第167話 ガロンへの質問
「がははっ食った食った。こんなに食ったのは久しぶりじゃわい」
ガロンは満足そうに腹を叩く。
そりゃあ、あんだけ飲み食いすりゃ満足するよな。
ガロンはマジで遠慮せずに飲み食いしやがった。
フォレストドラゴンの肉はトン単位で残ってはいるが、それでも途中で無くなるかもと思ってしまった。
フォレストドラゴンの肉は俺だけじゃなく、他の人にも食べさせてあげたいから、使いきるわけにはいかない。
さっきのシチューなら、誰でも食べられるだろうから、アザレア達にもお土産として食べさせてあげたい。
それに、今回一番食べてもらいたいのはホブAだ。
ガードモンスターは食事をとる必要はないが、ラビットAのように、嗜好として楽しむことはできる。
フォレストドラゴン退治を始め、今もナビ子と一緒にダンジョングループを率いて頑張っているはずだ。
ゴブリンなら、ガロンと同じようにフォレストドラゴンの硬い肉でも問題ないだろうし、今回頑張った仲間には褒美として与えてあげたい。
「こんだけ振る舞ったんだから、ちゃんと隠さずに話せよ」
ここでやっぱり話さんとか言ったら、飯代として炎竜石を請求してやる。
「分かっとるわい! それより儂もお主に聞きたいことがあるんじゃが……」
「俺達のスキルと所持品以外のことなら答えてやる」
「…………」
俺は先手を打った。
アザレアと初めて出会ったときもそうだが、こんな聞き方をするときは、絶対にこっちの秘密に決まっている。
ドラゴンの肉を入れていた収納スキルはどれくらい入るのか、ラビットAやティータは何者なのか、ビールやウイスキーはどこで手に入れたのか、ジョッキやバーベキューで使用した調理具や食器は何なのか。
まぁこんな感じだろう。
案の定、ガロンは口をつぐむ。
「……お主は聞くだけ聞いて、自分は答えんのはズルくないか?」
「だから、対価として飯を食わせたんじゃないか。それに、別に何も聞くなとは言ってない。他のことなら何でも聞いてくれ」
まぁだからと言って出身は……とか聞かれても困るけど。
「他に聞くことなんぞないわい!」
「だったら我慢しろ。それに、俺だって聞くのは調査に関してだけで、ガロンの個人的なことは聞くつもりはないぞ。それとも……鍛冶のコツとか極意とか聞いて答えてくれるのか?」
「ぐぬぬ……」
別にガロンの個人的な話は興味ないし、鍛冶のコツとか聞かされても意味がない。
が、それはガロンの魂だ。
どれだけ脅されたとしても、話せるはずがない。
「ってことで、改めて調査に協力してもらうぞ。まず……これは答えても答えなくてもいいけど、何で最初は協力してくれなかった?」
「……それは、調査に関係あるのか? 儂の個人的なことにならんか?」
「だから答えなくても良いって言っただろ。まぁこの質問の意味は……単純に話したくなかっただけなのか、話せなかったのかが知りたかったからなんだけど」
要するにガロンが今回の調査に関係があるかどうかってことだな。
単純に不法侵入した俺達に話したくなかっただけなら、ガロンは調査に関係ないだろう。
でも、話せない事情があったのなら……まぁその場合はどんなに脅しても話してくれなかっただろうから、ないとは思うけどね。
「不法侵入しておる胡散臭い奴に親切に話したいと思うか?」
予想通りの答え。
「まぁそうだよな。ってことで、本題な」
まず最初に俺が聞きたいことは3つ。
・平地に山のモンスターが出現しているのを知っていたか
・この山でモンスターが大量発生などの異変は起きているか
・この2つを知っていた場合、いつ頃から発生したか
とりあえずこの3つを質問してみた。
「この辺りのモンスターに変化はない。が、思えばダンジョン内のモンスターは増えたように思う」
とりあえずガロンは異変のことを知らなかったと。
うん。看破は発動してないから嘘ではなさそうだ。
でも……そっか。
この山にもダンジョンはあるのか。
考えたら当然だよな。
じゃないと、どこにドラゴンがいるんだよってなっちゃう。
「ダンジョンってひとつだけなのか?」
「入口はいくつかあるが、全て奥で繋がっておる」
「そうなのか?」
ガロンの言葉に少し驚く。
繋がってるとは考えなかったな。
「儂とて全ての入口を確かめたわけではないが、いくつか実際に確認済みじゃ」
ゲーム的印象で、なんとなくダンジョンって、入口があって奥にボスって印象だったけど、考えてみたら抜け道的なダンジョンや、複数の入口があるダンジョンもあった。
「……あのさ。樹海にもダンジョンの入口が2つあったんだけど、それとも繋がってるかな?」
「儂は樹海の入口を知らんから何とも言えんが、繋がっておる可能性はある」
「じゃあさ。樹海を抜けて、平地に入り口があるってことも……」
「平地にダンジョンの入口があれば、お主の方が知っておろう」
ああ、そういえば俺がよそ者だってことは言ってなかった。
もし、ダンジョンの入口があって、山のダンジョンと繋がっているなら、そこを通って平地にやってきている可能性がある。
……ケフィアは何かしらないかな?
「しかしマスター。もし樹海とも山とも繋がっているダンジョンだとしたら、平地には樹海のモンスターも現れるのではないでしょうか?」
まさに今考えていたことをティータに否定される。
確かにティータの言うとおり、全部が繋がっているのなら、山のモンスターだけが平地に来るのはおかしい。
「樹海のダンジョンと山のダンジョンは繋がってなくて、平地のダンジョンと山のダンジョンだけ繋がっている可能性はないかな?」
それなら山のモンスターだけが平地にやってくる原因となる。
「ですが、山のモンスターが平地にやってくるようになったのは、最近ですよね? もし本当にダンジョンなら、昔から平地にやってきたのでは?」
ふむ。確かにそうだ。
仮に今回の大量発生が原因だとしても、繋がっているのなら、以前からちょくちょく出現してもおかしくない。
ってことは、平地にダンジョンがある案は違うのかな。
「まぁ平地にダンジョン案や樹海のダンジョンと繋がっている案はナビ子と合流してから考えよう」
合流した後に、またケフィアに確認の伝書鳩を飛ばしてもいいかもしれない。
ガロンへの最初の質問はこれくらいにして、次の質問へと移る。
「じゃあずばり聞くけど……ドラゴンの居場所を知っているか? というか、倒したのか?」
これがガロンに一番聞きたかったことだ。




