第161話 チーム分け
「よし! ブルーム山へ向かおう」
「えっ? 洞窟はいいの?」
俺の答えが予想外だったようで、ナビ子は目を見開いて驚く。
「もちろん、そっちも行くさ。だから……今回は役割分担しようと思う」
「役割分担?」
「要するにチーム分けだな。山探索組と、ダンジョン探索組に分かれよう」
今までみたいな偵察とかじゃない。
ガチの探索をするためのチームを作る。
ここ数日で、ウチの連中が冒険者に見つかることはないということが分かった。
しかも、ダンジョンなら、さらに冒険者に遭遇することはないだろう。
なら、出し惜しみする必要はない。
「それで、シュートは山の方に行くんだね」
「ああ。正直、ダンジョンの方は足手まといにしかならないだろうからな」
気配察知が使えず、足場も不安定だったら、俺がいるだけで行動は制限される。
なら、山の方が足手まといにはならないだろう。
「んで、チーム分けはどうすんの?」
「その前に、主要なメンバーを呼び出そう」
ラビットA、ホブA、ティータとメーブ。
言葉を出せる4人を召喚する。
「俺とナビ子を含めて6人。ここから2つのチームを作ろうと思うんだが……」
本当は山の探索チームと最初のダンジョンのチーム、新しいダンジョンのチームと3つに分けたいところだが、現状それは難しい。
「じゃあダンジョン探索を引き受けるゴブ」
ホブAがダンジョンチームに志願した。
俺もホブAにはダンジョンの方を任せたかったから、ちょうどいい。
ダンジョン内なら、安心してゴブリンを出せるもんな。
「では、妾もダンジョンの方へ参りましょう」
これも予定通り。
夜の女王のメーブなら、ダンジョン内の暗闇も平気のはずだ。
「んじゃあ、ラビットAとティータがアタイ達と一緒に山探索かな?」
「ちょっと違うかな。正確には俺と一緒にだ。ナビ子……お前はホブA側だ」
「えええっ!? なに言ってんのさ!」
ナビ子が驚く……というより、ちょっと怒っているように見える。
それに、ナビ子だけではない。
ラビットAやホブA達も驚いている。
だが、今回だけは譲れない。
何故なら、カード化スキルを使えるのが俺とナビ子しかいないから。
これが、チームを3つに分けられなかった理由だ。
ダンジョンで倒したモンスターをカードにする。
疲弊した仲間をカードにして回復させる。
ダンジョンを探索するのに、カード化スキルは不可欠と言えるだろう。
もし、ナビ子が俺から離れられないままだったら、チーム分けは考えなかったかもしれない。
「……シュートはアタイが近くにいなくてもいいの?」
正直、ナビ子が近くにいないと不安で仕方ない。
だけど……
「俺だっていつまでもナビ子に頼りっきりじゃ情けないもんな」
いい加減独り立ちしないと。
「それに、俺はナビ子を大事な相棒だと思っているから、安心してコレクションを託せるんだ」
その言葉にナビ子がハッと息をのむ。
ナビ子は俺がどれだけカードを大事にしているか知っている。
そのカードを託すってことが、どれほどの意味を持つのか。
どれだけ俺が本気なのかが伝わったようだ。
「……本当にいいの?」
これがナビ子以外の人……たとえアザレアがカード化スキルを使えたとしても、こんな風にカードを託すことは出来なかっただろう。
「……信じているからな」
一瞬、運営のことが頭をよぎったが、それでも俺はナビ子を信じる。
「分かったよ。じゃあアタイはホブAと一緒に行く」
こうして俺はナビ子と別々に行動することにした。
****
俺はナビ子と別れて、山の方へ向かう。
ナビ子の方は、最初に見つけたダンジョンの方へ向かうそうだ。
そこで、コウモリ達と合流して探索をする。
ナビ子達の戦力はホブA率いるゴブリン軍団と、メーブ率いるピクシー軍団が中心で、インセクトクイーン率いる蟻と蜘蛛だ。
俺の方はラビットA率いるウサギ軍団と、ティータ率いるフェアリー軍団。
それからクイーンビー率いる蜂軍団だ。
「こちらからは向こうの様子が分かりますが、向こうはこちらの様子が分かりませんので、きっと不安でしょうね」
ティータの言う通り、俺の方はクイーンビーの感覚共有スキルのお陰で、ナビ子達の様子を知ることが出来る。
だけど、感覚共有は一方通行なので、ナビ子達側からはこちらの様子を知ることが出来ない。
「まぁカード化スキルが使える間は無事ってことだから、大丈夫だろ」
ナビ子の代理人スキルは俺からカード化スキルを借りているようなものだから、仮に俺が死ぬようなことがあったら、ナビ子はカード化スキルが使えなくなる。
つまり、ナビ子がカード化を使える間は、俺の無事が保証されているってわけだ。
「それより、ティータとラビットAにはナビ子の分まで頑張ってもらわないといけないから……しっかり頼むよ」
「きゅい!」
ラビットAは任せとけとばかりに返事する。
「分かりました。わたくしも……いえ、アタイも精一杯頑張らせていただき……頑張るよ!」
ティータは顔を真っ赤にしながら言う。
「いや、別にナビ子のマネをする必要はないんだが……」
ティータってこんなキャラだっけ?
なんだか一気に不安になってきた。
……本当に大丈夫かなぁ?




