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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第183話 各々の行動

「ふむ。コボルトと協力してダンジョン内の魔道具を破壊とな。かなり時間が掛かりそうじゃの」


 俺は大いびきをかいて眠っていたガロンを叩き起こして、先ほど決まった話を説明する。

 ダンジョンに入った頃はずっと気を張っていたのに、俺達の実力を知ってからと、すっかり緩みきっている。

 しかし、それでもダンジョン内であれだけ熟睡できるのは、流石に神経が図太すぎだ。


「だから複数のチームに分けるんだよ。とりあえずコボルトバトラーが言うには四方に散らばるから、4チームとか言ってたな」


 この広間の先、コボルト達の棲みかを抜けた先に、全体に繋がる抜け道があるそうだ。

 そこから手分けして魔道具を探していく。

 実際に魔道具があるかどうかは分からないし、もし魔道具があったとしたら、マグマゴーレムがいるだろうから、マグマゴーレムに勝てる選出が必要になる。


「まぁ魔道具回収のチームリーダーはコイツらでいいだろ」


 俺は昨晩進化したカーバンクルとヴォルパーティンガーを召喚する。

 まさにうってつけのモンスター達だと思う。

 この4匹をリーダーに、残りは星2や星3のウサギや蜂をサポートとして付ければいいと思う。

 本当は蜘蛛や蟻やコウモリあたりが良いんだが、そっちはナビ子が持っていってるからなぁ。


「また新しいモンスター!?」


 ガロンが驚いているが気にしない。

 煩そうなら、契約と脅せば黙るだろう。


「きゅきゅっきゅ、きゅいきゅい!」


 次に騒ぎ出したのはラビットA。

 手を挙げて猛アピールする。

 自分はとでも言いたいのだろう。


「ラビットAはここでお留守番だ」

「きゅえ!? きゅむ~。きゅート! いじわる!」


 意地悪て。


「いいか。今回この4匹に決めたのにはちゃんと理由があるんだ。適材適所ってやつだ」


「きゅきざいきゅきしょ?」


 おいおい。いつも以上に言えてないぞ。


「いいか。俺達は魔道具をできるだけ破壊せずに回収したい。でも、破壊せずに回収したら、魔素が増え続ける。ここまではいいな?」

「きゅ」


 もしかしたら、オンオフのスイッチみたいなのがあるかもしれないが、昨日調べた壊れた魔道具にはそれらしきものは見つからなかった。


「そこでカーバンクルだ。あの3匹は収納スキルを持っている。破壊せずとも回収できるってわけだ」

「きゅるほど」


 ラビットAが腕を組んで頷く。

 うん、かわいい。


「そしてヴォルパーティンガーは、残念ながら収納スキルはないけど、その代わり暗視スキルがあるから暗闇でも平気だし、空も飛べるから小回りも利く。ピッタリじゃないか?」

「きゅ」


 これも否定しないようだ。


「そしてラビットAは収納もないし、空も飛べない。ほら、お留守番の方がいいじゃないか」

「きゅむむ」


 なんか反応がコロコロと変わって面白い。


「それに、今回はお留守番が一番大変かもしれないんだぞ」

「きゅう?」


 ラビットAが首をかしげる。

 うん、かわいい。


「ほら、ここでマグマゴーレムを倒したから、サキュバス(仮)が様子を見にやって来るかもしれない。その時に、ガロンやコボルトを守る役目は……」

「きゅきゅ!」


 はいっと元気に手を挙げるラビットA。


「そう。ラビットA、お前だ。この大役をちゃんと果たせるか?」

「きゅい! がんばる!」


 ふっ、チョロいな。

 だけど、あながち間違ってないと思う。


「のぅ。さりげに儂の名前があったんじゃが……儂、ここに残るのか?」


 何を当然のことを言ってるんだ?


