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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第184話 樹海のダンジョンへ

 カーバンクル達の出発を見届けた後、俺は樹海のダンジョンへ向けて出発した。


 残ったラビットAやティータは不満そうにしていたし、ガロンは俺が次々とモンスターを召喚したのを見て唖然としていた。

 ……戻ったら色々と言われそうだなぁ。


 とりあえず俺は広間から出て、最初の分岐点にまで戻る。

 そこから俺がまだ行ってない方向――ガロンが足を滑らせて落ちたと言っていた場所へ向かう。

 そこから樹海のダンジョンへ向かうのが、一番の近道だってコボルトバトラーから聞いた。

 穴があって行き止まりだから、上に行ける方法があれば……らしいが。

 実際にガロンは戻れなかったようだし、コボルトも無理ってことだったが、俺なら飛行系モンスターを使えば上に行ける。

 どうせそこまでの道は分かっているので、俺のコボルトや地上のモンスターは召喚せずに、クイーンビーとビーナイトの飛行モンスターだけ召喚する。


 分岐点までは数分でたどり着く。

 そこから30分ほどまっすぐ一本道を歩いたところで、行き止まりにぶち当たった。


「……ガロンはよく生きていたなぁ」


 問題の穴は目算でここから20メートルくらい上にある。

 落ちどころが悪かったら、即死していてもおかしくない。

 やはり幸運のスキル持ちだからか。

 それとも、ドワーフが頑丈すぎるのか。

 ……どっちもかな。


 さて、俺はどうするか。

 クライミングのようによじ登るのは無理そうだ。

 というわけで、やはり空を飛んでいくしか選択肢はない。

 そこで早速新人モンスターを召喚することにした。


 ――――

 セイレーン

 レア度:☆☆☆

 固有スキル:風の素質、歌姫、魅了

 個別スキル:不協和音


 半人半鳥の魔族。

 空のセイレーン。

 美しい歌声と容姿で相手を魅了する。

 ――――


 ハーピー狙いでゴブリナとワイルドホークを合成させたんだが、ちょっとだけ違う魔族が誕生した。

 一応レシピを見ると、鳥類モンスターと人型モンスターとあった。

 多分ハーピーも同様のレシピだと思うけど……ランダム合成の結果かな。


 それにしても……う~ん。

 セイレーンって、人魚っぽいのをイメージしていたんだが……空のセイレーンってところが引っかかる。

 もしかしたら、同名のセイレーンで人魚パターンもあるかもしれない。

 海のモンスターを手に入れたら、是非とも試してみたい。


 肝心のスキルの歌姫が気になるけど……俺が倒したモンスターを使っているわけではないから、歌ってくれない。

 正直、この時点でセイレーンの能力の大半が封印されている気がする。

 次に合成してやる時は、俺が倒したモンスターと合成してあげたいな。


 セイレーンが俺を背中から抱きかかえる。

 ハーピーは腕が羽になっているイメージだったが、セイレーンは違うようで、人型の腕と羽が別になっている。

 しかし……密着するから仕方がないとしても、背中に柔らかいぬくもりを感じるのがなんとも……どうしても気になってしまう。

 しかも、今ここにはナビ子もティータもいないから、咎める人もいない。

 この感触をじっくり堪能……と思ったところで、穴を抜け、上層に到着する。

 まぁ20メートル飛ぶだけだから、分かっていたことだけどね。


 セイレーンから離れた俺は、道案内役のコボルトを呼び出す。


 ――――

 コボルト

 レア度:☆

 固有スキル:鉱石変質、嗅覚


 犬人型の下級モンスター。

 ゴブリンと同程度の最弱モンスターだが、ゴブリンに比べて嗅覚が鋭く、察知能力に長けている。

 また特定の鉱石をコバルト石に変質させる。

 ――――


 ほぼ犬の顔をしたゴブリンって感じのようだ。

 ただ、ゴブリンと違って固有スキル持ち。

 鉱石変質はガロンが言っていたように、コバルト石ってのに変質させるみたいだ。

 そして嗅覚のスキルだが……これはラビットAの持つ嗅覚のスキルと全く同じ名前だが、能力が違う。

 ラビットAの嗅覚は勘が働くって意味だが、コボルトの嗅覚はそのまま鼻がいいって意味らしい。


 このコボルトの案内でダンジョンを進んでいく。

 カードモンスターになっても記憶は残っているので、最短ルートで進んでもらった。


 ――そして歩くこと数時間。

 俺は黙々とダンジョンを歩き続けていた。

 道中、何度も分岐点があったが、コボルトは迷うことなく先に進む。

 もちろん罠も全て避けてくれている。

 もしコボルトの案内がなかったとしたら、正直かなり探索に苦労していたんじゃなかろうか。


 そしてモンスターの襲撃は、ビーナイトが簡単に倒してくれる。

 順調に樹海ダンジョンに近づいているが……俺はずっと物足りなかった。

 別にビーナイトやクイーンビーはよくやってくれているから、不満があるわけじゃない。


 ただ、反応が欲しかった。


 今までずっと近くにナビ子やメーブやティータ、それにラビットAやホブAもいたけど、今は言葉を発する仲間は誰もいない。

 俺が一方的に話すだけで、相づちすらない。

 命令にしたがってくれるけど、返事もない。

 はっきり言うと、コミュニケーションに飢えていた。


 ――早くナビ子に会いたいな。


 そう考えながら足早に移動していると……広間から出発して半日ほど経っただろうか。

 無事に目的地にたどり着いたようだ。

 目の前にはさっきとは比べ物にならない大穴が目の前にある。

 いや、穴というよりは崖だな。

 ……真っ暗で底が見えない。

 少なくとも、20メートルではすまないだろう。


 ――落ちたら確実に死ぬな。

 俺がそう考えていると、さっきと同じようにセイレーンが背中から抱きかかえる。


「あっ、いや、ちょっと……」


 まだ心の準備が……そう言いたかったが、それよりも早くセイレーンが崖に向かって飛び込んだ。


「いやああああ!?」


 俺はさっきのように背中の感触を楽しむことが出来ずに、ただひたすら絶叫を上げることしか出来なかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 更新お疲れ様です。 「居なくて喋れない」ではなく「居るのに喋れない」 ってのが長く続くと鬱になりそうですね……。 そんな面でもナビ子の有無はかなり大きいですね
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