そうだった。

 思わず聞いてしまったけど、ナビ子は何も知らないんだった。


「シュートはアタイに隠れて、何か知っているみたいだけど」


 そう言って俺を睨みつける。

 アカン。これ、かなり怒ってるっぽい。


「じゃあ計画より先に、互いの情報の共有が必要そうだな」


「確かに」


 俺もエイジが何を知っているか気になる。

 間違いなく俺より知っている情報が多いだろうから。


「最初にいくつか質問する。まずはそれに答えてくれ」


 まずは俺が何を知っているか確認するみたいだ。


「そもそもの大前提として、なんで俺たちがこの世界に送り込まれたか知っているか?」


「いや、それは知らない」


 運営の目的は、俺とアズリアがずっと追いかけている謎だ。


「じゃあ、いつ運営がこの世界のことを知ったのかは?」


「それも知らないな」


 これも偵察機の稼働期間から、10年以上前のことだとは思うが、具体的には分からない。


「じゃあ、シュートがこの世界で最初の日本人だと思うか?」


 この質問は……。


「いや、プレーヤーとしては俺が最初だろうが、この世界に来た日本人なら俺は違う」


「へぇ。断言するんだ。知り合いにでもいるのか?」


「いや、知り合いじゃないが有名人だ。50年前に錬金術で魔道具を開発した錬金術師が、俺の知っている最初の日本人だ」


 俺の言葉にエイジよりもナビ子の方が驚く。


「へっ? その錬金術師って、コンロとかシャワーを開発した人よね。確かに日本の知識っぽい部分はあるけど、証拠はないんでしょ。たまたまじゃないの?」


「確かに絶対って証拠はないが……黒電話の開発も、その錬金術師だぞ」


 コンロとシャワーは機能的にあの形になることはあっても、機能を考えても黒電話の形にするのはありえない。

 そして、あの図鑑説明文も。


「黒電話がその錬金術師の作品だってどうやって知ったの?」


「……さる情報筋から。後でちゃんと説明するよ」


 流石にまだアズリアのことは言いたくない。


「シュートの言う通り、その錬金術師が記録上もっとも古い日本人だ」


 どうやらエイジも錬金術師が日本人だってことを知っていたようだ。

 記録上って言い方が気になるが。


「俺はその錬金術師の手記を手に入れた。そこに、運営との繋がりと、運営の目的が書いてあった」


「錬金術師の手記……」


 なるほど。

 エイジはそれで運営のことを知ったのか。


「その手記によると、運営の目的は、魔素を日本に持ち込むこと」


「へっ? 魔素?」


 全く予想していなかったので、思わず聞き返してしまう。

 俺はてっきりもっと壮大な話だと思っていたのに。


「拍子抜けって感じだな」


 顔に出ていたのか。

 エイジにズバリ言い当てられる。


「だが、その魔素で日本が……そして、この世界に危機が訪れるかも知れないんだぞ」


 エイジはそう言って、錬金術師の手記を取り出した。

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