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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第155話 ナビ子の戦利品

「きゅインドカッター!」


 ラビットAのステッキから風の刃が放たれ、ハンババの首が落ちる。


「きゅきゅ!」


 そして、ステッキをクルリと1回転させた後にビシッと決めポーズ。

 うん、かわいい。


 ラビットAだけじゃなく、ティータの方も既に終わっている。

 毒のブレスをオベロンがガードしている間に、ティータがサフォケイトの魔法を唱えていた。

 毒のブレスを吐いていたのに、空気がなくなったから、すぐに酸欠で苦しみながら絶命した。

 毒魔法じゃないのに、毒以上に体に悪いんだから、反則だよな。


 今はティータがオベロンに話しかけている。

 少なくとも、ここから見る感じでは、ティータの方が立場は上のようだ。

 召喚主だからか、元からなのか。

 本物のティターニアとオベロンは夫婦のはずだが、この2人は何か関係があるのかな?


 そして、一番苦戦していたホブAも何とか勝てたようだ。

 まぁホブAも苦戦というより、攻撃するタイミングを見計らっていただけのようだった。

 ハンババが攻撃の手を止めた隙をついて、剣で一刀両断にした。


「アタイ、3人を呼んでくるついでに、カードにしてくるね」


 そう言って、ナビ子はラビットA達の元へ向かっていった。


 ナビ子がいなくなったタイミングでメーブが俺に小声で話す。


「主……先程の話ですが、全てを鵜呑みになさらぬよう」


「どういうことだ? ナビ子が嘘をついてると?」


 そういえば、さっきのナビ子の説明とメーブに聞いた話とでは、大筋は同じでも、印象が随分違う。


「嘘ではありませんが、ナビ子どのは自分が悪くないように、リーダーを陥れて印象を操作しております」


 メーブはやはり、ラビットAよりもナビ子の方が悪いと思っているようだ。

 確かにさっきの話はナビ子に都合がよすぎる。

 誤魔化しはナビ子の十八番(おはこ)だし、幾分か盛っていると思う。

 だけど、メーブもナビ子には含みがあるようだし、ラビットAが傍若無人なのは今に始まったことじゃないからなぁ。


「まっ、今回は全員が悪かったってことで、お咎め無しにしよう」


 本当はラビットAにニンジン抜きの罰を与えるつもりだったが、それも止めてやろう。


「……主は本当に甘いんですから。優しいのは主の美点ですが、上に立つものは、少し厳しい方がよろしいですよ」


「ははっ、肝に命じておくよ」


 俺は軽い口調で答える。

 上とか下とか……もっと気軽に考えればいいのにね。



 ****


「きゅきゅ!」


 ラビットAが駆け足でやって来て、俺に抱きつく。


「きゅート、ごめんなさい」


 珍しくラビットAから謝ってくる。

 ナビ子に何か言われたかな?


