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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第173話 コボルト発見

 ひとしきり採掘を終えたガロンとラビットAが俺の元へとやって来る。


「嬢ちゃんのお陰で捗ったわい」

「きゅふ~」


 どうやらラビットAの魔法が役に立ったようだ。


「2人ともお疲れ」


 俺はそう言って2人に栄養ドリンクを渡す。


「何じゃこれ?」


「栄養ドリンクだ。疲れが吹き飛ぶぞ」


 俺はゆっくり休めたけど、2人は動きっぱなしだったからな。

 これからダンジョン探索に戻るし、体力はしっかり回復してもらわなくちゃ。


「んきゅっんきゅっ……きゅぷぅ」


 隣のラビットAが美味しそうに飲んでいるのを見て、不審がっていたガロンも飲み始める。


「うおっなんじゃこれは!?」


「どうだ? 効くだろ?」


「うむ。……のぅ。これ、残ってたらもっとくれんか?」


「これは貴重だからな。余ってね―よ」


 ったく。アザレアと同じことを言って……でも、それだけ効果絶大ってことか。


「くっ……残念じゃ」


 ガロンは本当に残念そうだ。

 正直言えば、引越し先の庭でハチミツが採れるようになったので、以前よりは在庫はあるんだけどね。


「それより元気になったんだったら、さっさと出発するぞ」


「うむ。ここから先はモンスターが出現するからの。今まで以上に気を引き締めるんじゃ」


「あ~……モンスターの心配なら、そんなに必要ないと思うぞ」


「どういうことじゃ?」


「……行けば分かるさ」


 多分な。

 俺はガロンとラビットAが採掘したものをカードにしてから出発する。

 すると、程なくしてモンスターが出現したが……


「……あん? どうなっておるんじゃ?」


 俺の予想通り、モンスターは全て倒れていた。


「ガロンが採掘している間に、ちょっと偵察を出してな。この先のモンスターも軒並みこんな感じだぞ」


 シャドービーがただ偵察だけするはずがない。

 そう思っていたが、やはりその場にいたモンスターは倒してくれていたようだ。

 俺は倒れているモンスターにトドメをさして、カードにする。


「お主……本当に何者じゃ?」


 流石にたまらずガロンが聞く。


「それ以上聞くと契約魔法が発動すると思うが?」


「うぐっ……何でもない」


 ガロンが悔しそうに先ほどの質問を取り消す。


「儂……やっぱり早まったかもしれん」


 ガロンが後悔しているが……おそらくまだまだ後悔することになると思うぞ。



 ****


 引き続き俺たちはモンスターが倒れた道を進んでいく。


 シャドービーはそのまま偵察に行ったままだが、クイーンビーがスキルで共有している。

 どうやらインセクトクイーンとは繋がらないが、シャドービーとは繋がるらしい。

 そういう意味でも、ナビ子達のダンジョンとは繋がっていない証拠かもしれない。


 今の所、分岐点もないようだから、俺達はシャドービーが通った後を進んでいくだけ。

 もし分岐点があれば、クイーンビーがティータに伝えて、俺が先回りしてガロンに聞く予定だ。


 モンスターの数はそんなに多くない。

 というか、外よりも少ないくらいだ。

 カードにしたモンスターを確認すると、ブルームスパイダーや、ブルームバットやブルームリザードなど、ブルームの名前が付いたモンスターしかいなかった。

 分解してモンスターにしてないからレア度は分からないが、見た目的にはポイズンスパイダーなどの亜種なので、星1か2ってところだろう。


 また、シャドービーが倒していないモンスターにも遭遇した。

 ガロンが要注意と言っていたイグニスファタスだ。

 シャドービーは魔法が使えないから、実体のないイグニスファタスに対抗出来なかったようだ。


 イグニスファタスは鬼火のように宙に火が揺らめいていて、俺達に襲いかかってきた。

 まぁ当然のことながら、ラビットAが星1のアクアの魔法で簡単にあしらう。

 やっぱり見た目の通り、水に弱かったようだ。

 しかし……実体がないから、魔石も素材も落とさない。

 やっぱりモンスターとして手に入らないから損した気になるなぁ。


「儂はいつもあんなに苦労するのに……」


 ウィルオーウィスプはイグニスファタスの進化系って言っても、アクアで倒せるんだから大したことない。

 恐らく星2か3ってところだ。


「ガロンも魔法を使えるパーティーを組んで潜ればいいじゃないか」


 苦労するのは魔法が使えないからなんだから、魔法が使える仲間とパーティーを作ればいいだけだ。


「……儂も昔はパーティーを組んどったんじゃがな。色々あって今はひとりじゃ。もうパーティーを組む気もせん」


 色々か……冒険中に全滅でもしたのかな。

 ガロンもあまり触れられたくなさそうな雰囲気だったので、俺もこれ以上は何も言わず、無言で先を急いだ。



 ****


「マスター。シャドービーが分岐点にいるそうです」


 しばらくすると、ティータが小声で教えてくれる。


「ここから10分くらい進むと左右に分岐するそうです。一応両方の道を少しだけ見たそうですが、右の道で戦闘がおきているそうです」


「戦闘? 誰が戦っているんだ?」


 まさか冒険者が?


「モンスター同士の戦闘です。片方がコボルトで、片方がゴーレムのようだと言っております」


 コボルトと……ゴーレム?


「ガロン。このダンジョンにゴーレムっているのか?」


「ゴーレムじゃと? そんなもの見たことなわい」


 ガロンも見たことないのか。


「そもそもゴーレムというのは、人工的なモンスターじゃからな。滅多なことでは現れん」


「人工的なモンスターって……えっ? それじゃあ誰かが作ったってこと?」


「基本的なゴーレムは錬金術師などが無機物に擬似生命を宿らせて作るんじゃ」


 それは何となくゲーム知識で知っている。

 それに冒険者の職業でも、ドールマスターがゴーレムマスターって呼ばれたりしている。


「だが、それとは別のゴーレムも存在する。先ほどもいたイグニスファタスなどのような実体を持たぬモンスターが、無機物に宿って動かすこともある」


 簡単に言うと、ゴースト系のアンデッドが物に宿ったらゴーレムってことか。

 日本でいうと付喪神のような存在ってことか。


「じゃあ今回の場合はイグニスファタスがそこらの岩に宿ってゴーレム化したってこと?」


「別にイグニスファタスではなく、レイスやスペクターかもしれんがな。……ちょっとまて。今回の場合じゃと?」


 そういえば、ゴーレムがいるかとは聞いたけど、ゴーレムがいたとは言ってない。


「偵察に行った仲間が、この先の分岐点で、右の道でコボルトとゴーレムが戦っているって言ってるんだ」


「確かにこの先に分岐はあるが……ゴーレムとコボルトが戦うじゃと? なにかの間違いではないのか?」


「う~ん。間違いってことはないと思うけど……」


 シャドービーが見間違えるとは思えない。


「ちなみに分岐はどっちに行く予定だったの?」


「……右じゃ」


 つまり鉢合わせになると。


「ちなみに左は?」


「儂が足を滑らせて落ちてきた場所に繋がる。そして左……ああ、こっちからは右の道じゃな。そっちに進んで炎竜石や竜の素材を見つけての。危険と判断したから今の道を通って帰ってこれたのじゃ」


 なるほど。

 そういうことだったのか。


「ってことは、絶対に右の道に行く必要があるってことか」


 コボルトとゴーレムの戦闘か。

 戦闘が終わるのを待つか、介入するか……それとも無視して先に進むか。

 ……どうしよう?

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