第262話 幹部進化
「さて、残るは第六感と不可侵と自力成長だな」
まだ運営の闇を知られたくない俺は、少し強引に千里眼の話を打ち切って次へ進める。
「ねぇシュート」
「な、なんだ?」
やっぱり少し不自然だったかな?
普段の俺だったら、もっと千里眼や全能眼について質問するもんな。
だが、予想に反してナビ子は別の話をした。
「登録ってどうなってんの?」
「はっ? 登録?」
何でここで突然登録が出てくるんだ?
「カード化スキルをマスターして、全部の能力がアップしたんでしょ? でも、そういえば登録だけ聞いてなかったなって。登録も能力アップしたんでしょ?」
「あ~そういえば、登録だけ試してなかったわ」
「なんで!?」
俺がそう答えると、ナビ子がビックリする。
……そんなに驚くことか?
「いや、だってさ。カード化スキルをマスターしたときに、未登録の物が近くになかったんだよ」
マスターした時は自室でのこと。
既に家ごと全てカードにしている時点で、新規登録できるものがない。
「んで、後回しにして分解とかを確かめて……そしたら次の日でナビ子が帰ってきただろ」
後は離れずに行動していたから、ナビ子も知っているはず。
アントープでも、珍しいものはヨルクから貰ったから、登録せずともカードになっているしね。
「そういえば、あの人は確認しなかったの?」
「俺はアザレアみたいに誰彼構わず覗き見なんかしないぞ」
「……それ、アザレアに言ったら怒られるよ」
うん。ガチで怒られそうだ。
「別にアザレアを非難しているわけじゃないよ。というか、図鑑コンプを狙うなら、アザレアみたいに鑑定するのが正解だもんな」
ただ、俺の場合はその人物に接触する必要があるから、難しいところがある。
まぁ少し気が引けるってのもあるけどね。
「じゃあ登録もパワーアップしているだろうし、ラビットAのスキルを確認してみようよ」
元々所持していないスキルはレシピだけが表示されていた。
しかもレシピも所持しているスキルがないと分からないし。
確かに登録がパワーアップしているなら、もう少し情報開示されていてもおかしくない。
俺はスキル図鑑を取り出して、登録順にソートする。
うん。ちゃんと新しいスキルが記載されている。
とりあえずその中から第六感を確認してみる。
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第六感
レア度:☆☆☆☆
勘が鋭くなる。
星3以上察知系スキル×星3以上直感系スキル
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「おおー! レア度と詳細が載ってるぞ」
普通のカードの詳細に比べるとアッサリしているけど。
レベルがないのは、所持してないからだな。
「ねぇシュート。これ多分、第六感と千里眼が合わさったら、すっごく便利だと思うよ」
嗅覚の効果で、あっちに何かある。危険察知の効果で、そこが危険っぽいと感じる。
何もなくても何となく直感でそこら辺が気になる。
そこを千里眼で確認する。
確かにかなり便利そうだ。
というか、千里眼には必須レベルじゃね?
この調子で残りも確認してみる。
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自力成長
レア度:☆☆☆☆
どんな状況下でも成長することができる。
成長系スキル×解呪系スキル
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不可侵
レア度:☆☆☆☆☆
スキル、魔法などの効果を妨害する。
スキル妨害×魔法妨害×妨害系スキル
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「不可侵はスキル妨害と魔法妨害が合わさったスキル、自力成長は……これだけはよく分からないな」
どんな状況下でも成長するって……どういう意味だ?
「本来の意味なら、成長しない呪いや魔法を掛けられても成長するって意味だろうね。だから、ラビットAの場合は、多分カードモンスターでも成長するってことかと」
マジか。
「なら、ラビットAは合成しなくても、このまま過ごしているだけで大人になれるのか?」
それは凄いな。
でも、それだと寿命もあるってことに?
