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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第157話 伝書

「なぁナビ子。今の説明でちょっと気になることがあるんだけど……」


「なに?」


「ナビ子は魔素の生成量が異常だって言ってたけど、これがこの地域じゃ普通だってことはないか?」


 ナビ子は自然の力じゃ、この魔素の生成は無理だと言った。

 だけど……人工的だろうが、異常だろうが、ずっと昔からこうだった可能性はないだろうか?


「その可能性ももちろんあるよ。アタイだって、今までの経験を元に話しているだけだから、そういう土地があってもおかしくないもん」


 おいおい。否定しないのかよ。

 じゃあ今までの話はなんだったんだよ。


「だから、まずはこの魔素生成速度が以前からだったのか、それとも最近なのかを調べないと」


 調べる……か。


 俺は地図を開く。

 コカトリスやハンババの名前が書いてあるが、フォレストドラゴンを含む、今回俺が手に入れたモンスターの半分以上は書かれていない。

 有名どころだけ抑えて、残りはあえて書いていないのか。

 それとも、今回の異変で最近急に増えて、まだ把握してないだけなのか。


 一番手っ取り早いのは、昔の樹海の様子を聞くことだ。


「仕方がない。一旦戻ってケフィアに聞いてみるか」


 ここで戻るのは癪だけど、話を聞かないと判断できない。

 飛行モンスターに乗って帰ればすぐに戻ってこれるだろう。


「それだったら、帰らなくても丁度いいモンスターがいるよ!」


 はて? そんなモンスターがいたっけ?

 ナビ子はまだ俺が確認していないカードから1枚抜き取る。


「この子だよ!」


 俺はそのカードを受け取って確認する。

 カードにはウイングダブの死体と書かれていた。

 ダブ? どんなモンスターだろう?

 死体はイラストが表示されないから、分からないんだよなぁ。


 まぁこのカードだけなら、すぐに分解できる。


 ――――

 ウイングダブの羽根【素材】レア度:☆


 ウイングダブの羽根。

 武具の素材として重宝されるが、品質に大きな差があるため、取扱注意。

 ――――

 ――――

 ウイングダブの肉【食材】レア度:☆


 ウイングダブの肉。

 さっぱりして美味しい。

 生肉は非常に危険であるため、必ず調理すること。

 ――――

 ――――

 ウイングダブの魔石【素材】レア度:☆


 ウイングダブの魔石。

 ――――


 分解して手に入ったのはこれだけだ。

 うん。羽根があるから、とりあえず鳥ってことは分かった。


 俺はそのまま魔石をモンスターにする。


 ――――

 ウイングダブ

 レア度:☆☆

 固有スキル:風の素質、逃げ足、マーカー

 個別スキル:孤独、飽き性、根無し草


 バード系下級モンスター。

 群れで行動する渡り鳥モンスター。

 世界中に巣を作り、定期的に移動する。

 非常に大人しく、襲いかかってくることは殆どない。

 ――――


「……鳩じゃん」


 真っ白な体につぶらな瞳。

 どこをどう見ても、そこら辺の公園にいそうな、ただの鳩だった。


「ねっ。この子なら、お手紙を配達するのにピッタリじゃない?」


 伝書鳩ってか。

 確かにピッタリかもしれんが……。


「でも、あれって帰巣本能でやってるんだよな。……本当に大丈夫なのか?」

「クルッポー」


 俺はナビ子に尋ねたつもりだったが、返事はナビ子からではなかった。


「「えええっ!? しゃべったああああ!!!」」


 俺とナビ子は同時に驚く。


「な、ナビ子。ど、どういうことだよ!」


 俺が倒したわけじゃないのに、声を発するなんて……


「アタイに聞かれたって、分から……」


 何か心当たりがあるのか、ナビ子が固まった。


「あのね。この子はアタイが倒したの」


「ナビ子が?」


「うん。代理人スキルで命中補正と魔法を借りて……だからかも」


 そういえば、ナビ子は代理人スキルで自分も戦えるようになったと喜んでいたっけ。

 んで、この子がナビ子が初めて倒したモンスターか。


「今まではシュートが倒したモンスターだけが声を発するのかと思ったけど……」


「違ったと」


「アタイはシュートのナビゲーションだから一緒扱いなのか、単純にカードモンスターに倒されたら声を出せないのか。そこは検証の余地ありだね」


 なるほど。

 カードモンスターが倒したモンスターだけ話せない可能性か。


「……ティータ達は知らないかな?」


「知ってるかもだけど、休んだばかりだから可哀想だよ。それよりそこにも1人いるじゃない」


 ナビ子が模擬戦をしているホブAの方を見る。

 確かにホブAでもいいな。

 というわけで、ホブAを呼び出して聞いてみることにした。



 ****


「――カード化スキルの所持者だからだゴブ」


 タム・リンにやられて、ボロボロのホブAが答える。

 なるほど。カード化スキルを持っているからか。


「アタイは代理人スキルで借りてたからなんだね!」

「ゴブ」


 ホブAが頷く。


「そういうのって分かるものなのか?」


「感覚で分かるゴブ」


 感覚か。

 当事者にしか分からないことなんだろうな。


「もう戻っていいゴブか?」


 ……そんなにボロボロなのに、まだやる気なのか?


「いや、このウイングダブの通訳を頼めるか?」


 ついでにウイングダブが本当に伝書鳩の役割をできるか確かめてもらう。

 このウイングダブは、俺達がブルームの街にいた時点では仲間になっていない。

 街の場所やギルドの場所、ケフィアのことも知らないはずだ。

 そんなんで、手紙を届けられるのか?

 もっと別の……以前みたいにフェアリーやピクシーに頼んだほうが良くないか?

 まぁ妖精を伝言に頼むと大騒ぎになりそうだけど。

 というか、捕まりそうだ。


「――町の場所は分かると言っているゴブ。ギルドの場所とダークエルフの顔を教えれば問題ないゴブ」


 場所と顔を教えろって言ったって……


「一旦カードに戻して、イメージしながら召喚すれば問題ないよ!」


 ナビ子が補足してくれる。

 そっか。やって欲しいことをイメージして召喚すれば、伝わるんだった。

 俺は一旦ウイングダブを返還(リターン)し、ケフィアの顔とギルドの場所をイメージしながら解放(リリース)する。


「――記憶したから、いつでも行けるって言ってるゴブ」


 それなら試してみるか。

 ってことで、俺はケフィアに現状報告がてら、手紙を書くことにした。


 樹海で数百のモンスターを退治したこと。

 その中には、地図に載っていないような種類のモンスターも多数いたこと。


 単純に地図には一部のモンスターしか掲載してなかったのか。

 それとも、そのモンスターを知らなかったのか。

 そもそも、この樹海は以前からこんなにモンスターが多いのか。

 違うのなら、そのことを知っていたのか。

 知っているのなら、いつからモンスターが増え始めたのか。


 一応、地図に書いてなかったモンスターの名前をいくつか書いておくことにした。

 フォレストドラゴンに関しては……悩んだ末、一応書いておくことにした。

 もしブルーム山のドラゴンのように、何かを守っていたとかならマズいもんな。

 その場合は、何か考えないといけない。


 最後に、魔素が濃い場所に心当たりがありそうな場所を知らないか書いておく。


「よし、これをケフィアに届けて、返事を貰ってきてくれ」


 俺は手紙をウイングダブの足に結ぶ。


「クルックー!」


 ウイングダブは元気に鳴いて、飛びたった。


「とりあえず返事待ちかな」


 どのみち今は全員……ホブA以外は休息している。

 俺はゆっくり待つことにした。

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