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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第164話 鍛冶職人

「マスター。向こうから仕掛けてくる前に、こちらから仕掛けますか?」

「きゅきゅ!」


「いやいや、なに物騒なこと言ってんの!?」


 2人とも好戦的過ぎるだろ。


「そもそも、勝手に家に上がり込んでいるこっちが百パー悪いんだから、仕掛けちゃ駄目だろ」


 向こうが警戒しているのは、中にいる俺達が賊、もしくは野生のモンスターだと思っているからだ。

 いや、モンスターなら小屋が壊されている可能性が高いから、賊だと思われているだろう。


 なら、こっちに敵意がなく、無害だと伝えればいいだけのこと。

 ……まぁそれが難しいんだけど。


「別に敵対するつもりはないんだ。だから……いいか。絶対に敵意を向けるなよ」


「マスター。確かに今回の件では、完全にマスターに非がありますが、それでもマスターに害を及ぼしそうでしたら、容赦いたしません」

「きゅい!」


 ……俺が悪いってことは認めちゃうのね。

 それでも関係ないと。

 献身的と言うか……こうなったら、向こうが早まらないでくれることを祈るのみか。



 ****


 バンッと勢いよく扉が開かれる。


「くぉら! 儂の作品になにし……や……」


 入ってきたのは、背の低い、髭もじゃのむさ苦しいオッサンだった。

 おそらくドワーフだろう。


 ドワーフは武器を構え、勢いよく扉を開けたが、俺たちを見て、言葉がしりすぼみになる。


 まぁ賊かと思って扉を開けたら、待っていたのは、頼りなさそうな若造と、ウサ耳魔法幼女、それから妖精だ。

 その3人が、両手を上げてホールドアップ状態。


「なっ、なんじゃ貴様らは!?」


 最初の勢いはどこへやら。

 ドワーフが一転して動揺する。

 ……どうやら俺たちが未知の存在過ぎて、逆に怖いみたいだ。


「あっ、俺達は怪しいものじゃなくて……ちょっと通りかかっただけなんですよ! ほら、何も盗ってないですし、この通り抵抗しないんで……」


 とりあえず無害アピール。

 武器も素材も……地面の穴もすっかり元通りだから、パッと見では無くなったものはおろか、触った形跡すらない。


 ドワーフは言葉が通じることで、先ほどまでの恐怖はなくなったようだが、今度は胡散臭そうな目を向ける。


「通りかかったじゃと? ふん。下手な言い訳をしおって。こんな場所を通りかかるものなぞおるはずなかろう!」


 ドワーフが眉をひそめる。

 流石に通りかかったは無理があったか。

 まぁ冒険者すら殆ど寄りつかない山だしなぁ。

 ただ……事実なんだよなぁ。


「ええ。ちょっと依頼でこの辺りの調査をしていまして……」


「調査だと?」


「ええ。最近山のモンスターが平地に出るようになりまして。それで、冒険者支援ギルドから依頼を受けまして、調査にやってきました」


「お主が……1人でか?」


「俺はサマナーなんで、1人のほうが気楽なんですよ。それに、この子達がいますからね」

「きゅっ!」


 ティータは無言で、ラビットAが元気に挨拶する。

 が、ドワーフは一瞥しただけで、すぐに俺に向き直る。


「そういうことで、調査に来たんですが、そしたら小屋があるじゃないですか。調査をするなら、そこに住んでいる方から話を聞くのが一番だと思って、訪ねたのですが、不在でしたので、待たせてもらいました」


「なら、さっさと出ていけ。礼儀知らずに話すことなんぞ何もない」


 礼儀知らずってのは、勝手に中に入っていたことだろう。


「許可なく中に入ったことは謝罪します。ですが……そこにある武器が、あまりにも素晴らしい物だったので、思わず見入ってしまいまして……」


「ふん。お主に何が分かる?」


「えっと……例えばこのフランベルジュ。炎魔石だけじゃなく、ヘルハウンドの牙も使っていますよね? 多分、魔獣系のモンスターに、よりダメージを与えられるんじゃありませんか?」


 俺は一番手前にあった剣の性能を語る。

 もちろん、さっきカードにした際の説明文をそのまま言っただけだ。


「……少しは物の価値が分かるようだな」


 ドワーフは悔しそうに言う。

 おそらく牙に関しては、隠し素材だから、アザレアの観察眼でも分からなかったんじゃないかな。

 カード化か鑑識眼レベルじゃないと見抜けなかったに違いない。


「実は俺も少しばかり心得がありまして……そうだっ! この剣を見てもらえます?」

「きゅい!」


 俺はラビットAから武器を預かって、ドワーフに見せた。


 ――――

 ボーパルソード【武器】レア度:☆☆☆☆


 別名ラビットソード。

 使用者よりも体格の大きな相手に対して、急所に当たりやすい。

 ――――


 ラビットAが魔法じゃなくて物理でも戦いたいとゴネたため作った、もう一つのラビットA専用の武器だ。

 ソードって書いてあるが、長剣ではなく、少し長いナイフだと思う。

 ラビットステッキ同様、ウサギのしっぽを素材に合成したら、完成した。

 幸運だから急所に当たりやすいんだろうな。


 俺がボーパルソードを渡すとドワーフの目つきが変わる。


「――悪くはない。だが、それだけだ」


 それだけ……か。

 一応星4で、かなり強い武器なんだけどな。


「お主……心得があると言ったが、それは嘘であろう? この武器には魂がこもっとらん。おそらく鍛えたものではなく、錬金系のスキルで作ったものだ。そうであろう?」


 スゴいな。

 そんなことまで分かるのか。


「ご推察の通り、これは俺のスキルで作りました」


「ふん。スキルなんぞに頼っている奴なんぞに話すことなんて何もない! さっさと出ていけ!」


 あちゃあ……こりゃあ失敗しちゃったかな。

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