第248話 牧場づくり
「おーいナビ子ー! 帰るぞー!」
村長と話がまとまったので、広場で子供達と戯れているナビ子に声をかける。
「シュートぉ。遅いよぉ」
俺の声を聞いて、ナビ子が半泣き状態でこちらへ来る。
それに続くユニコーンに、カラドリウスとスイートツグミ。
2羽とも呼び出していたのか。
「おっ、おお。悪い」
「もう本当に大変だったかんね! 虫扱いされるし、芸をしろって無茶振りされるし、芸をしたらしたで、ラビットAの方が良かったって愚痴られるし」
半泣きどころか今にも本泣きになりそうである。
……芸って何したんだろ。
聞きたいけど、教えてくれないだろうな。
「ほんと、子供達の体力と遠慮なさを舐めてたわ」
子供達って遊びにかけては底無しの体力だからなぁ。
そして悪気がない分たちが悪い。
「ラビットAはあの子達を満足させられるんだから凄いよ」
まぁラビットAの場合、凄いというより、単純に子供と同レベルなだけだ。
「お兄ちゃん! やっぱりあのウサギじゃないと。虫じゃ駄目だよ!」
ナビ子を追いかけて子供達も集まってくるが……ナビ子も散々だな。
「だから虫じゃないって……はぁ」
もはやツッコむ気力すらないようだ。
「分かったよ。次来るときは、ちゃんとウサギも連れてくるから」
「絶対だよ!」
……ラビットAの後継者を探さないとな。
とりあえずアルミラージに芸を仕込まないと。
そう誓いながら村を後にした。
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「マスター。お帰りなさいませ」
「ただいま。そっちは変わりなかったか?」
「ええ。手入れの方も何事もなく完了いたしました」
ティータの言うとおり、雑草まみれだった場所は綺麗に整備されていた。
これなら家を召喚しても問題ないだろう。
俺はティータ達を労って、家を召喚する。
「……見た目は殆ど変わらないな」
「そりゃあ家に差をつけたりしないよ」
そっか。
まぁ他のプレーヤーの家には3階建てとか言われたら、俺だってズルいと思う。
一応、内装も確認してみるけど、やはり俺の今までの家と何ら変わりはなかった。
家具や家電も全く同じ。
まぁ中身はサナに渡しているから空っぽだけど。
冷蔵庫は……俺が不在の時でも使えるように、ある程度、中に常備していた方がいいな。
というわけで、家の中は問題なかったので庭の方にでる。
うん。こっちも元通りだな。
「じゃあ次は牧場づくりになるけど……ラビットA達はまだ戻ってきていないのか?」
いるのはティータ達3人だけ。
「いえ、戻ってきているのですが、邪魔ですのであちらへ行っていただきました」
あちら?
俺は気になったので、ティータが指した方へ行ってみた。
「……なるほど。確かに邪魔だな」
そこにあったのは大量のモンスターの死体。
なんだかデジャブを感じる。
「きゅやぁ」
いや、そんなドヤ顔されても。
コイツには同族を殺す罪悪感はないのか?
……今さらか。
「申し訳ありません主。リーダーの暴走を止めることができませんでした」
「いや、メーブは悪くないから」
むしろ、メーブがいなかったら、まだ戻らずに狩りを続けていたんじゃなかろうか。
とりあえず、仕分けは今度にするとして、今はまとめてカードにする。
大きな布を被せれば、カード1枚で収まるから楽なもんだ。
次にラビットAとメーブ以外をカードに戻す。
またすぐに召喚することになるだろうが、打ち合わせが終わるまでは邪魔になる。
片付けてティータの所に戻り打ち合わせを始める。
「とりあえず牧場づくりに必要なモンスターは、どんなモンスターが必要だ?」
「まずは植物系モンスターと、土いじりの魔法が使えるモンスターを全員召喚してください」
さすがに今度の範囲は広いため、他の植物モンスターの協力が必要。
それから、土いじりの魔法は、すでにラビットAがブランクカード生成で量産しているので、土の素質持ちのモンスターに覚えさせるだけ。
地面の舗装など、様々なことに役に立つ。
「それから、木を切り倒すのに必要なモンスターと、荷物運びや力仕事用のモンスターもお願いします」
木を切り倒すのは、デスシックルなど鎌系のモンスターでいいだろう。
荷物運びはレッドボアとかユニコーン獣系モンスター。
力仕事は……ゴブリンでいいよな。
「というか、荷物運びは俺がカードにして運べばいいんじゃない?」
「マスターには切り倒した木で、モンスターの寝床や柵などを合成で作って頂く仕事があります」
そっか。
流石に屋根ありの寝床……牧場なら牧舎って言うのかな?
まぁモンスター小屋でいいだろう。
確かに必要かもしれない。
それに、柵も大事だな。
「分かった。俺は合成担当だな」
「じゃあアタイが切った木をカードにしてシュートに渡す係ね」
「ではナビ子さんはそれで」
結構投げやりにティータが言う。
多分ナビ子は数に入れてなかったな。
「わたくし達が住む場所を作るのですから、皆さん気合を入れて作業に取り掛かってください」
「きゅい!」
ラビットAが元気に返事する。
……いったい誰が本当のリーダーなんだろうな。
まぁ俺も似たようなものだけど。
本当、頼りになる仲間たちで嬉しいよ。