グリムと似たような状況かも知れないな。
一応、さっきまで考察したスキルも調べてみたが、眷属召喚は眷属を召喚するとしか書かれてないし、プリンセスのスキルも姫系スキルの詰め合わせとしか書かれていなかった。
まぁどれも考察通りのスキルみたい。
ともあれ、ラビットAに関してはこれくらいか。
登録のパワーアップした能力も把握できたし、残りの幹部の合成も開始した。
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ビーパラディン
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:聖騎士の心得、光の覚醒、槍術、聖騎士の守護、状態異常無効
個別スキル:三位一体、邪変換
聖なる加護を得たビーナイト。
毒や呪いなどあらゆる状態異常を防ぐ。
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ビーダークナイト
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:闇騎士の心得、闇の覚醒、槍術、闇の闘気
個別スキル:三位一体、光属性無効、状態異常率アップ
闇に染まったビーナイト。
毒や呪いなどあらゆる状態異常で相手を弱らせる。
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ビーガードナイト
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:騎士の心得、槍術、統率、騎士の号令
個別スキル:三位一体、万能毒
女王を守護する近衛騎士。
ビーナイトのリーダー。
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聖騎士に闇騎士に近衛騎士か。
相変わらず三位一体のスキルは持っているけど、ついに種族は別になったか。
「しかし、どれも星4から変わらなかったな」
元々星4のビーナイトが進化したし、明らかにビーナイトよりも格上だから、星5かと思ったんだが。
「星5はやっぱり王とか女王とか、称号付きだけなのかな?」
妖精女王とか、ラミアクイーンとか、あとお姫様とか。
グリムだって竜王だもんな。
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アサシンビー
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:闇を統べる者、影移動、影転移、不可視、闇同化、暗殺術
個別スキル:状態異常率アップ
シャドービーの特殊個体。
影だけではなく、闇にも溶け込めるようになった。
暗殺にかけては右に出る者はいない。
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でも、こっちは星5と。
闇を統べるとか大層な感じだからかな。
それとも特殊個体だからか?
考えたらこっちはサイレントビーからずっと特殊個体状態だよな。
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ドラゴニュート
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:竜、火の覚醒、槍術、炎耐性、自己再生、飛翔
個別スキル:風の素質、苦労人
中級の竜人族。
硬い鱗で覆われ、傷つけるのが困難。
たとえ傷つけても、すぐに再生してしまう。
槍の扱いに長け、口からブレスを吐く。
亜人系モンスターでは最強種族とされている。
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ウチの残念トカゲもついに星4。
名称は星3のころから変わらずドラゴニュートのまま。
だけど背中には立派な翼が生えている。
竜のスキルも手に入れたし、確実に成長しているな。
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アルケニー
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:魅了の魔眼、誘惑、万能糸、器用
個別スキル:待ち伏せ、人化、捕縛
アラクネの上位個体。
個体の中には完全に人間の姿に化ける個体もおり、人里で異性を誘惑し、巣へと連れ帰る。
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「みちゃだめー!」
ナビ子に目を塞がれる。
どうやらアラクネが更に色っぽくなったようだ。
う~ん。楽しみだなぁ。
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Eセイレーン
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:水の極意、風の極意、歌姫、魅了
個別スキル:不協和音、変身、適応
半人半魔の上級魔族。
海のセイレーンと空のセイレーンの能力を持つ特別個体。
どんな環境にも適応できる。
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セイレーンの進化個体はまさかのセイレーン。
見た目は今までと変わらず空のセイレーンだが、状況に応じて海のセイレーンにも変化するらしい。
どちらの性質も併せ持つってのは凄いよな。
ちなみに合成にはギルマスから貰った水竜石を使用した。
「にしても、Eってどういう意味だろう?」
「さぁ? なんかの頭文字じゃない?」
ナビ子にも分からないらしい。
Eか……悪って意味のイビルとか、海と空の統合でイコールとか?
う~ん。これといったことは思い浮かばないな。
「んで、お前は本当にいいのか?」
俺はホブAに問いかける。
「このままの方がいいゴブ」
ホブAは今のゴブリンジェネラルのままの方がいいらしい。
まぁホブAの進化先は間違いなくキングになるだろうからな。
キングになると、支配力が上がるが、自己の能力がガタ落ちする。
それに、当時のキングに追放されたことを考えると複雑な思いがあるんだろう。
まぁ自分に自信を持つことができてからでいいだろう。
ホブAが断ったことにより、他のゴブリンも軒並み辞退する。
ミストに至っては、この場にいないしね。
「あとは……ユニコーンはやっぱりペガサスにしたいな」
「シュート。言っとくけど、ペガサスに角は生えてないからね」
……マジか。
俺はユニコーンに翼が生えただけだと思ってたんだけど……。
「それに、空を飛ぶならグリコがいるでしょ!」
やはりナビ子はユニコーンにはうるさい。
仕方がない。
ってことで、ユニコーンの進化先は考え直すことになった。
「残りは申し訳ないけど、また今度かな」
元々星5のティータやメーブは対象外。
それからカーバンクルもまだ進化したばかり。
残りは残念ながらこれからの戦力になるか微妙。
そういうわけで、日を改めて合成することにした。
まっ、戦力としては連勝プレーヤーに負けないくらい強力にはなったんじゃないかな?




