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第22話 モンスター合成

本日2話目の投稿です。

 昨日は筋トレで倒れた日以上に眠りが深かった気がする。

 もしかしたら魔力を消費していたからかもしれない。


「うんうん、ちゃんと魔力も回復してるみたいね」


 やっぱり一晩寝たら魔力は回復するのかな?

 それとも筋トレの時みたいにナビ子がケアしてくれたのか……ナビ子はケアについてはあんまり話せないようなので、心の中で感謝だけしておく。


 今日は午前中は銃の訓練と軽い筋トレをして、午後から合成を行う。


 そして今リビングにいるのは俺の仲間たち。

 俺は今からモンスターの合成を行うつもりだ。

 合成に関係あるモンスターだけじゃなく、関係ないモンスターも今日だけは素材集めをお休みして、全員集まってもらっている。

 全員に結果を見てもらいたかったからだ。


「なぁお前ら……本当にいいのか?」


 俺はキラービー達に向かってそう尋ねた。

 今回合成するのはキラービー達。

 理由はこいつらが一番数が多いからだ。


 キラービー達は揃って俺の右側へ移動する。

 会話ができないモンスター達との意思疎通手段として、肯定の場合は右側、否定の場合は左側へ移動するようにさせた。

 まぁどのモンスターも基本右側にしか移動しないが。

 やはり俺の命令には忠実のようだ。


「分かってるのか? 自分の自我がなくなるのかもしれないんだぞ? それでもいいのか?」


 合成ってことはキラービーから別の個体になると言うこと。

 それに今回は2匹のキラービーを合体させる。

 どちらかの意識が残るのか、二重人格のように2匹の人格が共有するのか、はたまた全く別の人格になるのか。

 全く予測がつかない。


 ナビ子に言わせれば、このモンスター達はただのクローンで、召喚獣みたいなものだから気にしなくてもいいと言うが……たとえクローンでも、召喚獣でも、自我があるのなら気にしない訳にはいかない。

 俺の命令だから嫌々合成される……ってのは、やめてほしい。


 キラービー達は俺の念押しにも肯定をしめした。


「分かった。じゃあ……キラービーAとBは前に」


 俺の言葉に2匹のキラービーが前に出る。


「キラービーAはスモッグリザードを倒したんだったよな。よくやってくれた。Bも数日間よく働いてくれた。お前らはこれから合成して強くなるだろうから……これからも頑張ってくれ」


 俺の激励に2匹の羽音が大きくなる。

 2匹ともやる気は十分のようだ。


 俺は2匹をカードに戻し、2枚を重ねる。


合成(リボーン)


 一瞬のうちに2枚のカードが1枚の別のカードに変化する。

 早速そのカードを図鑑に登録して確認する。


 ――――

 キラーホーネット

 レア度:☆☆

 固有スキル:マヒ攻撃、毒攻撃

 個別スキル:急所命中率アップ


 蜂系中級モンスター。

 鋭い針から様々な毒を使い分ける。

 キラービーに比べ殺傷能力が高くなり、単体でも脅威の存在となる。

 ――――


 ――どうやら無事に成功したみたいだ。


 これがキラービーの正統進化なのかな?

 それともランダムな結果で他の進化もあるのだろうか?


 キラーホーネットは、手のひら大だったキラービーよりもかなり大きく、50センチくらい……ラージ・アントと同程度の大きさだ。


 固有スキルはマヒ攻撃と毒攻撃。

 キラービー時代から毒攻撃が加わった。

 説明文によれば、使い分けできるようだ。


 個別スキルが急所命中率アップ。

 ゲーム的に言えば会心の一撃が出やすいってことかな。

 毒が急所に入ればかなりの確率で相手を仕留めることが出来そうだ。


 これなら……ラージ・アントと同様に、単騎でゴブリンの相手が出来るかもしれない。


「……お前はキラービーだった頃を覚えているか?」


 キラーホーネットは右側へ移動する。

 この行動がとれるってことは、ちゃんと覚えているらしい。


「……お前は合成したことを後悔しているか?」


 今度は左側へ移動……後悔してないってことか。


「そっか……じゃあこれからもよろしくな」


 それに羽音を大きくして答える。


「ねっ。合成して……強くなって喜んでるでしょ」


「ああ。そうみたいだな」


 だが……俺はこれからもモンスター同士を合成するときは必ず意思を聞くことにする。

 変わりたくないと思っているモンスターもいるかもしれないからな。


 さて次の合成は……


「きゅー! きゅー!」


 突然ラビットAが騒ぎ出した。


「どうしたんだラビットA?」


「きゅきゅ!」


 ラビットAは左前足をキラーホーネットへ。

 そして右前足を自分へ向け、自己主張する。

 うん、かわいい。


「……もしかして自分も合成がしたいって言ってるのか?」

「きゅっ!」


 どうやらそうらしい。


「しかしなぁ……ホーンラビットはラビットAしかいないしなぁ……」


 2匹いればラビットAの希望も叶えてやれるが、生憎とホーンラビットはラビットAしかいない。


「別に同族しか合成できないって訳じゃないわよ」


 ナビ子の言葉に俺は首を振る。


「いや、それは分かってるんだが、他の種族と合成して失敗したくないんだよ」


 今のように、下級モンスターの同族なら中級の同族になるだろうと予想できるが、全く別の種族で合成するとどうなるか……全く予想できない。

 もし合成に失敗したらカードが消滅する。

 それはモンスターカードも例外ではない。


 今俺が仲間にしているモンスターは蜂、蛙、ミミズなど。

 とてもじゃないけどウサギと相性が良いとは言えない。


 ギリギリいけそうなのは3リスくらいか。

 しかし3リスも1匹ずつしかいないし、3リスには実を集めるという大事な仕事がある。

 ラビットAと合成させるわけにはいかない。


「というわけでさ。申し訳ないけどラビットAはそのままで……」

「きゅう~~~ん!!」


 俺がそういうとラビットAは泣きながら俺から離れて窓へと向かう。

 そしてジャンプすると窓の鍵を開けて、リビングから外――森の奥へ入っていった。

 アイツ……本当に器用だよな。


「あ~あ。泣かしちゃった」


「いや、流石に今回は仕方ないだろ」


「どうするの? ほっとくの?」


「う~ん。まぁお腹が空いたら帰ってくるだろ」


 一瞬追いかけることも考えたが、それならラビットAを返還(リターン)で回収すればいいだけ。

 それに最悪死んだとしても、自動的に今俺が持っているラビットAのブランクカードに戻って来るだけで、明日になれば復活できる。

 もちろん死んでほしくはないから、無事に帰ってきてほしいが。


「お腹が空いたらって……だからカードモンスターはお腹空かないって言ってるじゃない」


「いや、そうは言うけど、ラビットAは毎日ニンジンを催促してるじゃないか。お腹は空かなくても食欲はあるんだよ」


 ラビットAは俺が最初にニンジンを与えた日以降、毎日必ずニンジンを食べてる。

 おかげでニンジンの減りだけは早い。

 他のモンスターは特に贅沢は言わないんだけど……やっぱり最初の仲間だったから少し甘やかしすぎたかな。

 とりあえず夜までに戻ってこないようなら返還(リターン)して連れ戻そう。

 もし拗ねていても、ニンジンを与えれば機嫌も直るだろう。

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