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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第5章 天運の少女
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第221話 試験に向けて

「きゅクきゅク……きゅはー」


 ラビットAがニンジンジュースを一気に飲み干す。


「きゅート! もーいっぱー!」


 どこの酔っ払いだよ。


「お前なぁ。にんじんジュースとはいえ、あんまり飲みすぎても体に悪いぞ」


 そう言いつつも、俺は二杯目を注ぐ。


 ケットシーというマスコットとしてのライバル登場で落ち込んでいたラビットA。

 庭の木陰できゅえ~んと泣いているのを見つけた時には、どうしようかと思ったものだ。

 周りのウサギ達もオロオロとするばかりだし。

 というか、そんな姿見せたらリーダーとして失格だと思うぞ。


 まぁそういうことで、慰めがてら、ヤケ酒ならぬ、ヤケにんじんジュースというわけだ。

 今はにんじんステーキを頬張りながら二杯目を飲んでいる。


「ラビットA、お前はリーダーなんだからさ。そんな弱々しい姿を周りに見せたら駄目だろ」

「きゅって……」


「だってじゃない。考えても見ろ、リーダーが新人に泣かされたって知られたらどうなる? それこそリーダーの座まで取られてしまうぞ」

「きゅぴぇ!? きゅったいだめ!」


「だろ。それよりも、リーダーとしての余裕を見せないと。大人の余裕ってやつだぞ」

「きゅとなのよゆー」


「ああそうだ。ラビットAはボンキュッボンの大人の女性になるんだろ? なら、そういうのが大事なんだぞ」

「きゅるほど」


「それに……あのケットシーは男だ。ラビットAのマスコットガールの地位を脅かすことはない」

「きゅんと!?」


「本当ってお前……ケットシーが服着る前の姿も見ただろ。マジで気づかなかったんか?」

「きゅへへ」


「だから、あのケットシーとも仲良くするんだぞ」

「きゅい!」


 最後ににんじんシャーベットを食べ終わると、ラビットAは元気に戻っていく。

 はぁ。執り成すのも大変だ。

 やっぱりモンスターも増えると、種族が違うとそれぞれの関係にも変化があるよなぁ。

 もうすぐ大量に増える予定だけど……マジで管理が大変かも。

 それに、ティータがカードの中ばかりで不満に思っているモンスターもいるって言ってた。

 そっちもどうにかしないと……ってか、サナの面倒や冒険者試験を受けている場合じゃなくね?

 さらにカード化のレベル上げと、俺自身も強くなると。

 あーもう! やることが多すぎて何から手を付けていいか分からないぞ。



 ****


「シュートさん。冒険者試験は来週の分で登録しました」


 夜、アザレアから正式に冒険者試験の日程を聞いた。

 今週分は明日行われるとのことだったので、流石に無理だった。

 まぁ来週ならナビ子達も帰ってきているだろうし、サナもケットシーも問題ないだろ。


「サナの試験パートナーはあれでいいよな?」


 すでにケットシーの紹介は済ませている。

 というか、試験が終わるまでは、カードに戻さずにサナの近くでウロウロしているから嫌でも目につく。


「確かにシュートさんのモンスターを借りて試験を受けるのは問題ありません……が、正直ケットシーなんて珍しいモンスターを連れて試験を受ける人なんて普通はいませんよ」


「問題ないならいいじゃないか」


「珍しいから注目されますよ。ギルド長に知られれば、駆けつけてくるかもしれません」


 俺の時のようにか。

 それは面倒だな。


「でもまぁギルド長が関与しないように、今回は学科試験を真面目に受けてもらうんですから」


 なるほど。そういう意味もあったのか。


「それに、ギルド長もそれどころではないでしょうからね」


 何故か含んだ笑みを浮かべるアザレア。

 ……嫌な予感がする。


「おい、ギルマスがそれどころじゃないってどういう意味だ?」


「それはもちろん冒険者試験が終わった後に始まる上級試験対策ですよ。今回の上級職への試験はギルド長がされるそうですからね。ちなみに上級職の試験を受けるのは1人だけです」


 俺じゃねーか!?


「確か上級職の試験って実技試験だけだよな。ギルマスって元は近接職だろ? 普通同じ職のベテランがやるんじゃないの?」


「先日も言いましたが、サマナーには上級職がおりませんので」


「いやいや、テイマーとか近いところにはいるんだろ?」


「近いと言いましても……シュートさんはコレクターで受けると言いましたから。モンスターだけでなく、武器なども集めるとなりましたら、サマナーとしての能力だけでなく、総合的な能力が必要だと判断されたようです」


「えっ!? 総合的なってもしかして……」


「もちろんシュートさん自身も戦っていただきます」


 やっぱりかー!!


「あの……今からでもモンスターマスターに変更」

「無理です」


 即答かよ。

 くそっ。コレクターとか言い出すんじゃなかった。

 元とはいえ、近接職のベテラン冒険者相手に俺が勝てるわけがないだろ!

 一方的にボロボロにされて負ける未来しか見えない。


「別に絶対に上級になりたいわけじゃないし、じた」

「一旦受理された後は辞退できません。また、試験の登録して試験を受けないのであれば、やる気が無いとみなされ冒険者の資格剥奪となります」


 ……完全に退路を断ちやがった。


「とは言いましても、別にシュート様だけで戦う必要はございません。あくまで総合的な能力ですから。試験が始まればモンスターの召喚も可能です」


 なるほど。

 ただ理不尽な試験ってわけでもないのか。

 サシでの勝負じゃなければなんとか……。


「ギルド長。すごくやる気になっていましたからね。シュートさんも油断していたら危ないかもしれませんよ」


 もはや試験云々じゃなくて、ギルマスが楽しみたいだけじゃないのか?


「もちろんわたくしも応援に行きます。シュートさんの格好いい姿……楽しみにしています」


 ……試験まで1週間か。

 ちょっと本気を出してやってみようかな。

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