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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第151話 妖精騎士

 俺は急いでナビ子を追いかけることにした。


「メーブ。ナビ子達はどのくらい先にいるんだ?」


「このまま真っ直ぐ……5キロほど先でしょうか」


 5キロ先か。

 かなり進んでいるな。

 平地なら1時間も掛からないが、足場も視界も悪い夜の樹海だと、どれくらい時間が掛かるか。

 しかも、ナビ子も止まっているわけでなく、どんどん先に進んでいるそうだ。

 ったく。夜くらい行動を控えろって話だ。


 ちなみにポシェットに入れていた、よく使うモンスターカードとして、ホブAなどの古参……じゃなくて、幹部だったな。

 幹部のカードも結構持っていかれた。

 残っているのは図鑑に入れていたカードだけ。


「主。夜のモンスターは凶暴と聞きます。お気をつけ下さい」


 ナビ子達がモンスターを倒しながら進んでいるんだから、同じ場所を進んでいたらモンスターは出てこない……って言いたいが、ナビ子達が行ったのは何時間も前。

 しかも、昼間の移動で、今は夜。

 出現するモンスターも、夜行性のモンスターへと変わっている。


 移動中はモンスターの襲撃を受けると考えた方が良さそうだ。

 そしてメーブの言う通り、夜行性のモンスターは危険ってイメージがある。


 気配察知のスキルを持つナビ子がいなくて、暗くて視界も悪いから、油断していたらモンスターに奇襲を受けてしまうだろう。


 う~ん。

 改めてナビ子に頼りっきりだったと実感する。


 とりあえず、図鑑からダークネスアウルとナイトホークを召喚する。


 2羽ならスキルの夜目があるから、夜でもハッキリと敵を捉えることができる。

 ついでに気配察知のスキルを覚えさせ、周囲を探らせれば、モンスターから奇襲を受けることはないだろう。


 それから、戦闘要員がメーブとミストだけじゃ少し不安だな。

 人数的にはラビットAとティータだった昼と変わらないんだが……なんのかんの言っても、ラビットAって戦力的には頼りになるんだよなぁ。


 う~ん。誰を呼び出すか。

 樹海ってことを考えると、蜘蛛系のアラクネか土蜘蛛か?

 しかし、両方ともデカいから、急いで追いかけるのは向いていない。

 移動を考えると、飛行系で、小さめ、そして強いモンスターが望ましい。


 その条件に一番合うのはナード達――ビーナイトなんだけど、残念ながらナード達はナビ子の手にある。

 ここは量産したピクシーとフェアリーを召喚するべきか。


 と、そこでメーブから声が掛かる。


「主。お許し頂けるのであれば、護衛として妾の守護騎士を召喚したいのですが」


 そういえば、ティータとメーブには召喚のスキルがあったな。

 確かティータは妖精王で、メーブは妖精騎士召喚だった。


 うん。興味があるし、是非ともお願いしたいところだ。


「詳しく説明してくれ」


 合成祭りの時は、ナビ子をからかった罪で、カードに戻したから、詳細は聞けなかった。

 だから、後日話を聞こうとしたんだが、ティータとメーブには、実際に使うまでお楽しみにって断られた。

 騎士っていうくらいだから、ピクシーやフェアリーよりも強そうではある。


「召喚には妾の魔力を半分消費します。一度の召喚で半日程度は活動できます。もちろん、やられればその時点で消滅してしまいますが。それから、一度召喚しましたら、次に召喚できるようになるまで1日の休養を要します」


 う~ん。

 一度召喚したら、次に召喚するまで、1日必要なのか。

 いざってときに使えなくなるのは嫌だなぁ。


「カード化のクールタイム短縮を使っても駄目なのか?」


 あれも1日1回だけだが、完全に回復することが出来る。


「妾の魔力の問題ではなく、騎士の魂の問題ですので、残念ながら難しいかと」


 なるほど。

 メーブじゃなくて、召喚先の問題か。

 召喚先は俺のカードじゃないから、メーブを回復させても無駄ってことか。


「……うん。じゃあ召喚してくれ」


 別にこの後1日使えなくなっても、今よりも困る場面はないだろう。

 とりあえずナビ子達に追いつきさえすれば、後はどうとでもなるはずだ。


「では召喚します」


 メーブはそう言うと、召喚の準備に入る。

 メーブが魔力を練ると、地面に魔法陣が浮かび上がる。

 その魔法陣が光ったかと思うと、次の瞬間……。


「はっ? ちょ、ちょっと待って!?」


 俺は思わずそう叫んでしまった。

 魔法陣から現れたのは……エメラルドグリーンの鎧とマントを身に着け、真紅の槍を持った、人間の姿をしたイケメンだった。

 身長は180以上ありそうだ。俺よりもかなり高い。

 ……妖精の騎士だよね?

 俺はてっきり妖精サイズの騎士が現れると思ったんだけど。


「主。こちらが妖精の騎士タム・リンでございます。残念ながら召喚ですので自我はありませんが、戦力になることは保証いたします」


 タム・リン!?

 ゲームで聞いたことある。

 確か元々人間だったけど、妖精女王にさらわれて、妖精の国で森の番人をしていたとか、そんな感じだったはず。


「ねぇ。タム・リンってさ。カードに出来ないかな?」


「主……」


 メーブが呆れたような顔をする。


「このタム・リンは、妾の魔力で一時的に具現化しただけの存在です。元々ここには存在しておりませんし、体内に魔石もなければ、肉体もございません。諦めてくださいまし」


 うう……やっぱり無理か。

 じゃあ、せめて登録(アナライズ)だけでも出来ないものか。

 同じ召喚のリザードマンは登録(アナライズ)出来たんだから、タム・リンだって登録できるはず。


 俺はタム・リンに向かって登録(アナライズ)してみる。

 そして早速図鑑の確認。


 ――――

 妖精騎士タム・リン


 ????×????

 ――――


 ……登録(アナライズ)できちゃったよ。

 しかも合成元は分からないけど、合成で作れるし。

 どんな素材で作れるんだろう?

 妖精騎士だから妖精と……あっ、でも元は人間だから、妖精は関係ない?

 いやいや、人間ならそもそもモンスター図鑑に登録はされない。

 う~ん。想像つかないな。


「主。考え込んでいる余裕はないはずですが?」


 はっ!? そうだった。

 急いで追いかけなくちゃいけないのに、また時間を使うところだった。


「ではタム・リンを先頭にナビ子どのを追いかけます。タム・リンは森で生活しておりましたし、移動に差し障りはございません」


 それは頼もしいな。

 俺たちはタム・リンを先頭に、急いでナビ子を追いかけることにした。

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