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第18話 ゴブリン対策

「なぁ……帰還する前に、ゴブリンがどんな見た目なのか確認してもいいか?」


 絶対に勝てないけど、せめてどんな相手なのか……一目ゴブリンを見たかった。

 もちろん見つかる訳にはいかないから、絶対に見つからない位置で遠くから見るだけだけど。


 俺はナビ子にゴブリンに見つからないギリギリの場所まで教えてもらい、遠くにいるゴブリンを確認……その場から逃げ出した。



 ****


「とりあえずゴブリンは後回しにする」


 俺は帰るなりそう宣言した。


「なに? ゴブリンを見て怖じけずいちゃった?」


「当たり前だ! あんな化け物みたいな奴らに勝てるはずないだろ!」


 雑魚モンスター代表のゴブリン。

 小鬼だけあって、身長は子供ぐらいの大きさだが、その見た目はまさに化け物と呼ぶにふさわしい外見だった。


 人間とは違う……モンスターだとハッキリ感じさせられた。

 あんなのを相手にベレッタ1丁で何ができると言うのだろうか。


「だが諦めた訳じゃない。アンブロシアも……ゴブリンも絶対に手に入れる」


 もしあのゴブリン達をモンスターカードに出来たら、一気に戦力アップになる。

 アンブロシアとゴブリン。

 両方を手に入れるためにはもう少し戦力が必要だ。


「だから先にカード化のスキルをレベル2にする」


 レベル2になれば合成が使える。

 合成が出来れば武器や……強いモンスターが手に入る可能性が高い。

 ゴブリンへの対策だって出来るはずだ。


 まず俺が30種類まで図鑑を登録。

 そしてラビットAの活躍で、図鑑の登録は既に70を越えている。

 やはりモンスターの登録が美味しい。

 モンスターカードに魔石に素材に……モンスターを1種類狩れば、4~5種類は図鑑に登録できる。

 新メンバーも現在探索に向かっているから、またモンスターの種類が増えるかもしれない。

 もしかしたら今日中にレベル2になるかも?

 仮に今日は無理だとしても、数日のうちに必ずレベル2にはなれるだろう。


 それまでの間、俺は筋トレと銃の訓練をして少しでも強くなることにした。



 ****


 残念ながら本日の新メンバーの成果は芳しくなかった。

 いや、持ち帰ってきたアイテムは大量だったのだ。

 だがその殆どが既に登録済みのアイテムだった。

 やはりこれ以上この森で新規の果実や草はないのかもしれない。


 一応、まだ木を切り倒して登録するって選択肢を残しているのだが……鉈一本ではかなり時間が掛かるからなぁ。

 それは最後の手段にしたいな。


 新規のアイテムは新しいモンスターしかなかった。


 やはりこの辺りに登録できそうなのは残っていなかったようだ。


 新しいモンスターは3種類。


 ――――

 幻惑蝶

 レア度:☆

 固有スキル:鱗粉

 個別スキル:蜜集め


 蝶系の下級モンスター。

 惑わす鱗粉を撒き散らす。

 戦闘能力はないため、戦うためではなく、逃げるために使用する。

 ――――


 蝶のモンスターだ。

 蝶だから美しいかと思ったら、そうではない。

 なぜなら日本で見かける蝶の数倍は大きいからだ。

 確かに鮮やかな羽は美しい。

 しかし体の部分が大きいため、口のストロー部分や眼が怖い。

 だから……どちらかといえば蛾に近いかもな。


 固有スキルの鱗粉は、相手を惑わす粉を撒き散らすらしい。

 このスキルはモンスター専用スキル。

 つまり俺には扱えないってことだ。

 まぁ俺が鱗粉を出すとしたら……うん、おぞましい発想しか出てこない。


 個別スキルの蜜集めは花からより多くの蜜を集めることが出来るそうだ。

 こっちはモンスター専用じゃないらしい。

 人間でも蜜集めは出来るってことかな。


 ――――

 ラージ・アント

 レア度:☆☆

 固有スキル:酸攻撃、毒耐性

 個別スキル:硬質化


 蟻の下級モンスター。

 口から発する酸はどんな物でも溶かし、その強靱なアゴは大木をも砕く。

 皮膚は硬く、ダメージを与えるのすら困難。

 全身には毒が塗られており、触れた者を溶かす。

 とはいえ中級の冒険者ならソロでも勝てるだろう。


 だがラージ・アントの真の脅威は集団で行動することである。

 ラージ・アントをいたずらに攻撃して、その怒りを買えば軍勢を率いて反撃する。

 ラージ・アントの軍勢が街を壊滅させたという例もある。

 決して迂闊に攻撃をしてはならない。

 ――――


 ……なんかメチャクチャ強そうなことが書かれてないか?

