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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第6章 プレーヤー決戦
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第263話 絶対強者

 次の日、合成を終えた俺はトロイ山へ向かうことにした。


「ねぇねぇシュート。歩いていくの?」


 ナビ子の問いに頷く。


「ああ、グリフォンもユニコーンもあまり見せたくないからな」


 相手がどういう人物か分かるまでは、手の内を見せたくない。


「それなのに、ラビットAは普通に連れてくのね。戦力的には一番隠さないといけないんじゃない?」


 俺の隣にはラビットAがいつもの魔法少女姿。

 が、少し成長したことにより、魔法少女姿も限界に近づいている。

 これ、自力で成長するんだったら、新しい服を用意しないとな。


「ごえーするの!」


 ふんすっと息巻いている。

 うん、かわいい。


「ナビ子の言う通り、ラビットAは俺の最高戦力だけど、見た目はこれだし、不可侵スキルで能力を見破れないだろうから、護衛としてピッタリなんだよ」


 元々持っていたスキル妨害以上の性能なんだから、観察眼でも見破れないんじゃないか?

 それに、この格好の少女がくっそ強いとは誰も思わないはず。


 それから第六感と千里眼のスキルの使い勝手を知りたい。

 アントープの冒険者が狩りや採取に訪れる山だ。

 ゆっくり歩きながら、モンスターや珍しい植物を見つけていきたい。


「まっ、今日中に会えればいいんじゃない?」


 そんな軽い気持ちで俺は出発した。



 ****


「きゅ、シュート。この山おかしー!」


 山に入ってしばらくすると、ラビットAがそう言った。

 うんうん。

 きゅートって呼ぼうとしたのを必死で堪えたって感じだが、ちゃんとシュートって呼んでくれた。

 なんだかすごく嬉しい。


「シュート。ちゃんと名前を呼ばれたことに感激している場合じゃないよ」


「うっ、確かにそうだな。ラビットA。おかしいって何がおかしいんだ?」


 俺が見たたころ、普通の森って感じだけど。

 いや、それなりに歩いて、まだモンスターに出会っていないのは、おかしいっちゃあおかしいか。


「モンスターみんな怖がってる」


 モンスターが怖がっている?


「アタイの気配察知でも、モンスターは隠れて動こうとしないの」


「なぁ。怖がっている原因ってなんだと思う?」


「シュート。分かってて聞いてるでしょ」


 まぁねぇ。

 でも、あんまり考えたくないじゃん。

 だけど、ナビ子の返事でハッキリした。

 この異変は連勝プレーヤーの仕業で間違いないってことだ。


「これが連勝プレーヤーの【絶対強者】のスキルか」


 昨日の内にナビ子に聞いたが、連勝プレーヤーが貰ったスキルは絶対強者というらしい。


 絶対強者は剣術や槍術など、全武術系をまとめたスキルだ。

 実践が素人のプレーヤーでも、すぐにある程度の武術を使えるようになる。

 まぁそれでも達人の域に達するには、かなりの努力は必要だろうが。


 そして、レベルが上がると、様々な戦闘系能力を覚える。

 例えば、防御魔法やスキルを無効化するブレイク系能力。

 そして、ケガをしてもすぐに治る自己治癒促進の強化版スキルに、自身に妨害スキルが効かないラビットAの不可侵のような能力。

 さらに戦闘時に自分の能力アップと、相手の能力ダウンや威圧系の効果。

 もちろん魔法だって使えるようになるらしい。


 まさに、戦闘に特化したスキルって感じだ。


 そして、絶対強者の一番の特徴が、勝者の覇気という能力。

 モンスター限定……というか、魔石らしいのだが、魔石を絶対強者のスキルで破壊すると、その魔石の種族が登録される。

 登録された種族のモンスターには、威圧系の上位スキルである覇気が発動し、相手の戦意を喪失させる。

 つまり、登録さえしてしまえば、その種族は連勝プレーヤーに絶対に勝てなくなる。


「この山のモンスターは全種類登録されて、全てのモンスターが怯えているって考えた方がよさそうだね」


 まぁ4ヶ月くらい山に籠もっていたら、山のモンスターくらいコンプしてもおかしくない。


「しかし、だったらモンスターは逃げればいいんじゃないか?」


 別にモンスターだからって、ずっと同じ場所にいなくちゃ駄目ってことはない。

 実際、ブルームでは山からモンスターが下りてきていたしな。

 まぁあれは別の原因だったけど……でも、原因が分かる前は、強力なモンスターから逃げ出したかもって考察をケフィアとした。

 まさにその考察どおりの状況だと思う。


 でも、アントープの街でで山のモンスターが下りてきたって話は聞いてない。

 ってことは、モンスターは逃げていないってことだ。


「う~ん。ここのモンスターは逃げないんじゃなくて、逃げられないんじゃないかな。ほら、威圧を受けたことがあるシュートなら分かるんじゃない?」


 うっ、また思い出したくないことを。

 確かに覚えがあるけど、あんまり触れられたくないんだが。


 俺は、ゴブリンジェネラルの威圧に、動けなくなり、その場でへたりこんだことがある。

 その時は逃げることなんかできないと思って、死を覚悟したっけ。

 幸い、ナビ子キックでなんとか呪縛から逃れて、返り討ちにできたが……なるほど。

 ここのモンスターはあんな状態なのか。


「絶対強者……マジでヤバいスキルだな」


 1回でも勝つと、種族全体で勝てないとか、もう敵なしじゃないか。

 しかも効果範囲が山ひとつ分とかめちゃくちゃ広いし。


「でもまぁ俺たちにはそんなにヤバくないか?」


 勝者の覇気は魔石を使う。

 人間には魔石がないから、俺には効かない。

 それに、ラビットAやティータのような種族がこの山にいるはずないから、ラビットA達にも関係ない。

 強いてあげるなら、この山に生息していそうなモンスターだけ召喚しないようにすればいいかな。


「言っとくけど、勝者の覇気が効かないだけで、普通に戦った場合の能力ダウンとかはあるんだからね」


「まぁそうだけど……それくらいならラビットAの敵じゃないって。なっ、ラビットA」

「きゅい! らくしょー!」


 ラビットAが自信たっぷりに言う。


「何ふざけたこと言ってんのよ!! そんな変なのに負けるわけないじゃない!!」


 そこに突然、森の奥から大きな声が聞こえた。

 声がする方を確認すると……見えてきたのは金色の妖精。


「げげっ、アイビー!? アンタ、何でここに?」


 やはり彼女がアイビーのようだ。

 見た目はナビ子と殆ど変わらない。

 が、ナビ子は金色ではなく緑色。

 う~ん。色が違うだけでも随分と印象が変わるもんだな。

 ぶっちゃけ、金色ってだけで、向こうの方がナビ子よりも気品がある気がする。

 というか、ナビ子に気品が無さすぎるだけなんだが。

 こっちから会いに来たんだから、『げげっ』はないだろ。


「何でって、ようやく来たみたいだから、このアチキ自ら迎えに来てやったんじゃない」


 アチキ……一気に気品がなくなった。

 ったく、もっとティータのような気品溢れる電子妖精はいないのかねぇ。


「そっ、そうなんだ。迎えに来てくれてありがとね」


 ナビ子が慌てて取り繕うが……アイビーには通じなかったようだ。


「それなのに、弱いだの楽勝だのげげっだの……アンタ達、アチキ達を舐めてんの?」


 弱いとか一言も言ってないけど……まぁニュアンス的には似たようなものか。

 どうやらアイビーはかなりお怒りの様子。

 さて、どうしたものか。

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