「当たり前だろ。ガロンが行って役に立つのか? 足手まといにしかならないじゃないか」


 むしろ行く気だったのに驚きだよ。


「ぐぬ……確かにマグマゴーレムのような化け物が相手では、儂がいても足手まといにしかならん。しかし……安全にダンジョン探索ができるチャンスだと思ったんじゃがのぅ」


 普段ひとりじゃ絶対に行けない場所を安全に探索できるチャンスだもんな。

 気持ちは分かるが……諦めてもらうしかない。


「そんで、儂らはここに残って何をするんじゃ?」


 ……そこまでは知らねーよ。


「やることないんだったら、ラビットAと採掘でもしてれば? もしくはコボルトから話を聞くとか。ほら、コバルトについて聞けるかもしれないぞ」


 鉱石を変質されるって文句を言ってたもんな。

 本人たちから直接聞くいいチャンスじゃないか。


「おおっ、確かにこんな機会は滅多にないからの。いい考えじゃ」


 滅多にというか、最初で最後だと思うぞ。


「まっ、ティータをサポートにつけるからさ。ガロン達は好きにしておいてくれよ」


 俺の発言にティータが眉をひそめる。


「マスター? 別に通訳するのは構いませんが、今の発言ですと、マスターがその場にいないように聞こえるのですが?」


「ああ。俺はちょっと行くところがあるから。皆とは別行動だ」


 俺がそういった瞬間、3人から驚きの声が上がる。


「行くところって……まさかっ!? お主、抜け駆けする気か! 儂には足手まといとか言いおったくせに……お主だって似たようなものじゃろうが!」

「きゅート! ずるい!」

「マスターが出かけるならわたくしもお供します!」


 まぁそう言われるのは何となく察していたけどさ。


「勘違いするなって。別に魔道具回収チームに同行するつもりはないよ」


 ガロンの言うように、小回りが効かない俺が付いていっても足手まといだもんな。


「ではどこに行こうと言うんじゃ?」


「いやぁ。ちょっと樹海の方のダンジョンに行ってこようかと」


 俺がそう言うと、案の定3人からもっと責められた。

 ラビットAとガロンからは、ひとりだけズルいと。

 ティータからは何故自分を連れて行かないのかと。


「だーかーらー。ガロンは足手まといだし、ラビットAはさっきも言ったように、ここを守る大事な役割があるだろ」

「ぐむ……」

「きゅむ……」


「わっ、わたくしは関係ないではないですか!」


「ティータがいなかったら、誰がコボルト達との仲を取り持つんだよ。それにガロンの通訳も必要だし」


 むしろティータが一番ここに残る必要がある。


「それはリーダーが……」


「きゅっきゅきゅっきゅ言ってるだけのウサギに、仲を取り持つとか、通訳とか出来るはずがないだろ」

「きゅぴえ!? きゅート、ひどい!」


 いや、そこまでひどくないだろ。

 俺だから、慣れてきゅきゅきゅっきゅ言われても何となく通じるけど、通訳となったら、ホブA以上に解読の難易度が高い。

 せめて、俺の名前をちゃんと言えるくらいのレベルにはならないとな。


「し、しかし、通訳が必要なのはマスターも同じはず。わたくしがいなくてどうされるおつもりですか!?」


「俺は別に移動するだけだから、通訳の必要はないし、それに樹海のダンジョンでナビ子に合流できたら、あっちにはホブAとメーブがいるし」


「移動でも案内役のコボルトと会話が必要でしょう!?」


「いや、案内役はいらないし」


「えっ!? では、一旦外に出て、樹海に戻るのですか?」


 いや、流石にそれは時間が掛かりすぎるし、別れてから数日経つから、ナビ子達も奥に進んでいるだろう。

 ダンジョンから行った方が合流する可能性は高い。


「そうじゃなくて、案内役は自分のコボルトを使う」


 昨晩の内に、死体のコボルトは分解して、モンスターカードになっている。

 ここにいるコボルトの目の届かない場所なら、召喚しても何の問題もない。

 そしてカードモンスターなら、俺に怯えることもないし、命令には忠実。

 言葉が通じなくてもティータがいなかった頃と同じで何とかなる。


「しかし、リーダーにわたくしもいないのであれば、誰がマスターをお守りするのですか!?」


「一応クイーンビーやビーナイトは連れて行く予定だ」


 他の蜂は魔道具回収チームに渡すが、ビーナイトとクイーンビーは俺が連れて行く。


 ビーナイトの強さは巨大なロック鳥も簡単に仕留めるほどの折り紙付き。

 流石に昆虫だから火に弱いと思って、マグマゴーレム戦には出せなかったけど。

 全身が火になっているモンスターじゃなければ、まず負けることはない。


 クイーンビーは向こうとの交信係だ。

 クイーンビーの感覚共有のスキルが発動しなかったのは、間違いなく魔道具のせいだ。

 あれがジャミングの効果になっていたに違いない。

 実際に同じダンジョン内にいても、魔道具が破壊されたこの辺りでは、クイーンビーとシャドービーは繋がっていた。

 ってことは、樹海側の魔道具が無くなれば、スキルがちゃんと使えるはずだ。

 そして、昨日あたりから、断続的にインセクトクイーンと繋がることもあったそうだ。

 おそらくナビ子側で魔道具を破壊したに違いない。

 樹海側に行けば、もう少しはっきりと繋がるはず。

 そして、同じくナビ子の気配察知も復活。

 俺のことを見つけてくれるに違いない。


「それに新メンバーがいっぱい増えただろ。戦力確認もできて丁度いいじゃないか」


 コボルト以外にも、即戦力っぽいモンスターはすでに分解してモンスターカードになっている。

 これだけ戦力があれば何の心配も要らない。

 むしろこっちの戦力の方が……って、ラビットAとティータ。

 それにケリュネイアにホーンドヘア、更にドラゴニュートまでいたら十分か。


 どうやらティータもこれ以上は反論できなかったようなので、俺は出発の準備に入ることにした。

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