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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第185話 ナビ子との再会

 セイレーンが大穴にダイブして、どれくらい落ちているだろうか。


 俺も最初こそ取り乱してしまったが、セイレーンが落ちるペースを考えてくれたので、なんとか落ち着きを取り戻すことが出来た。

 経験はないけど、パラシュートよりもゆっくりなスピードだと思う。

 そのため、今では背中の柔らかい感触を楽しむ余裕すらある。


 まぁ下を見ても真っ暗で先が見えない。

 どこまで落ちるんだとか、本当にたどり着くのかと不安もあるが。


 それにしても……すでに落ち始めて数分、距離にして数百メートルは降りている。

 考えてみたら山の中腹と山の麓のダンジョンを繋いでいる穴だ。

 千メートルくらいあるかもしれない。

 幸いモンスターは近くにいないようで、モンスターに襲われる危険はなさそうだ。

 こんな状況で飛行系モンスターに襲われたら、また取り乱してしまってただろう。


 そういえば、少しひんやりしてきた気がする。

 山のダンジョンは蒸し暑かったが、その蒸し暑さがなくなっている。

 樹海のダンジョンの方に近づいてきたのだろう。

 そうだっ! と、俺はカードから石ころを召喚する。

 山で石器武器を作っていた頃の名残だが……これを落として音が聞こえるか確認してみよう。

 俺が石を下に向かって投げると……数秒後、何かに当たる音がする。

 おっ、意外と地面まで近いかもしれない。

 下があると分かると一気に降りたくなる。


「セイレーン。少しスピードを上げようか」


 返事はないが、代わりに落ちる速度が上がる。

 これならすぐに地面に到着するだろう。



「――ふわぁぁ。ようやく地面か」


 俺は地に足をつけ、大きく背伸びをする。

 やっぱり地に足がつくって素晴らしい。

 今回は特に飛行モンスターに座っていたわけでもないし、いつ到着するかも分からなかったので、喜びもいつも以上だ。


 とりあえず、周囲を確認するために、ライトの魔法を解放(リリース)し、明かりを灯す。


 ――周囲には何もなさそうだ。

 モンスターの気配もなさそう。


「クイーンビー。インセクトクイーンと繋がりそうか?」


 俺の問にクイーンビーが肯定の右に移動する。

 通訳ではない久しぶりのやり取りに、少し懐かしさを覚える。


 クイーンビーに質問したところ、ナビ子達の居場所はここからそう離れてなさそうってことと、ナビ子もこっちに気づいたらしく、大急ぎでこちらへ向かっているとのこと。

 思ったより早く合流できそうで、思わず顔が綻んでしまう。

 このままここで待っていても、ナビ子とは合流できそうだが、俺はいても立ってもいられず、足早にナビ子達の元へ向かった。



 ****


「シュートおおお!!」


 俺の名前を呼びながら猛スピードで突進してくるナビ子。

 俺は受け止めようと手を差し出すが、ナビ子はその手をするりと避け、そのまま俺の顔面にダイブする。


「わぶっ!?」

「シュートおおお! 会いたかったよおおお!!」


 俺の顔面に張り付いたまま泣き叫ぶナビ子をなんとか引き剥がす。


「ぷはっ!? ……ったく。何で避けてるんだよ」


 それに抱きつくなら顔じゃなくて普通胸にだろ。

 そういえば、ラビットAも最初は顔に抱きついていたな。

 もしかして、抱きつかれやすい顔とか?

 ……そんな顔は嫌だなぁ。


「えへへ。嬉しくって思わず……ごめん」


 ナビ子が照れながら謝る。

 まぁ俺も嬉しかったけど。

 そこに遅れてメーブやホブAがやってくる。


「ボス。会いたかったゴブ」

「主。再会できて妾も嬉しく存じます」


「2人もご苦労だったな。ナビ子の面倒を見るのは大変だったろ」

「ちょっ!? なんなのよそれは! アタイがこの子達の面倒を見てたんだよ!」


 ナビ子がそういうが……メーブとホブAの表情を見れば、どっちが苦労していたかがよく分かる。


「そういうシュートこそ……あれっ? ラビットAやティータは……って!? そのエッチな女性は誰なのさ!」


 今頃気づいたのかよ。

 というかエッチって……まぁセイレーンだから、男を魅了するようなエロい体つきはしているけど。

 それでも服は着せているし、アラクネと似たようなものだろ。


「ラビットAとティータは別の場所で待機をしている。この子は新しく合成したセイレーンだ」


「ラビットAとティータを放ったらかしにして、新しい子とこんなところで何をしていたのさ」


 ナビ子がジト目でこっちを見る。


「お前らに合流するために、ここまでやって来たんだろうが。ナビ子だって気配察知が使えるなら、マグマゴーレムを倒して魔道具を壊したんだろ?」


「マグマゴーレム? 確かにゴーレムを倒して魔道具は回収したけど、アタイ達が倒したのはチタンゴーレムだったよ」


 マグマゴーレムじゃなかったのか。

 もしかしたら場所によって異なるゴーレムが守っていたのかもしれないな。


「あのね。すっごく硬いし、魔法も全然効かないし……すっごく強かったんだよ」


「それ、どうやって倒したんだ?」


「最初はすっごく苦労したんだよ。でもね、ゴーレムは動きが単調で、しかもゆっくりでね。負ける要素はなかったの」


 そこはマグマゴーレムと一緒だ。

 動きは単調だったから、こっちの攻撃は当たるし、向こうの攻撃は避けやすい。


「んでね。硬いけど全部の物理攻撃が効かないわけじゃなかったの。剣や槍は全然通らなかったけど、ハンマーや金槌で砕くことはできたの」


 斬や突じゃなくて打なら良かったってことか。

 ハンマーを武器にしているゴブリンもいたから、ソイツらが頑張ったのかな。


「後は土魔法も効いたんだよ。ストーンブラストで岩をぶつけるの」


 ――――

 ストーンブラスト【土属性】レア度:☆☆☆


 土属性の中級魔法。

 召喚した岩を射出する。

 ――――


 簡単に弾が岩になった大砲のような魔法だ。

 放物線ではなく直線で岩が飛ぶので、カタパルトのような投石機よりも威力が高い。

 ただ……土魔法が効いたってよりは、単純に物理攻撃が効いただけの気がする。


「攻略法が分かったら後は作業って感じだったかな。……そっちはマグマゴーレムがいたの?」


「ああ、俺達の方はマグマゴーレムだった。それから……異変の謎と原因も突き止めた」


「本当っ!?」


「ああ、ちゃんと説明するよ」


 俺はナビ子に別れてからのことを説明した。

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