第277話 カードマスターのレベル上げ
アイビーとやりあってから4日。
グリフォンでの移動は昼だけ。
俺達はミース王国の国境付近にたどり着いていた。
アイビーの言ったように、夜も休まずに移動していたら3日でたどり着いていたかも知れない。
「今日は遅いから、明日の朝に国境を越えよう」
「そうだね。王国内よりもこっちの方が安全そうだしね」
「僕はシュートさんの指示に従うよ」
ナビ子とタクミも異論はないようだ。
ただ、タクミは俺の言うことに反論せずに従うだけで自分の意志ではない。
アイビーのことがあってから、タクミの自己主張が更に無くなった。
一応受け答えはしてくれるんだが、自分からはあまり話しかけてくれない。
遠慮しているというか、俺を怒らせないようにしているのか。
……完全に怖がらせてしまったからなぁ。
あの時の最悪の雰囲気ではなくなったものの、しこりは残ってしまったようだ。
「……アイビーはまだご機嫌斜めなのか?」
あれから俺の前には全く姿を現せなくなったアイビー。
「うん、さっぱり。顔も見せてくれないよ。でも、旅のしおりに話しかけているから、状況は理解していると思うよ」
タクミはそう言うが、看破スキルが発動しているから、嘘をついていることになる。
実際、タクミに隠れて護衛しているアサシンビーが、夜の家の中ではアイビーは姿を見せていると報告している。
そして、アイビーは昼間の状況を逐一確認しつつ、俺への愚痴を言い続けているようだ。
タクミも俺の悪口を言っているなんて言いづらいから、嘘をついているんだろう。
「正直、出てきたらまた喧嘩になりそうだから、俺としてはこのままでいいけど」
というか、うるさくないからずっと出てきてほしくない。
俺の言葉にタクミは苦笑いを浮かべる。
流石に肯定しづらいよな。
「ただ、明日は対峙する可能性があることだけは言っといてくれ」
まぁまずないだろうが。
改造プレーヤーの現時点の居場所は誰も知らない。
そりゃサテラは日本に帰還してないから、運営だって把握できてない。
運営が分からなきゃ、ナビ子やアイビーだって知りようがない。
だから俺達が明日行く場所は、改造プレーヤーのスタート地点。
国境を越えたら、スタート地点までそう遠くない。
改造プレーヤーがそこにいれば対峙することになる。
だが、俺はその可能性は低いと思っている。
何故なら運営が唯一把握している場所なのだ。
改造プレーヤーが運営に逆らおうとしているのなら、真っ先に拠点を変えるはず。
しかし、ほぼ間違いなく居ないと分かっていても、他にヒントがないからそこに行くしかない。
俺のカード化とは違い、改造スキルでは家を持ち歩けないだろう。
だから家はそのまま残っているはず。
もしかしたら、俺達のような追手対策で家ごと痕跡は消している可能性はある。
ただ、俺が改造プレーヤーの立場ならどうだろう?
見つからないように痕跡は消しても、そこに追手が来れば分かるようにはするだろう。
魔法でもスキルでも、改造した魔道具でも。
ほんの少しでも何か痕跡が残っていたら、そこからたどり着くことができるかもしれない。
まぁ本当に何も見つからなかったら、その時は地道に近隣の村や街で聞き込みから始めるしかない。
「うん。改造プレーヤーの家に行くことは伝えるよ」
そう言ってタクミは家に入る。
……俺も最終調整をするために自室に戻るか。
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「なんとか明日までにカードマスターのレベルを4まで上げたいけど……」
明日に改造プレーヤーに会えるとは思わないけど、万が一がある。
「時間との勝負だよね」
俺はこの数日、タクミと別れた後、自室でずっとカードマスターのレベル上げをしていた。
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カードマスター
レベル1:ハイアナライズ
レベル2:カード呼出
レベル3:スキル共有
レベル4:未開放(スキル共有100回)
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レベル1のハイアナライズ100回は既存の登録スキルをハイアナライズすればいいだけだったから、すぐに終わった。
そして、レベル2はカード呼出。
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カード呼出
イメージした所持カードを手元に呼び寄せる。
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カード呼出は、図鑑に入ったカードをイメージすると、手元に召喚することができる。
ただし、カード呼出できるのは中身が入ったカードだけ。
ブランクカードや複製で作ったカードは対象外。
それから、ラビットAのように単体での種族なら問題ないが、ホーンラビットなど、何枚もあるのなら、固有スキルの違いなど、ちゃんとその個体をイメージしなくてはならない。
「このカード呼出って普通に便利だけど、本当に活躍するのって戦闘時だよな」
今まではポシェットや内ポケットなど、種類別にカードを分けて取り出していたけど、今後は全部図鑑の中に入れておけば、イメージするだけでいい。
カードの取り出しで手間取ったりしないので、今までよりも戦いの幅も広がると思う。
ただ、複製カードが無理なので、魔法はブランクカード生成で常に枚数を常備しておく必要があるけど。
このスキルも呼び出せばいいだけだから、すぐに終わった。
そして問題のレベル3のスキル共有。
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スキル共有
カードモンスターが所持しているスキルを使用することが出来る。
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「レベル3のスキル共有って、アタイの代理人スキルとそっくりだね」
確かにナビ子の代理人スキルそっくりだ。
しかし、このスキル共有は、カードの中にいないと借りれない。
つまり牧場にいるモンスターや、ダンジョンで生活しているグリムのスキルは使用できない。
それから全てのスキルが借りれるわけじゃない。
俺の体に対応できるスキルだけ。
例えば性別が違う女王の器とか、プリンセスなどは無理だし、部位欠損が治る自己再生スキルも無理だ。
それから魔の素質系スキルは借りれるが、魔法は自分で覚えないと使えない。
まぁ自分で魔法を使うのは魔力を練る時間や消費を考えると、カードを使用した方が早いし魔力も消費しないけど。
代理人スキルの下位互換って感じのスキルかな。
「借りるだけなら簡単なんだけど、実際に使用しないとレベルが上がらないのがなぁ」
このスキル共有を100回借りてさっさと終わらせようとしたんだが、何故かレベル4の開放はできなかった。
それで、ナビ子と相談した結果、スキルを借りるだけじゃなく、借りたスキルを使用しないと駄目って結論になった。
そして、おそらく同一スキルは駄目。
魔の素質を借りて、ヒールやプロテクションなどの魔法を使用。
それを100回繰り返しても駄目だった。
結果、レベル3までは1日で来れたのに、ここで足止めを食らっている。
「多分、同じスキルが駄目なんじゃなくて、同じモンスターから同じスキルが駄目なんじゃないかな」
魔の素質でも、別のモンスターから借りればカウントする。
確かにその可能性はあるかも知れない。
しかし、ハイアナライズでは使い込み完了までの残数は分からない。
もし違ったら、また無駄な時間を過ごすことになる。
「もしくは、同じスキルでも時間が経てば、また使用回数にカウントされたりして」
クールタイムじゃないけど、同じスキルなら1日に1回だけとかあるかもしれない。
それも可能性が高いけど、今から100日も待てるはずがない。
「ったく。人間の俺が100種類のスキルを借りて、しかも使用しろって、いきなり難易度上がりすぎだろ」
「いや、普通1日や2日で達成しようとするのが間違っているから」
……正論なんて嫌いだ。
俺はギリギリまでスキルの使い込みをやった。




