第169話 悪魔の契約
ガロンが秘密を守るために、ラビットAが契約の魔法を使うようなんだが……契約の魔法って何?
俺は全く知らないから、またラビットAのオリジナル魔法なんだろうけど……すごく不気味だ。
「では契約を始めますので……リーダー。よろしくお願いいたします」
「きゅきゅ!」
張り切ってラビットAがステッキを振る。
うん。かわいい。
「ガロン様。マスターの能力を追求したり、それを口外しないことを誓いますか?」
「あっああ。誓おう」
「きゅー!!」
ガロンの言葉を受けた瞬間、ラビットAのステッキから紫の煙が飛び出して、ガロンを包む。
「うわっ!? なんじゃこれは!?」
ガロンが慌てて振り払おうとするが、煙は一瞬にして消え去っていった。
「はい。これで契約は終了です」
「……何も変わった感じはせんのじゃが?」
煙を浴びただけで、なんの変化もないらしい。
「今はそうでしょう。ですが、今後マスターの話を外部に漏らそうとすると……その時に初めて気づくことでしょう」
「えっ!? 教えてくれないの!?」
めっちゃ気になるんですけど。
「儂も気になるんじゃが……」
だよなぁ。
「教える必要性を感じませんので、お教えいたしません」
「何故じゃ!? 何が起こるか分からんと……」
「契約内容が分かろうが、分かるまいが、心配しなくても、ガロン様が話さえしなければ、一生発動することはありません。それとも契約内容が大したことではなかったら話すおつもりですか?」
「そんなことはないが……うむむ」
ティータの言うことが正論だろうが、ガロンも自分の体に起こったことなので、気になるのも分かる。
まぁティータは本当に話すつもりはないようだし、これ以上言い合いしても仕方がない。
今日は酒を飲んでいることもあって、明日ガロンにダンジョンを案内してもらうことになった。
「それじゃあまた明日……」
「お、おい。お主は何処に行くつもりじゃ? 何もないところじゃが、外で寝るよりは安心じゃぞ」
どうやら泊めてくれるつもりだったらしい。
変な魔法を掛けられたのに……親切だな。
「大丈夫。部屋なら俺にもあるから」
俺はそう言って、小屋の隣に個室を召喚する。
もうガロンは俺のことを追求できないし、話すことも出来ないから、自重する必要もない。
「お主……それ……」
ガロンがなにか言おうとして口を閉ざす。
「儂……少し早まったかもしれん」
そう言ってガロンは小屋へと入っていった。
「もしかしたら、今契約が発動したのかもしれませんね」
個室のことを聞き出そうとしたから追求ってことになるのか。
「なぁ。本当に契約の内容を教えてくれないのか?」
「ふふっ。マスターにはちゃんとお教えしますよ。まずは部屋に入りましょう」
個室に入ってジャミングのスキルを持ったモンスターを召喚して、部屋の音が漏れないようにする。
「あれはリーダーのオリジナル魔法【悪魔の契約】です」
契約内容を提示し、相手が了承することで契約完了。
もし契約を破ろうとすると、急に不安になるらしい。
その時点では、特になにもないが、それを無視して契約を破ろうとすると、今度は心臓を鷲掴みされているような感覚を覚える。
それすらも無視して契約を破ることがあれば……最終的に死に至る。
さっきのガロンは多分急に不安になったんだろう。
「死ぬって……めっちゃ危険じゃん」
そんな魔法をガロンに使ったのか。
「先ほども申しましたが、自分から話さなければ一生発動することはありません。それに、どうなるか分からない方が、不安にかられて漏らそうとしませんから」
心理的にはそうかも知れないが、死ぬって分かった方が言わないんじゃ……
「それと……これは絶対にガロン様には説明できませんが、この魔法には欠点もあります」
詳しく聞くと、自白剤で話すことを強要されたり、スキルで覗かれたり自分の意志とは関係なく漏れてしまった場合は発動しないらしい。
「ですが、それをガロン様に説明してしまうと、逆手に取られる可能性がありますから、絶対に言えません」
自分じゃ話さないけど、他人に調べてもらうってことか。
まぁそこまでして俺の秘密を漏らそうとはしないだろうが。
「ちなみに契約解除は出来るの?」
「リーダーが契約解除の魔法を使えば簡単に解除できます。リーダーでなくとも、解呪のスキルや魔法を使えば可能でしょう。まぁその場合はリーダーの魔法より強力でなければなりませんが」
呪い扱いになるから、呪い対策でどうにでもなるらしい。
ってか、ラビットAの魔法より強力って……かなり限られるよな。
「まぁもう契約しちゃったし、ガロンを信じるしかないか」
……お願いだから死なないでくれよ。
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次の日の朝。
俺が外で朝飯を食っていると、ガロンが起きてきた。
「おっ、おはよう。一緒に食うか?」
俺が朝食に誘うと、ガロンはその朝食を見てため息をつく。
俺が食べていた朝食はシリアル食品。
昨日が酒と肉でガッツリだったから、あっさりした物を選んだんだけど……ドワーフだから、あっさりした物よりもガッツリのほうが良かったのかな?
「……お主は本当に儂に契約を守らせる気があるのか?」
「はぁ?」
何故これで契約が関係ある?
フレンチトーストはなかったけど、シリアルは普通にある……よね?
そういえば、街で売っているところは見たことない。
でも、アザレアやアズリアに食べさせた時は何も言わなかったけど……もしかして、知らない料理だったけど、何も言わなかっただけ?
「……10年間ここにいたんじゃ知らないかもしれないが、ライラネートでは普通に食えるものなんだよ」
俺がそう言うと、ガロンは納得した。
「ふむ。そうだったのか。儂の知らぬ間に食生活も変わったんじゃな」
……なんかごめん。




