第26話 ナビ子先生の魔法講座
今までは自分が使えなかったと思って、あまり深く聞いてこなかった魔法についてナビ子に聞いてみる。
「魔の素養があれば魔法が使えるんだよな?」
「うん。他にも【魔の素質】や【魔力操作】のスキルでも魔法が使えるよ」
素質と素養……どう違うんだろ?
そう思って尋ねてみると、素質は生まれながらに持っている才能。
素養は生活などにより後天的に発生するスキルだそうだ。
モンスターは基本的には種族スキルとして、素質しか持っていないらしい。
ラビットAの場合は合成の副作用か、それともラビットA自身の努力の成果か。
少なくとも、ラビットAが普通のアルミラージじゃないのは確かのようだ。
他にも魔法が使えるようになるスキルは火の素養・素質、水の素養・素質など、その属性の魔法だけが使えるスキルがある。
魔の素養・素質はどの属性も使える可能性があるらしい。
つまりラビットAはどの属性の魔法も使える可能性があるってことか。
ますますとんでもないな。
「それから、別に魔の素養のスキルがあっても、すぐに魔法が使える訳じゃないの。まずは魔法を覚えないとね」
要するに現時点で魔法は使えないが、魔法を覚えさえすれば魔法が使えるようになると。
俺が今持っている魔法カード……これを使えばラビットAが魔法を使えるようになるのか。
使ってみるべきか、やめとくべきか。
魔法カードが複数あれば、すぐにでも使っただろう。
しかし現状は各1枚ずつしか持っていない。
この先のことを考えると……う~ん。
「なぁナビ子。もしラビットAが魔法を覚えたとして、次に合成した時に魔法は使えるままなのか?」
「合成した時に魔法関係のスキルを引き継げば使えるよ」
……逆に言えば、魔の素養のスキルが合成時に引き継がれなければ、合成先のモンスターは魔法を使えなくなるってことか。
おそらくラビットAはアルミラージよりも先の進化も希望するはずだ。
その際に魔の素養のスキルが引き継がれなければ、ラビットAは魔法が使えなくなる。
ナビ子は7~8割は引き継がれるって言ってた。
ラビットAは3つの個別スキルを持っているから、1つは引き継がれない可能性が高い。
「……魔法の習得は後で考えることにするか」
ラビットAには今後も世話になると思うので、貴重な魔法カードを使うのは吝かではないが、ずっと使えるか分からないのなら、今使うのは気が引ける。
「普通のモンスターなら進化した時にスキルや魔法は引き継ぐんだろうけどね。これは進化じゃなくて合成だから……それにカード化のスキルはシュートのオリジナルスキルだからね。実際に使われたことがないから、アタイ達も分かってない部分が多いんだ」
アタイ達ってのは運営のことだろう。
やっぱり俺をデバッカーだと思っていそうだな。
でもナビ子にも良く分からないのなら、普通の進化では引き継ぐのが普通……もしかしたら、魔法を覚えていたら合成しても優先的に引き継ぐ可能性があるのかもしれない。
「そういえばカードモンスター以外はどうやって魔法を覚えるんだ? 生まれた時から覚えているのか?」
「モンスターは基本的に成長すれば覚えるよ。まぁラビットAはカードだから成長しないけどね」
この辺りはサイレントビーの時に聞いたことと同じだろう。
年を取らないから、成長して魔法は覚えられないと。
「人間や亜人は魔法を勉強して覚えるんだよ。魔法を知ってる人から教えてもらったり、魔道書を読んだりしてね」
「へぇ……魔道書なんてものがあるのか」
「魔道書は、読むだけで覚えられるからお手軽なんだ。まぁその分、貴重で高いけどね。それでも下級の魔法が載ってる魔道書なら出回ってると思うよ。まぁそれでもかなり高いけど。だから普通は教えてもらって習得かな。街の魔法屋さんや、冒険者ギルドの教官に師事するんだよ。そっちのほうが、魔道書を買うより安く覚えられるかな」
魔法は魔道書を買って覚えるか、教えてもらうか……か。
「そういえば魔法カードの入手方法はまだ聞いてなかったよね? どうやって手に入れるんだ?」
スキルまではカードにする方法は聞いていた。
俺の予想では、さっき言ってた魔道書をカードにするってことだと思う。
レシピカードの要領で、魔法カードになると思うんだが……
「多分シュートも予想してるんだと思うけど、魔道書をカード化するんだよ」
やっぱりそうか。
「つまり下級の魔道書を買い漁って合成していけばいいのか」
「そういうこと~。あともうひとつ……別の方法でも魔法をカードにできるけど、それはちょっと危険だから、もう少しシュートが強くなったら教えるね」
危険……か。
どういう意味だろう?
まぁその方法も今すぐに魔法カードが手に入るわけではなさそうだ。
なら……ラビットAに魔法を覚えさせるのは、魔道書を買ってからだな。
「そういえば、いつまでもラビットAってのはおかしいよな。今はアルミラージだから呼び方も変えた方がいいか」
他の進化モンスターの名前は全部変えたから、後はラビットAだけ。
アルミラージってことは……
「きゅんきゅんきゅん!?」
だがそれに異議を唱えるようにラビットAが思いっきり首をふる。
……凄い嫌がってる。
「……もしかしてラビットAのままの方がいいのか?」
「きゅー!!」
……他のホーンラビットにはB以降を振り分ければいいだけだから、別にラビットAの方がいいならそれで構わないけど。
「あちゃー。これは完全に自分の名前って認識しちゃってるわね」
名前を付けると愛着が……ってことだったから、記号にしたんだけど、ラビットA自身が愛着を持っちゃった訳だ。
他の進化したモンスターは全員新しい名前をすんなり受け入れてくれたのに……やっぱりラビットAだけ違い過ぎないか?
まぁアルミラージのレア度は星2なので、この後すぐに合成するかもしれない。
それにラビットAは現時点でリーダー的存在。
これからもそれは変わらないだろうから、本人が気に入っているのなら、無理に変える必要はないか。
「よし。じゃあラビットA、これからもよろしくな」
「きゅきゅ!」
ラビットAは大きくうなずいた。




