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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第163話 竜の素材

 ラビットAとティータに冷ややかな目で見られようとも、こういったチャンスを逃すことは出来ない。

 俺は家主が居ない今のうちに、武器や素材をカードにすることにした。


 だが、決して盗んだりはしない。

 コレクターとして、盗みや迷惑行為はご法度だ。

 さっき炎魔石をカードにしたから……このまま素材からカードにしていこう。


「マスター……家主の許可無く勝手なことをされるのは……」


「だって家主が居ないんだから仕方ないだろ。それに、絶対に迷惑はかけないって」


 全く……ティータはちょっと真面目すぎる。

 ナビ子ならむしろカードにすることを推奨するんじゃないのかな。


「きゅート! こっち!」


 見ると、ラビットAが作業場の地面を掘り起こしている。


「ちょっ!? 何やっ……何だそれ?」


 早速迷惑行為を働いているラビットAを咎めようと近づくと、掘った場所に赤い鉱石があった。

 さっき見た炎魔石とは違うようだ。


「なるほど。レアな素材だから、隠していたってことか。でかしたぞ」


 流石、嗅覚のスキル持ち。

 もの探しに関してはプロ級だな、

 俺はラビットAにいい子いい子してやる。


「きゅへへ」


 うん、かわいい。


「あの……マスター。迷惑行為は禁止だったのでは?」


 俺がラビットAを誉めたことで、ティータが疑問に思ったようだ。


「まぁそんな固いこと言わずにさ。ほら、家主が戻ってくる前に元通りにしておけば、迷惑行為にはならないって」


 そう。

 バレなければ迷惑行為でもなんでもない。


 だが俺がそう言うと、ティータが先程以上に冷ややかな目を向ける。

 いかん。俺の株がどんどん暴落している気がする。

 だけど……せっかくだしね。


 ってことで、俺は急いでラビットAの見つけた鉱石をカード化してみる。


 ――――

 炎竜石【素材】レア度:☆☆☆☆


 炎の魔力を宿した鉱石。

 炎竜の魔力を受け続けた場所でしか見つからない。

 ――――


 おおっ! 星4!

 しかも、炎竜石だって。


 ドラゴンの魔力を受け続けた場所でしか見つからないなんて……この山にドラゴンがいることは証明されたな。


 この素材で武器なんか作った日には、量産型なんか目じゃないくらいの武器が作れそうだ。

 というか、そこら辺にある武器にも使われているんじゃないか?


 よし、次は武器を……ってとこで、ティータから待ったが掛かる。


「マスター。カードの登録は済んだのでしょう。早く元通りにしてください」


 むぅ。

 もう少し持っておきたかったけど、仕方がない。

 ……ティータに促されて、仕方なく解除(リセット)する。


 掘った穴はラビットAが責任をもって元に戻す。


「きゅっきゅきゅっきゅきゅい」


 ラビットAが鼻歌混じりに魔力を流し込むと、地面は一瞬で元通りだ。


「……なぁ。今何したんだ?」


 俺はラビットAが今何をしたか理解できなかった。


「きゅい! あたらしーまほー」


 新しい魔法?

 そんなのを教えた覚えはない。


「今のは【土いじり】ですね。リーダーのオリジナル魔法です」


 土いじり……そのままの魔法だな。

 というか、魔法ってオリジナルで自作できるの……って、以前、似たようにオリジナル魔法を使ってた人物がいたな。

 その人物にはもう会うことはないだろうけど……そう考えると、魔法って自作できるのかもしれない。


「リーダーは他にもたくさんのオリジナル魔法をお持ちですよ」

「きゅふふ」


 俺はどや顔のラビットAにちょっとイラッとする。

 ならちゃんと教えろと言いたい。

 これは……今度じっくり問いたださなくちゃ駄目だな。

 でも今は武器の登録が先だ。


「さっ、片っ端からカードにしていくぞ」

「きゅきゅ!」

「はぁ……もう知りませんからね」


 色々と諦めたティータを尻目に、俺とラビットAはノリノリでカードにし始めた。



 ****


 さて、これからどうしよう?


 ここにある素材や武器は、一旦全部カードにして登録も完了したし、元通りにした。

 このままこの小屋を出たら、俺達が侵入したことすらバレないだろう。


 だが、俺はこの小屋に住んでいる人物と話をしてみたい。


 武器もカードにしたから分かるけど、ここに住んでいる人は、かなり優秀な職人だと思う。

 単純に興味があるし……この山に住んでいるってことは、異変のことも知っている可能性が高い。

 仮に異変のことは知らなくても、ドラゴンのことは間違いなく知っている。


 ――――

 炎竜剣【武器】レア度:☆☆☆☆


 火属性の剣。

 流れてくる溶岩すら斬ることができる。


 炎竜の爪が利用されており、ドラゴン系モンスターに対して威力を発揮する。

 ――――


 炎竜石だけでも、ドラゴンの棲みかの近くでしか採れないのに、さらに炎竜の爪て……。

 もしかして、ドラゴンを退治して、この剣を作った?

 んで、ドラゴンが居なくなったから今回の異変が起きている。

 うん。可能性は十分にある。


 だから、話をしてみたいと言うよりも、絶対に話を聞かなくてはならない。


 問題は、ここの住人が何処にいるかだ。

 すぐに戻ってくるのか、それとも遠出をしているのか。

 それが分からなければ、待ちようがない。


 だけど……他人が勝手に家に侵入していたら、普通に考えたら怒るよな?

 ……この中で待っててもいいものか?


「ってことで、どう思う?」


 ひとりで考えても分からないので、ラビットAとティータに相談する。

 ……こういうとき、ナビ子がいたら、的確なアドバイスをしてくれるんだけど……2人はどうかな?


「きゅみ~……」


 だが、ティータは無言で、ラビットAは申し訳なさそうに鳴く。


「どっ、どうしたんだ?」


「マスター……残念ですが、家主と思わしき人物が、すでに外にいます」


「ええっ……どういうことだよ」


 思わず大声を出しかけ……外に聞こえたらマズいと、抑え気味に言う。


「どうもこうも、そのままの意味です。すでにマスターの気配を捉えているようで、警戒されております」

「きゅみぃ……きけん!」


 警戒済みって……


「なんで早く教えてくれなかったんだ」


「ですから。どうなっても知りませんと言ったではありませんか」


 確かに言ってたけど……そういう理由なら言ってくれよ。


 とにかく……現時点では強盗と間違われても仕方がない。

 俺は敵対しないで済む方法を必死に考えた。

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