第189話 ドラゴンの診察
ドラゴンの呪いをどうやって解くか。
何はともあれまずは登録してみよう。
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クリムゾンドラゴン
????×????
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クリムゾン……真紅のドラゴンってことか。
レシピは分からないけど、合成も可能と。
う~ん。
登録なので、レア度やスキルは分からないけど、明らかにフォレストドラゴンよりも格上だと思うから、少なくとも星4。
俺の予想だと星5だと思う。
「その……診察したいので、触れても良いでしょうか?」
治すのは許可されたけど、無礼な! とか言われたらどうしよう。
「触れねば分からぬであろう? 遠慮する必要はない」
あっさり許可が出る。
あっさりし過ぎて、コボルトバトラーの方が慌てているぞ。
「よいのだ。我はあの小さきものに全てを託すことにしたのだ」
そう言ってコボルトバトラーを下がらせるドラゴン。
……本当に俺に託すつもりなのか。
ちょっと信用しすぎじゃね?
もしこれが近づくための方便だったらどうする気だ?
……俺を信用しているのか、それとも俺ごときじゃ不意打ちされても負けないと思っているのか。
もしかして、全部嘘で俺を油断させておいて、近づいていきなり食べたり……うん、ないな。
こんなに気高いドラゴンがだまし討ちなんてするはずがない。
俺は安心してドラゴンに近づき背後に回る。
一番確認しないと行けない場所は、背中の切り落とされた翼の部分だ。
俺はドラゴンの背中をよじ登る。
ゴツゴツしている上に、剣竜のようなヒレもあるので、なんだかアスレチックを体験しているような気分になる。
実際にラビットAとナビ子は『きゅきゅ!』って、はしゃぎながら登っているし。
2人とも、さっきまでドラゴンの覇気にやられてビビってたくせに、よくそんな余裕があるよな。
「おい、触るのは構わんが、こそばゆいからもっと静かに触れ」
ほら怒られた。
しかし、こそばゆいって……せっかくのドラゴンの威厳が台無しだぞ。
とりあえず目的の場所までは到達したし、ラビットAとナビ子も反省したみたいなので、ここからは真面目に調べよう。
翼が切り落とされた部分は、血が流れたり、化膿せずに、完全な傷痕になっていた。
多分触っても痛くないんじゃないだろうか。
ここに部位欠損を治すものを使えば、治る可能性はある。
が、そんな便利なのはない。
回復薬も回復魔法も今はまだない。
合成すれば、可能性はありそうだけどね。
ただ、魔法の方は呪いのせいで効くか分からないな。
回復薬の方が無難かもしれない。
翼の再生は後で考えるとして、せっかく触っているんだし、俺はもう一度登録をする。
触れながら登録することで、所持スキルを知ることが出来るはずだ。
さて、このクリムゾンドラゴンのスキルは……竜王、竜の息吹、人化、火の極意、炎術、侵蝕。
竜じゃなくて竜王かよ。
竜がさらに強化されたんだろう。
それに人化って……もしかして、人に化けられるのか?
炎術って何だろ? 魔法は火の極意だから別物だよな。
覇気のスキルが見当たらない。
スキルじゃなかったのか……それとも竜王が代わりになっているのか?
う~ん。どれもこれも気になるけど、一番気になるのは最後のスキルだな。
侵蝕って……これ、本当にスキルなのか?
このドラゴンの現在の呪われた状況じゃないのか?
でも、表示されているのはスキル図鑑だし、そもそも現状なんて登録できない。
「なぁこれどう思う?」
分からないのでナビ子やティータに聞いてみることにした。
「別に普通に侵蝕スキルを持っているだけじゃない?」
ナビ子がそう答える。
あ~そっか。
今の状況にぴったりだったから、てっきり状態異常と思ったけど、普通に考えれば、単純に侵蝕スキルを持っているって考えるよな。
考えるまでもなかったか。
「マスター。ですが、このスキル構成で侵蝕があるのは変ではありませんか? 念のため本人に聞いた方がよいかと」
今度はティータがそう答える。
うん、確かにティータのいうことにも一理ある。
他のスキルはどれも納得できるものだったけど、侵蝕だけが思いっきり浮いている。
……これはハッキリさせた方がいいだろう。
ドラゴンに診察と称してスキルを覗き見したことがバレちゃうけど、このドラゴンなら怒らない気がする。
そういうわけで、ドラゴンに侵蝕スキルについて聞いてみた。
「――我はそのようなスキルは持っておらぬ」
返ってきた答えは知らないだった。
ってことは、ティータの方があってたってことだ。
このスキルがドラゴンを蝕んでいる原因だろう。
「そういえば、対象者にデメリットのある効果を付与する呪いみたいなのもあるみたいだよ」
今ごろになってナビ子が言う。
「何でさっき言わないんだよ」
「だって今の話を聞いて思い出したんだもん」
……それでも、以前のナビ子ならさっきの状態で思い出していた気がする。
なんか、少しポンコツになっている気がする。
やっぱりデフラグした方がいいんじゃないか?
「……まぁいい。じゃあこのスキルをドラゴンから外せばいいのか?」
どうせナビ子に戻れと言っても聞くはずがない。
なら、話を先に進めよう。
しかし、対象のスキルを外す……そんなことができるのか?
「恐らく魔族がかけた呪いは、寄生モンスターの類でしょう。そして寄生モンスターが侵蝕のスキルを付与した。スキルを外すのは現実的ではありませんし、仮に外すことが出来たとしても、寄生モンスターをどうにかしない限り、同じことの繰り返しになるのでは?」
確かにティータの言うとおりだ。
目先のスキルをどうにかしても仕方がない。
「しかし、体内の寄生モンスターをどうにかするって……どうすればいいんだよ」
そもそも憶測なんだから、いない可能性もあるわけで。
まずは、本当に寄生モンスターがいるかの存在確認だな。
「……登録で寄生モンスターの存在を確認できないかな?」
モンスターなら登録できるはず。
「登録するためには、目視しないとできないよ」
ナビ子が答える。直接見る……か。
「なぁナビ子。お前、ちょっとドラゴンに食べられてみない?」
「はぁ!? ちょっと何ふざけたこと言ってんのさ!!」
当然のようにナビ子がブチギレる。
「まぁ話を聞けって。ほら、ナビ子なら小さいから丸飲みされるだろうし、体内を移動して、魔石の所に行けば、寄生モンスターを見ることが出来るじゃないか。んで、代理人スキルで登録すれば、万事解決ってことだ。名案だろ?」
「名案……じゃなあああい!!」
ナビ子が怒りながら俺にキックをブチかます。
……いい案だと思ったんだけどなぁ。