 下級モンスターの……しかも蟻だぞ?

 確かにラージの名前通り、蟻なのにラビットAよりも大きい。

 しかも星2ではある……けど、今までにないくらいの図鑑評価だ。


 正直新メンバーがどうやって……と思ったが、偶々死んでいた所を魔石だけ持ち帰っただけのようだ。


 固有スキルは酸攻撃と毒耐性。

 どちらも優秀なスキルだと思う。


 個別スキルは硬質化。

 身体を硬くすることが出来るらしい。

 ちなみにモンスター専用スキルじゃないから俺でも使える。

 あれかな、鉄のように固い筋肉みたいになるのかな?


 とりあえず魔石は1個だけしかないようだが、この蟻は戦力になる。

 この蟻なら木も伐採できるかもしれない。

 図鑑登録にも役に立つし、現状の仲間の中で一番の強さを誇るだろう。


 もしかしたらゴブリンも単騎で倒せるかもしれない。


 こうなったらラージ・アントをもっと捕まえて……いや、生きているラージ・アントの集団に出会ったら、ゴブリンよりも大変に違いない。

 うん、とりあえずこの1匹で満足しよう。


 ――――

 スモッグリザード

 レア度:☆

 固有スキル:ブレス


 火を噴くことを夢見ているトカゲ。

 しかし実力がなく火を噴けない。

 ――――


 モンスターというより、ヤモリみたいな小さなトカゲだ。

 このスモッグリザード……アリと比べると随分と可哀想な図鑑説明文だな。

 火を噴くことを夢見て……って。


 気になったのでブレスを噴かせてみたら、タバコの煙よりもか細い黒い煙がでた。

 これがせめて煙幕レベルの煙だったら戦力になるのだが……これでは何の役にも立たない。

 このトカゲ、成長すればちゃんとしたブレスを吐けるのかな?


 固有スキルはそのブレスのみ。

 個別スキルは何もなし。

 トカゲって、俺の仲間の中では一番当たりの種族な気がするが、一番ハズレのモンスターの気がする。


 まぁもちろん戦力にはならなくても見捨てる真似はしないけどね。


 以上、3種類のモンスターが新しく加わった。

 この2種類だけでも新規図鑑登録は10近い。

 今日は無理だったが、やはり数日中にはレベル2になるだろう。


 それからキラービーやスモールスパイダーが増えた。

 この2種は山の中でも特に多く見かけるモンスターのようだ。


 今回はスキルにすることも考えたが……最初はやはり今は数が欲しいので、全部モンスター化した。

 まぁマヒ攻撃や毒攻撃をスキルにしても……ねぇ。


 これがカエルだったら、命中補正期待でスキルにしたかもしれないけど、残念ながらアーストードはいなかったようだ。


「しかし……魔石ってあまり落ちてないんだな」


 今回はラージ・アントの魔石が1個手に入ったようだが、それ以外に魔石はなかった。

 そういえば俺も今日は長時間山の中を歩いていたけど、魔石の類は見つからなかったな。

 山の中なら、野生で死んでいるモンスターがもっといていいはずだ。


「魔石とかモンスターの死体はね……一定時間が経過すると、魔素へと還元されるの」


 ナビ子の話によると、魔石を含んだ死体は長時間放置すると、魔素として消滅してしまうらしい。

 だから死体もどこにも見当たらないのか。


「でも魔石って換金アイテムなんだろ? 消滅するんなら売れないじゃん」


「還元されるのは地面に接した魔石だけ。魔素に還元じゃなくて、土に還るって言えば分かりやすいかな?」


 土に還るか……そう言われれば分からなくもない。

 今回のラージ・アントは死にたてだったってことかな?


「大体数日くらい経てば魔素に還元されるかな。そして還元するよりも早く魔石や体に変化が起こると……アンデッドになっちゃうの」


 アンデッド……やはりこの世界にはいるのか。

 俺はコレクターだけど……ゾンビの仲間は流石に欲しくないなぁ。


「それから街で売却された魔石は加工されて使われるの。だから魔素に還元されることもないの」


 なるほど。

 売られた魔石は還元しないようにしてから保存するのか。


「……加工された魔石ってカードに出来るのかな?」


「それは……どうだろうね?」


 ナビ子の目が泳ぐ。

 おやぁ? ナビ子にいつもの余裕はない。

 もしかして本当に知らないのかもしれない。


 ――運営……確かめなかったな。

 というか、俺しか使わないスキルなら……むしろ俺がデバッカー的な感じなのかもしれないな。

 さしずめ今の俺の状態はβテスターってところかな。

 街で魔石を手に入れる機会があれば確かめてみよう。

明日からの3連休は朝晩の2回投稿を予定してます。

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