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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第5章 天運の少女
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第247話 バランの村ふたたび

 俺はグリフォンをカードに戻して、代わりにユニコーン馬車を呼び出し、村へ向かう。


 考えたらこの馬車は今から行くバランの村で貰ったんだよなぁ。

 ちゃんと活躍したってことを伝えないと。


 まぁその前に警戒を解いてもらう必要があるが。

 村の入口が見えてきたが、入口ではひとりの男性がこちらを思いっきり警戒していた。

 まぁユニコーンに引かれた馬車だから無理はない。

 俺は荷馬車から顔を出す。


「お久しぶりですロランさん」


 相変わらず門番をしていたロランさんに声をかけると……ロランさんは怪訝そうな顔を浮かべる。


「……もしかして、俺のこと覚えてないです?」

「アタイもいるよ!」


「その妖精!? 君はじい様の孫か!」


 ナビ子は特徴あるから気づいたようだが、俺の顔は覚えてなかったようだ。

 というか、名前も覚えてないよな。

 少し凹むんだが。


「えっと、シュートです。久しぶりです。覚えていただけてたみたいで良かったです」


 俺は少し皮肉めいて挨拶する。


「あっ、ああ。君みたいにインパクトのある子を忘れるはずないだろ」


 いや、看破スキルが発動しているんですが……まぁいい。


「すいません。村長にお話があるので、中に入ってもいいですか?」


「ああ。君なら構わないよ」


 相変わらず顔パスで入れるらしい。


「それにしても、その馬は凄いね。もしかしてユニコーンかい?」


「ええ。ご存じでしたか」


「ははっ。見たことはないけどね。じい様から珍しいモンスターの話はたくさん聞いていたからね」


 流石じいさん。

 英雄と呼ばれているくらいだから、ユニコーンも見たことがあるのかな。


「今日は村長にどんな用事なのかい?」


「えっと。手紙の件もありますし、帰ってきた報告ですが」


「そういえば村長からゴブリンの手紙を預かっていたね」


 ……この村にはゴブリンキングの話は伝わってきてないのか?

 その辺りも含めて話をしないといけないな。


「あー! ウサギのお兄ちゃん!」


 ロランさんの案内で村長の家に向かっていると、俺に気づいた子供が近づいてくる。

 どうやらこの子は俺を覚えていたようだ。

 ……ラビットAの飼い主としてのようだけど。


「ねぇねぇ。今日はあのウサギいないの?」


 子供が俺の周りをキョロキョロと確認する。


「あ~ごめん。今日は置いてきちゃった」


 というか、あの頃のラビットAはもういないんだ。


「え~そんな~」


 俺の言葉に子供ががっかりする。


「仕方ないな~代わりにアタイが遊んだげる!」


 子供を可哀想に思ったのか、ナビ子が遊び相手に名乗りをあげる。


「え~別に虫に遊んでもらわなくてもいいよ」

「誰が虫よ!!」


 くっ。

 俺はナビ子と子供のやり取りを聞いて必死に笑いをこらえる。


「いい、アタイは電子妖精なの。ウサギよりもずっと偉いんだからね」

「え~でもウサギの方が可愛いよ」

「アタイだって十分に可愛いじゃないのさ!」


 駄目だ……笑ったら駄目だ……。


「仕方ないな~。じゃあ虫と遊んであげる」

「何でアタイが遊ばれる方なのよ! アタイが遊んであげるの!」


 いやいや、ナビ子。

 お前今思いっきり遊ばれてるぞ。


「ちょっとシュート。なに笑ってんのよ」


 ……どうやら笑いを噛み殺しているのに気づかれてしまったようだ。


「まっ、まぁいいじゃないか。じゃあナビ子はここでお別れってことで」

「仕方ないからラビットAの代わりに子供と遊んであげるわよ。あっ、ユニコも連れていくね」


 まぁ別にいいか。

 俺は分かったと許可する。


「虫~。ほら、早く行くよ~」

「だから虫じゃないって言ってんでしょうが!!」


 じゃあねと言って、ナビ子とユニコーンは子供についていった。


「うるさくてすいません」

「いや、こちらこそ迷惑をかけたようですまない」


 ロランさんの話によると、しばらく子供達はラビットAの話で持ちきりだったようだ。

 う~ん。今のラビットAを見ても喜んでくれるかな?