「別にいいよ。だけど、次同じことしたら、1ヶ月ニンジン抜きだからな」

「きゅぴぇ!? もーぜったいしない!」


 よしよし。やっぱりニンジンは効果絶大だな。

 まぁ調子に乗るとすぐに忘れるだろうが……少なくとも、しばらくは大人しいだろう。


「そんなことより……あ~もう、せっかくの可愛い衣装が台無しじゃないか」

「きゅぅぅ……」


 樹海をひたすら歩き続けた上に、モンスターとも戦って、魔女っ子ワンピースがボロボロだ。

 まぁカードに戻れば、ちゃんと新品状態まで戻るけど。


「ほれ。どうせ、しばらくここから動かないから、カードの中で休んどけ」

「きゅ……」


 俺がそう言うと、ラビットAは大人しく頷く。

 実はかなり疲れているのかもしれないな。


 それに、ここから動かないのも事実だ。

 元々デザートトードやワイルドホーク、シャドービーが帰ってくる3日間で樹海を探索しようと思っていた。

 でも、図らずも今いるこの場所は、樹海のボスであるハンババがいた場所。

 つまり樹海の中心とも言える場所だと思う。

 わずか1日でここまで来たのなら、残る2日はここを拠点に探索すればいい。

 とりあえず、ラビットAや疲れている仲間は休ませて、次の探索に備えて欲しい。

 というか、俺だって歩きっぱなしだったから、多少は疲れている。


「きゅやすみなさい」


 俺はラビットAをカードに戻す。

 後は……ティータも出ずっぱりだな。


「ティータはどうする? ……ついでにそのオベロンも」


「正直申しますと、わたくしも殆ど魔力が残っておりませんので、休ませていただきたいと思っております。この人は……弾除けにでも使って頂ければと」


 最初からずっといる上に、召喚まで使っているんだから、魔力切れを起こして当然だ。

 にしても、オベロンを弾除けって……扱いひどくない?


 と、そういえばオベロンを登録(アナライズ)してなかった。

 登録(アナライズ)だけはしておかないと。


 ――――

 妖精王オベロン

 ????×????

 ……

 ――――


 やはり登録(アナライズ)は出来ても、レシピまでは不明か。

 だけど、ティータやメーブのことを考えると、王の素質みたいなスキルと男性妖精って感じかな。

 スキルさえ手に入れば、全く予想がつかないタム・リンよりは作りやすそうだ。


「主。妾も魔力を使いすぎたので、休ませていただきとうございます」


 メーブもタム・リン召喚で魔力を半分消費しているから、休みたい気持ちはわかるが……メーブまでいなくなると通訳もいなくなる。

 あっ、いやホブAがいるな。

 2人に比べると喋りは得意ではないが、話せないことはない。


「そっか……分かった」


 ってことで、メーブにもカードに戻ってもらうことにした。


「ティータと同じく、タム・リンは残しておきますゆえ、こき使って下さい」


 タム・リンは召喚時に説明があったように、半日は持つそうだ。

 合流するまでに数時間要したけど、まだ数時間はいるはずだ。

 タム・リンの強さは移動中に十分見せてもらったので、護衛として頑張ってもらおう。


 最終的にはホブAとミストだけが残ることになった。

 ミストはまだ元気だし、ホブAもまだまだやれそうだ。


「ボス。そこの御仁に稽古をつけてもらってもいいゴブか?」


 ホブAがタム・リンを横目に俺に確認を取る。


「見張りの仕事も忘れずにこなすんだったら、許可する」


 まぁナビ子もいるし、モンスターの襲撃は問題ないだろう。

 2人はさっきまでハンババと戦っていた場所まで移動し、模擬戦を開始する。

 ミストは2人が無茶をしないように近くで見守っている。

 結局まともに見張りをしているのはオベロンだけか。

 まぁいいけど。


「さてナビ子。カードを見せてもらおうか」


 ハンババ以外にも、ここに来るまでにたんまりカードを手に入れているはずだ。


「分解はしてないから、死体ばっかだけど……」


 そう言いながら、ナビ子はさっきのハンババのカード3枚と、別途1枚のカードを取り出す。

 ナビ子がそのカードを解放(リリース)すると……カードの束が出てきた。


「……もしかして、カードをカード化したのか?」


「うん。そうだよ」


 そんな事ができたのか。

 って、死体を合わせて1枚のカードに出来るんだから、カードの束だってカードに出来るか。


 まぁ俺には図鑑があるから、ほとんど使うことはないか。


「はい、これ」


 俺はカードを受け取り、1枚ずつ図鑑に挟んでいく。


 キラーカマーの死体

 グリズリーの死体

 グリポンの死体

 コカトリスの死体

 サンドマンの死体

 ツリーマンの死体

 バルーンフェアリーの死体

 マンティコアの死体

 ラフレシアの死体


 なんか気になるモンスターばかりだな。

 グリポンって……グリフォンとは違う生き物なのかな?

 それにコカトリスとか、マンティコアとか……実際に生きている状態で見てみたかったな。


 この後も1枚1枚確認しながら図鑑へ挟んでいく。


「えっ……」


 そのカードが見えた時、俺は思わず固まってしまった。

 そのカードにはフォレストドラゴンの死体と書かれていた。

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