第28話 いざゴブリン討伐へ
俺達はゴブリンを討伐する為、前回ゴブリンを目撃した場所までやって来た。
ここならナビ子がゴブリン達の気配を探知できて、ゴブリン達にはバレない。
「ナビ子。今あそこにはゴブリンが何体くらいいるんだ?」
俺にもゴブリンの姿は確認できるが、見えない場所があるので、何体いるかまでは把握できない。
ナビ子なら気配察知で何体いるか分かるはずだ。
「え~っとね。今は10体かな。前回より少し多いと思う」
10体か……前回より多いってことは、他の場所にもゴブリンはいるのか?
「ラビットA。ゴブリン達ってあそこに棲んでいるのか?」
「きゅううん」
否定。
流石に別の場所に巣があるらしい。
まぁここは雨風しのげないからな。
問題はそれがこの近くかどうか。
それから、その巣には何体のゴブリンがいるのかってことだ。
もしその巣がこの近くで、戦っている最中に増援があったら大変だ。
ナビ子の気配察知には引っ掛からないようなので、すぐ近くではないと思うが……
「……少し様子をみるか」
とりあえず他にゴブリンがいないか、ゴブリンの巣がないか。
一旦ここで様子を見ながら、サイレントビーに偵察に行ってもらうことにした。
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サイレントビーの偵察の結果、ゴブリンはもう少し登ったところにある洞窟に棲んでいたことが分かった。
洞窟といってもダンジョンではなく、ただの洞穴のようだが。
そこに約100体のゴブリンがいるそうだ。
ただ詳しい状況は分からない。
なにせサイレントビーは話せないし、俺は感覚共有などのスキルを持っていない。
この情報も左右に移動の二択でようやく聞けた情報だった。
サイレントビーがこれ以上の情報を持っていても、これ以上は二択で聞き出せない。
もし100体のゴブリンと戦うことになったら……いくらラビットAやキラーホーネットが強いと言っても多勢に無勢。
流石にこの戦力では勝てないだろう。
俺達はもう少し様子を見ることにした。
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それからしばらくすると、新たなゴブリン達が10体ほどやってきた。
どうやら見張りの交代のようだ。
最初のゴブリン達は巣へと帰った。
交代のタイミングはまだ分からないが、少なくとも俺達がここに来てから1時間以上経っている。
ってことは、今から1時間はゴブリン達は新しくやって来ない?
なら交代したばかりの今がチャンスかもしれない。
「ナビ子……今から奇襲を……」
「ちょい待ち」
ナビ子がいつもと違い真剣な表情で答える。
「……ゴブリンとは別のモンスターが来たみたい。多分アンブロシア目当てのモンスターよ」
それは……確かに待った方がいいな。
しばらく待っていると、そのモンスターが見えてきた。
「あれは……ワイルドディアね」
ワイルドディア……
ディアってことは、鹿がモンスター化したのか。
確かに鹿っぽい見た目をしている。
だがその角は……はっきりとモンスター分かるくらい凶暴な形をしていた。
どうやらゴブリン達も近づいてきたワイルドディアに気づいているようで、分散して息をひそめている。
ワイルドディアは慎重にアンブロシアに近づく。
ここにゴブリンがいることを知っているのだろうか?
なら近づかなければいいのに……と言いたいが、おそらく危険を冒してもアンブロシアが欲しいんだろうな。
ワイルドディアがゴブリン達のテリトリーに入ると、ゴブリン達が一斉に襲いかかる。
タイミングもバッチリで、うまく連携も取れている。
ゴブリンってのは知能が低く、適当に戦うとばかり思っていたが……
「あの中にリーダーがいて、上手に指示だししているようね」
「そのゴブリンのリーダーって上位種とか?」
「上位種じゃないけど……多分何かしらのスキルを持っているんじゃないかな?」
なるほど。
クイーンビーと似たようなスキルなのかもしれない。
「それからワイルドディアが見える前に隠れてたから……探知系のスキルも持っているゴブリンがいるね」
なるほど、探知系を持っていれば気づかれる前に隠れられるのか。
ゴブリン達がここで待ち伏せするには最適なスキルかも知れない。
――リーダーと探知系のゴブリンは把握しておきたいな。
その2体はモンスターカードにするよりも、スキルカードにしてスキルを手に入れたい。
「リーダーと探知系のゴブリンがどれかは分かるか?」
「リーダーは戦闘に参加してないゴブリンのどれか。探知系は……流石に分からないよ」
現在ワイルドディアと戦っているゴブリンは5体。
あとの5体はワイルドディアが逃げ出さないように囲んでいる。
リーダーは各ゴブリンに指示を出す役目があるから、ナビ子の言う通り、現在戦っていないゴブリンのどれかだろう。
探知ゴブリンは……万が一、他にも敵がいたらと考えるなら、状況把握に集中するために、戦ってないんじゃないのか?
何も考えていないゴブリン達ならともかく、組織だっているゴブリンならその可能性が高い。
ってことは、その5体のうち2体が該当のゴブリンのはず。
区別が付けばいいのだが……
そう考えている間に、ワイルドディアとゴブリンとの決着がついた。
ワイルドディアの攻撃は角で正面から攻撃をするだけ。
正面のゴブリンは棍棒で角を防ぎ、防御に徹する。
周りを囲まれているため逃げることは出来ず、側面や背後からの攻撃でワイルドディアは倒された。
最終的には1体のゴブリンも仕留めることができずに倒れてしまった。
ワイルドディアの死体は戦闘に参加しなかったゴブリンのうち2体が巣へと持ち帰る。
ワイルドディアと2体のゴブリンを見逃すのは少し勿体ない気もしたが、ここはそのまま見送る。
10体のゴブリンを相手にするより、8体のゴブリンの方が勝率が高くなる。
それに……獲物が手に入ったとなれば、騒いで増援が来る確率が低くなると考えられた。
それに戻った2体はリーダーでも探知系スキルの持ち主でもないだろう。
探知系がここで抜けると次の獲物が分からなくなるし、リーダーも同様だ。
今度こそチャンスだ!
5体のゴブリンは戦闘が終わったばかりで疲れている。
残り3体も戦いが終わって油断している。
俺は8体のゴブリン相手に、このまま奇襲を仕掛けることにした。