 今度連れてきてみようかな。



 ****


「おおっ、よく来たのぅ」


 村長はナビ子がいなくても、俺の顔を覚えてくれていたようで、喜んで出迎えてくれた。


「お久しぶりです。今日は色々と報告に戻ってきました」


 俺は村長とロランさんに、無事にライラネートにたどり着いたこと。

 そこで冒険者になったこと。

 それからゴブリンキングについて。

 その事を伝えると、2人は腰を抜かすかと思うくらい驚いていた。


「もし村長からの手紙が後1ヶ月遅かったら、いくつもの村や街が滅んでいたかもしれなかったそうです」


「まさかあのゴブリンがゴブリンキングの前兆だったとは」

「もう倒されたから、わざわざ報告する必要もないと思っていたが……う~む」


「どんな些細なことでも、ちゃんと報告する必要があるいい例ですね」


 俺はそう言いながら、金貨の入った袋を村長の前に置く。


「今回報告してくれた報酬です。金貨100枚入っています」


 このお金は正式にギルドから出ている。

 断じて俺のポケットマネー出はない。

 俺が帰ると言ったら、アザレアからついでにと託されたのだ。

 本来なら、ライラネートまで来てもらうことになるのだが、それじゃあこの村の負担になると、渡す方法を考えていたんだそうだ。


「ひゃ、ひゃくまい!?」

「そんなに貰えるのか!」


「それだけ大事だったってことですよ」


 まぁ確かにギルドにしては奮発したなと思うけど、元々冒険者に支払うはずの報酬は殆ど支払っていない。

 余っていた予算をこっちに回しただけだろう。

 ただ、こうやって報酬を出すことによって、報告を怠らないようになればいいと思っているのだろう。


「そういえば、ひとつだけ注意も受けました。もし村長が最初にゴブリンを見かけたときに報告していたら、もっと安全にゴブリンキングを討伐できていました。不確定な情報でも、しっかりと迅速に報告してくださいとのことです」


 それを聞いて村長が唸る。


「うむむ……。しかしじゃな。以前にも言ったと思うが、不確かな情報では、費用は倍かかるからのぅ。この村の財政では厳しかったんじゃ」


「村長は勘違いしてますよ。確かに森の調査や討伐の依頼を出すのであれば、報酬を支払う必要がありますが、調査や討伐ではなく、ただの情報提供であれば、お金は要りません」


 これもしっかりアザレアから聞いてきた。


「なんと!? それは知らんかったが……それでも迅速にというのは無理がある」


 この村から一番近いギルドまででも、一週間はかかる。

 じいさんがいなくなった今、近隣の見回りもしなくてはならず、あまり人員も割けないようだ。


「結局今まで通り、行商人に頼むしかなくてのぅ」


「そこで、ひとつ相談があるんですよ」


 俺はようやく本題に入る。


「俺は冒険者になりましたが、じいさんがいたあの山に戻ろうと思うんですよ。だから、今までと同じように、山の付近に関しては俺が管理します」


「おおっ、それは助かるが……良いのか?」


 多分、山の管理がかなり負担だったのだろう。


「ええ。村長も知ってると思いますが、俺はモンスターと暮らしてますからね。都会では住みにくくて。それに、モンスターが野性のモンスターも狩ってくれるので、危険もないんですよ。ですから、山の見回りは必要ありません」


 というか、むしろ来てもらったら困るもんな。


「それから、ギルドへの報告も俺が引き受けますよ」


「引き受けるとは……どうするのじゃ?」


「俺は飛行系のモンスターを持っていますから、ギルドへの報告を手紙にしてもらえば、1日でライラネートのギルドまで配達します」


「おおっ、では困ったことがあれば、お主の家まで行けば良いのじゃな」


「いえ、それも必要ありません」


 そう言って俺はカードを一枚手に取り召喚する。

 召喚したのは……何の変哲もないただの木製ポスト。


「これを……そうですね。村の外にでも置いておきましょう。もし、俺に報告したいことがあれば、この中に手紙を入れてください。定期的に俺のモンスターが取りに来ますから」


「……モンスターが取りに来るのか?」


 モンスターと聞いて怪訝な表情を浮かべる村長。


「モンスターと言っても、小鳥みたいなモンスターですよ。それに、村の外に設置すれば、村に入ることもありません」


 とりあえずナビ子のカラドリウスとスイートツグミを借りることにしよう。

 もしくは、ピクシーやフェアリー辺りでもいいかも知れない。


「それから、もし本当に急ぎの用があれば、これを破壊してください。俺には壊れたことが分かるので、すぐにここに来ます」


 ポストを破壊すれば、カードに戻ってくるので、気づくことができる。

 まぁ実際に破壊するような事件は起こらないだろうけど。


「俺も隔月くらいでこの村を訪れますので、なにか不便なことがあれば、改善するので言ってください」


「ふむ。こちらが損をするわけではないし、試しにやって見るかのぅ」


 よし、これで村人が山に来て大騒ぎすることはなくなりそうだな。

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[一言] ラビットAの舎弟たちを呼んでやればよかったのではw
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