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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第5章 天運の少女
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第242話 通信の魔道具

「へぇ。アザレアってそんなに仕事できるんだ」


 あれからしばらくの間、ギルマスからアザレアの仕事っぷりを聞いていた。


 アザレアの仕事は書類整理。

 3人のマネジャーから毎日報告書が届くので、それを分別。

 重要なのはギルマスへ、そうでないものはアザレアが決をとるらしい。

 それだけ聞くと、仕分けして判を押すだけなので、大したこと無いように思えるが、書類1枚1枚に不備がないか確認して、不備があれば再提出をさせる必要がある。

 それが非常に大変な作業らしい。


 正式な書類なので、誤字脱字はご法度。

 もちろん計算も同様だ。

 この世界にはPCがないので、計算なども全て手動。

 計算機はあるけど、間違いも非常に多いらしい。

 それに、依頼の書類などは、しっかりと確認しないと、中には詐欺まがいの依頼も存在するらしい。


 普通の人なら1枚確認するだけで、数分掛かるし、確認しても見逃しをするが、アザレアはそれをミスなく一瞬で終わらせる。

 ギルマスの話だと、観察眼のスキルを使うと、間違いの箇所が簡単に見つかるらしい。

 てっきり鑑定スキルだけかと思っていたのに、そんな能力もあるなんて知らなかった。


「はぁ。アザレアってかなり優秀だったんだな」


 俺も最初は優秀だと思っていたはずなんだけどなぁ。

 中身があれだと知って、いつの間にか残念さだけが残っていた。


「ああ。もちろん観察眼だけではなく、アザレア個人の能力がずば抜けている。替えが効かない人材だ。もちろん本人には口が裂けても言えないがな」


 いくら観察眼で間違いを見つけても、内容を理解できないと、間違いを正せない。

 宝の持ち腐れにならずに、ちゃんと使いこなしている時点でアザレアは優秀ってことだ。

 

 ギルマスはいつもアザレアをからかっている印象しかなかったが、めちゃくちゃ評価してたんだ。

 なんかこんだけ評価されていると俺まで嬉しくなる。


「それより貴様は本当にアザレアが休むことだけを伝えに来たのか?」


 それだけじゃないよな? と含んだ表情を浮かべるギルマス。

 ちょっと長話しすぎたようだ。


「うん、実はお願いがあって」


「俺は依頼を受けていけと言うつもりで言ったんだが?」


 どうやらギルマスの意に反した言葉だったらしい。


「まぁいい。そのお願いとは何だ?」


「遠い場所にいる人と話ができる魔道具が欲しいんだけど、1セットくれない?」


「やるか馬鹿もん!!」


 まぁそうなるよな。


「そもそもあれは各ギルドでひとつしかない。渡せるものではないわ!」


 このギルドにも1個しかないようだ。

 じゃあ頂戴って言っても無理だな。


「じゃあさ、せめて触るだけ。それだけならいい?」


「……触ってどうするんだ?」


「そりゃあカード化でカードにするんだよ」


「それを聞いて触らせると思うか?」


「別に盗ったりしないって。実はこの間は説明しなかったけど、カードにすると鑑定の効果もあるんだ。それも観察眼よりも優秀な」


「ほぅ」

「鑑定の能力まであるのかい」


 俺がそう言うと、ギルマスとケフィアが興味を持った。


「もちろん一回カードにしても、その後カード契約を破棄すれば元通りになるんだ。だから一回だけカードにしたいんだけど……駄目?」


 俺の言葉にギルマスが考え込む。

 鑑定の結果には興味があるが、カードにさせるのは……ってことだろう。


「ちなみにアザレアは鑑定してないの?」


「鑑定をしたことはあるが、通信の魔道具ということ以外分からなかった」


 あっ、一応鑑定はできたのか。

 じゃあ俺がカードにしても同じか……でも、属性武器のように、途中までしか分からなかったパターンかも。

 まぁそれはどっちでもいい。

 とりあえず俺としてはレシピが分かればいいんだから。


「じゃあ、俺の鑑定結果も教えるからさ。なっ、いいでしょ?」


「うむ。しかしだな……」

「あーもう。煮え切らない男だね。よし、じゃあアタシのを貸してあげるから、アタシにだけ結果を教えな!」


 渋っていたギルマスに業を煮やしたケフィアが答える。

 俺としてはカードにできるならどっちでもいい。


「分かった分かった。許可するから……俺にも結果を教えろ」


 流石に仲間外れは嫌だったのか、ギルマスが半ば自棄になりながら許可する。


「ったく。お前は魔道具を持ってきていないだろうが!」

「別にブルームに来ればいいだけのことじゃないか」


 どうやらギルマスが許可してくれなかったら、俺はもう一度ブルームに行かなければならなかったようだ。

 流石にそれは勘弁願いたいので、ギルマスの魔道具を借りることにした。



 ****


「ほら、これが通信の魔道具だ」


 ギルマスが持ってきたのを見て俺は驚いた。

 何故ならそれを子供の頃、祖父の家で見たことがあったからだ。


「いいか。この魔道具は誰とでも会話ができるわけではない。これとまったく同じ魔道具を持ったものとしか、会話をすることができる」


 ああ……そうだろうな。


「使い方は、まず受話器を取り、かけたい魔道具の番号を回す。このダイヤルの数字に指をかけ、回転させるんだ。番号は魔道具毎に違うからな。間違えて別の番号を回したり、回しが足らなかったら、別の魔道具に繋がるから気をつけるんだ」


 そう。

 ディスプレイもないから、ばーちゃんがよく隣の番号と間違えてた。


「……カードにしてみていい?」


「ちゃんと返せよ」


 俺は通信の魔道具に触る。


変化(チェンジ)


 俺がそう唱えると、一瞬でカードになる。


「ほほう。チェンジか。結晶化とは違うんだな」


 結晶化は違う掛け声なんだ、

 少し気になるけど、今はそんなことに気を取られるわけにはいかない。


 俺はカードを図鑑に入れて説明文を読む。


 ――――

 通信機(0632)【魔道具】レア度:☆☆☆☆☆


 離れた場所と会話ができる魔道具。

 他の通信機と繋がることで、会話ができる。

 黒電話型だが、電波ではなく魔力を消費する。

 ――――


 まさかこの世界で、昔懐かしの黒電話にお目にかかることになるとは。

 ……どういうこと?

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