第162話 山小屋
俺はナビ子と別れ、ラビットAとティータとともに、ブルーム山に向けて出発。
現在地は樹海の中心部。
山まではそれなりの距離がある。
このまま歩いて山まで行くのか、それとも空から行くのか。
空から行った場合、降りる場所は何処にするのか。
悩んだ末、結局空から行くことにした。
降りる場所は……その時考えればいいだろう。
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俺はロック鳥に乗って。空から地上を眺める。
うん、ソニックイーグルには悪いけど、以前のように怖くはない。
やはり自前のモンスターだからか。
「単純に慣れの問題かと」
……まぁ確かにソニックイーグルに乗った時も最後の方は平気だったし、ティータの言うとおりなんだろうけどさ。
それだけじゃないと思いたいじゃないか。
俺は地上を眺める。
……火山って、樹海のように木々が生い茂っているわけではないから、上空から見れば、見晴らしがいいかと思ったが、そうではなかった。
デカい岩がそこら中にあって、死角が多い。
さらに温泉なのか至るところで煙が発生している。
ワイルドホーク達が何も見つけられなくても仕方がない。
……火口はどうなっているんだろうか?
流石にこのまま行くのは危険か?
「マスター。異変とは関係ないので、報告しませんでしたが、1ヶ所気になる場所があるのですが……」
ふむ。
異変とは関係ないけど、気になる場所がある?
じゃあまずはそこに行ってみるか。
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「――うん。確かに異変とはなんの関係もないな」
「だから言ったではありませんか」
ティータの言う通り、異変とは関係ない。
だけど、確かに気になる。
「なぁ……あれなんだと思う?」
「何って、どうみても小屋でしょう」
うん。俺にも小屋に見える。
問題は何でこんなところに小屋があるのかってことだ。
「……誰か住んでるのか?」
こんな辺鄙な場所に?
「冒険者が休憩所として利用している、無人の小屋かもしれません」
その線は殆どないな。
何故なら、目の前の小屋はちゃんと整備されている。
ケフィアの話なら、この山には冒険者も殆ど来ないってことだから、冒険者がたまに利用するだけなら、モンスターに壊されたり……もっと荒れ果てても良い気がする。
……要するに、誰かが住んでいるってことだ。
「もしくは山の管理人という線はないでしょうか?」
その線もないだろう。
それだと、ケフィアが教えてくれているはずだ。
というか、調査依頼をその人物にするはずだ。
だからケフィアの知らない人物か……モンスターが建てたってことはないよね?
「では……マスターの祖父のような世捨て人かもしれませんね」
あ~その可能性はあるな。
というか、俺のじいさんって……設定だって知っているくせに。
「……入ってみます?」
「ちなみに気配察知の結果は?」
「……生命反応はありません」
ティータが自信なさげに答える。
ナビ子の代わりとして覚えさせたのだが、まだレベルも低く、慣れてないので自信がないようだ。
まぁ居ても居なくても、どっちにしろ確認はしたいところだ。
というわけで、小屋に近づいてみることにした。
「マスター。念の為、リーダーを出してはどうでしょうか?」
おっとそうだった。
ロック鳥に乗っている間はラビットAをカードに戻しているんだった。
俺はラビットAを召喚する。
「きゅいっ!」
相変わらず無駄に元気だ。
「ラビットAも何かあればすぐに知らせてくれよ」
「きゅきゅ!」
ラビットAは危険察知のスキルを持っている。
気配は分からなくても、危なかったら知らせてくれるはずだ。
扉をノックしてみる。
「すいませーん。誰かいませんかー?」
……大声で呼びかけても返事はない。
ドアノブを回してみる。
……鍵はかかってない。
まぁこんなところで鍵を掛けても意味はないだろうしな。
「入りますよー」
誰も聞いてないのは分かっていても、思わず口に出してしまう。
俺は扉を少し開け、中を覗き込む。
「――なるほどな」
中を見て、なんとなく察した。
「きゅわ~」
「これは……鍛冶場でしょうか?」
同じく覗き込んだラビットAとティータ。
ラビットAは目を輝かせ、ティータは冷静に分析する。
小屋の中にあるのは炉に工具に鉱物。
壁には武器が並んでいる。
ティータの言う通り、鍛冶場で間違いないだろう。
興味を覚えた俺は、無人の鍛冶場へ入る。
その後について入るラビットAとティータ。
「ラビットA。無闇矢鱈に触るなよ」
「きゅいっ!」
返事は良いが……おいおい、早速目の前の武器に触ろうとしているぞ。
「ティータ。ちゃんと見といてくれ」
「畏まりました。リーダー……触ると今日のニンジン抜きですよ」
「きゅぴぇっ!?」
……ティータに任せれば問題ないかな。
俺は鍛冶場に集中する。
まず気になるのは、鉱石。
鉄ではなさそうだ。
登録して図鑑を確認する。
そこには炎魔石と書かれていた。
……レシピはなしと。
合成では作れないってことか。
……少しくらいいいよね?
俺は炎魔石を手にとって、変化する。
――――
炎魔石【素材】レア度:☆☆☆
炎の魔力が宿った鉱石。
火山など、特定の場所でしか見つからない。
――――
ふむ、星3か。
以前アズリアが言ってたけど、魔武器を作るのには特殊な魔法石が必要って言ってた。
量産型魔剣なら火の魔法石と鉄鉱石って言ってたけど……火じゃなくて、炎だから、量産型魔剣よりも強力な魔剣が作れそうだ。
俺は魔剣を作る時は魔法で作ってたけど……これで合成したら、より強力な武器が作れるかな?
「きゅート! さわっちゃ、めっ!」
俺がカードにしているのを発見してラビットAが咎める。
自分には触るなと言って、俺が触ってるから文句を言いたいんだろうな。
「マスター。盗みはよくないですよ」
ティータまで……。
「別に盗んでいるわけじゃない。ちょっと図鑑に登録だけしようと思っただけだ」
実際、このカードだってすぐに解除するつもりだ。
ただ、登録だけだったら、説明文が表示されないから、一旦カード化する必要があった。
「せっかくだから……ここにあるの。全部図鑑に登録していいかな?」
「きゅート……」
「マスター……」
2人とも否定はしなかったが、冷ややかな目で俺を見つめた。




