表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第6章 プレーヤー決戦
284/449

第272話 模擬戦決着

 ラビットAの氷柱マシンガンを、大剣クラッシャーで粉砕したタクミ。


「油断していると本当に負けそう。……怪我しても知らないからね」


 そう言うとタクミの存在感が一気に増す。

 どうやら本気になったようだ。

 そのままラビットAに襲いかかる。


「きゅしーん!」


 それに対してラビットAは、魔法用のラビットステッキから接近戦用のボーパルソードに持ち替える。

 どうやら真っ向から受けて立つようだ。


「はははっ、接近戦でバルガスに勝てるわけないじゃない!」


 向こうからアイビーの高笑いが聞こえる。

 確かにタクミには、相手の能力を下げ、その分自分の能力が上がる絶対領域がある。

 それはラビットAも知っているんだが……それでも接近戦で戦うと。

 何か策があるのかな?


 接近戦の先制はタクミ。

 クラッシャーを水平にラビットAを斬りつけ……速い!?

 俺の予想を遙かに上回る剣速だったが、ラビットAはジャンプして難なく避ける。


「シュートだったら、今ので上半身と下半身が真っ二つになってたね」


 確かに。

 俺があれを受けていたら、避けられずに今頃生きていなかったと思う。


「……俺は近づかないから大丈夫なんだよ」


 俺は精一杯虚勢を張る。

 でも、実際俺が模擬戦相手だったら、今の状況にはなっていなかった自信はある。

 まっ、相手の有利な状況で戦わないのが勝利するコツってね。


 そのタクミの有利な接近戦だが、それでもラビットAの方が優位になっているようだ。


「やっぱりあれだけ大きな剣だと、攻撃が当たらなかった後は隙ができるね」


 タクミの攻撃を避けた後、ラビットAが反撃。

 タクミはそのまま防戦一方となっていた。

 やはりクラッシャーでは、一度体制が崩れると、立て直すのは至難の業のようだ。


「にしても、タクミは防御は今ひとつだな」


 一応ラビットAの攻撃を防いではいるものの、かなり必死だ。

 しかも、見る限りラビットAは全然本気じゃなさそうだし。


「今まで防御することがなかったんじゃない? だって、絶対領域でみんな弱ってるんだもん」


 確かにそうかも。


「ん? そういえば、ラビットAに絶対領域は効いてないのか?」


 あの動きは、とてもじゃないけど弱っているようには見えない。


「もしかしたら、不可侵のスキルのお陰かも」


 不可侵のスキルは妨害系のスキルを無効化する。

 しかもレア度は絶対強者と同じ星5。

 基本的にレア度が高い方が無条件で強いのだが、同格ならレベルや使い手の能力が強い方が勝つ。

 つまりスキルでもラビットAの方が格上ってことだ。


「何でっ!? 何でこの子は……!?」


 タクミも絶対領域が効いてないことに気づいたようだ。


「きゅしし。そんなの効かないもん」

「くっ……」


 たまらず距離を取るタクミ。


「ちょっとバルガス! なに手間取ってるのよ!」

「あの子、なんか変なんだ。全然弱くならないし、パワーも吸い取れない」

「そんなはずないじゃない! 相手はただのガキンチョなのよ!」

「きゅむむ……またガキンチョ言った! もー怒ったもん!」


 怒ったラビットAは魔力を練り始めた。

 また新しい魔法かな?

 ちょっとワクワクしながら魔法の発動を待っていると、突然ラビットAの姿が消えた。


「えっ!? ぐぁ!?」


 目の前で消えたことに驚くタクミ。

 だが、次の瞬間、そのタクミが前のめりに吹っ飛ぶ。

 いつの間に移動したのか、タクミの背後にラビットAが移動して、背中を蹴ったようだ。


「……もしかして、テレポート?」


 まさかもう実用可能なレベルまで使えるようになっているとは思わなかった。

 アザレアから、最初は目に見える範囲で転移の練習するようにって言われていたが、まさに今のテレポートはそれを実践できていた。


「多分、進化したことが大きいんだろうけど、ラビットAって、いつも遊んでいるように見えるけど、ちゃんと努力もしているんだよ」


 ちゃんと努力をしているから、進化してパワーアップした時に使いこなせるってことか。


 倒れたタクミが起き上がろうとするが、その前にラビットAがタクミの背中に飛び乗り、後頭部にボーパルソードを突きつける。


「きゅしし、まだやる?」


「……いや、僕の負けだよ」


 タクミは起き上がるのを諦め、うつ伏せのまま寝そべった。



 ****


「はぁ? 土下座なんかするわけないでしょ」


 模擬戦が終わり、アイビーに土下座をして謝罪するように言ったのだが……。


「おい。約束が違うじゃないか。電子妖精が約束を破っていいと思っているのか?」


 約束を破るってことは嘘を付くと同義だよな?


「アチキが土下座をするって約束したのは、決闘に負けたら。でも今のは決闘じゃなく模擬戦じゃない」


「はぁ? そんな言い訳が通じると……」

「通じるに決まっているじゃない。だから、アチキはアンタが負けたら言い逃れるか確認したじゃない。それは決闘と模擬戦が違うと思ったから。そしたらアンタはどんな条件でも土下座するって言った。でも、アチキは模擬戦で土下座するとは言ってない」


 確かにどんな条件でも土下座するって言ったのは俺だけで、その時のアイビーは土下座するとは言っていない。


「ふふん。自分の愚かさを理解したようね」


 アイビーが勝ち誇ったように言う。

 くそ……確かに約束を取り付けなかった俺が悪いが、マジでムカつく。


「まぁまぁ。土下座なら代わりに僕がするから」


「いや、タクミに土下座されても……」


 俺がギャフンと言わせたいのはアイビーなのだから。


「そうよ! アンタが負けたんだから、アンタが土下座しなさいよ! そもそもアンタが負けたからコイツの土下座が見れないのよ!」

「いや、仕方ないよ。だって、あの子は本当に強かったんだ。手も足も出なかったよ」


 確かにタクミはラビットA相手に何もさせてもらえなかった。

 原因としては、強すぎるスキルに頼りきりで、技術を磨いてない点かな。

 ラビットAのようにスキルを封じられたら、終わりってことだ。


 そのラビットAは少し離れた場所で、嬉しそうにご褒美の巨大ニンジンに齧りついている。

 うん、かわいい。


「そーだ!」


 そのラビットAが何か閃いたようで突然立ち上がる。


「きゅ~っと。けんぞくしょーかーん!」


 ラビットAがそう叫ぶと、誰もいなかったラビットAの周囲にウサギの集団が現れる。


「眷属召喚!? おいおい、使えるのかよ!?」


 昨日は使い方が分からないって言ってたのに……。


「あの後ちゃんとティータに聞いたみたいだよ」


 それで使えるようになったのか。

 しかし……眷属って魔兎族が現れるわけじゃないのな。

 あそこにいるのはホーンラビットを始め、ツインホーンラビットにアルミラージ、ジャッカロープ、ヴォルパーティンガーなど。

 どこかで見たことあるような……って!?

 あれ、全部俺のカードモンスターじゃねーか!!


 あのウサギ集団は、今は牧場にいるはずじゃ……。

 と、ここで通信機にサナから連絡が入る。


『シュートさん! 今、急にウサギさん達が消えたんですけど……呼び戻しました?』


「あっ、うん。……似たようなものかな」


 俺はそう答えるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