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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第146話 依頼内容

「依頼は最近頻発している地響きと、モンスターが平地に出現するようになった原因の調査をお願いする」


 うん。依頼内容はウチのギルマスに聞いていた内容と同じだな。


「少し聞きたいんですが、いいですか?」


「答えられる範囲でいいなら答えるよ」


 別に隠すつもりはないようなので、俺は色々と質問してみることにした。


「その異変っていつから始まったんですか?」


「はっきりと異変に気づいたのは1ヶ月前からかだね。地響きはそれより前から不審に感じたが、山のモンスターが出現し始めたのが1ヶ月前からだよ」


 モンスターが山から平地に出始めたのが1ヶ月前と。


「それより前は平地に出現することはなかったんですか?」


「間に樹海があるからね。山のモンスターが出現することはなかったよ」


「えっ!? 平地に現れているのは山のモンスターなんですか?」


 というか、俺の中では樹海と山でモンスターは一緒と考えていたが……環境が違うんだから、棲息しているモンスターが違うのは当たり前か。

 そして、平地に出現するのは樹海のモンスターではなく、山のモンスターと。


「当たり前だよ。山のモンスターが出るから異変なんだ」


「ちなみに樹海のモンスターは現れないんですか?」


「もちろん樹海のモンスターも出てくることもあるさ。でも、そっちはそこまで珍しいことでもないからね」


 人が通りかかった際に襲いかかったり、迷って出てきたり、樹海探索のモンスターに追われて逃げてきたりと、そこまでおかしなことではないらしい。

 しかし、山のモンスターが樹海を抜けて現れることは殆どないらしい。


「原因は全く分からないんですか?」


「分からないね」


「考えられる可能性は?」


「そりゃいくつかある。例えば、強力なモンスターが出現した可能性だね」


「強力なモンスター……縄張りを追われて逃げてきたってことですか?」


 俺はゴブリンキングが誕生した時のホブAを思い出して聞いてみた。


「その可能性もあるが、モンスターが縄張りを拡大しようと行動範囲を拡げている可能性も考えられる。モンスターは1体で出現することは少なく、必ず数体で活動するからね」


 要するに偵察ってことか?

 これもゴブリンキングがやってたよな。

 今回のモンスターはゴブリンキングじゃないけど、組織立って行動する場合は似たようなものなのかもしれない。


「ただ、強力なモンスターが誕生した情報は聞いてないからね。確信は持てないんだよ」


 現時点でギルドには見たことのないモンスターの証言はないそうだ。

 まぁ殆どの冒険者は樹海までしか探索しない。

 樹海も奥まで入らない冒険者が殆どだそうだ。

 そんな状況で目撃証言がある筈が無いか。


「勿論、山まで探索に行く上級冒険者もいないわけではないが、彼らも山の中腹止まりだからね。絶対に奥には入らない」


「……ドラゴンですか?」


「ああ。知っての通り、ブルーム山にはドラゴンが棲んでいる。だから、命知らず以外は絶対に山には登らないんだよ。ドラゴンの逆鱗に触れたくないからね」


「……今回の異変にドラゴンが関係している可能性は?」


「そりゃあ関わっているだろうよ」


 ……断言しちゃうんだ。


「だけど、どんな関わり方をしているかは分からないね。ドラゴン自体は関与していない可能性すらある」


「どういうことです?」


「さっき説明した通りだよ。強力なモンスターが出現したけど、ドラゴンに恐れを抱いて、別の縄張りを探している可能性さ」


 なるほど。

 縄張りを追われたのがその強力なモンスターの可能性か。


「それから……考えたくはないが、ドラゴン自身が関与している場合。例えば、強力なモンスターとドラゴンが縄張り争いをしていて、モンスターが逃げ出したり……もしくは、モンスターじゃなく、どこかの馬鹿がドラゴンにちょっかいをかけて、ドラゴンの逆鱗に触れてドラゴンが暴れている場合だね」


 確かにそれは考えたくないな。


「最後に……これは殆ど考えられないが、ドラゴンに異変があった場合だね。手負いで苦しんでいるとか、寿命で死んだとか……そうなると大変だよ」


「別にドラゴンが暴れているわけじゃないのに、大変なんですか?」


「そりゃあそうさ。ドラゴンはあの火山のエネルギーを糧にしているからね。ドラゴンが火山のエネルギーを食わなくなったら、火山が噴火しちまう」


 ウチのギルマスはドラゴンが噴火を抑えているって言ってたけど、そういう事情があったのか。

 それが本当なら、確かにドラゴンがいなくなったらヤバい。


「そして残念なことに、そのドラゴンに異変があった可能性が一番高いんだよ」


「……その理由を尋ねても?」


「地響きだよ。この辺りじゃ昔から地響きのことをドラゴンの寝返りと呼んでいるくらいありふれているんだけど、最近はその頻度が多くてね」


「ドラゴンの寝返り?」


 そんなことわざみたいに言われても……


「ははっ。ピンとこないかい? この辺りじゃ昔から地響きは噴火の予兆と言われているんだよ」


「それは分かりますけど……」


「だけどドラゴンが火山エネルギーを食べている間は噴火しない。だから地響きは、ドラゴンが寝ていてエネルギーを吸収しない間に起きているって伝わっているんだよ」


 だから寝返りか。

 こういう場所特有の言い伝えって面白いよな。


「まぁ寝返りはともかく、ドラゴンが火山エネルギーを食べて噴火を抑えているのは事実なんだよ。それから地響きが噴火の予兆なのもね」


「でも元から頻繁に揺れていたんですよね?」


「頻繁と言っても、今までも月に1、2回だね。だけどここ最近はほぼ毎日……多い時は1日に2、3回は揺れているね」


 月1、2から毎日……確かに多すぎる。


「他の要因は考えられませんか? 例えば地中にグランドワームが棲み着いたとか?」


 グランドワームの図鑑説明文にも移動で地響きする的なことが書かれてあった。

 グランドワームが火山近くで移動して、その揺れに驚いてモンスターが山から下りてくる。

 理屈としては間違ってないと思うけど……


「もちろんその可能性もある。だからこそ、調査を頼んでいるんだよ」


 そっか。それを俺が調査するんだった。


「たとえグランドワームだとしても、これだけ揺れるなら、退治しないとドラゴンが無事でも噴火する可能性があるからね。しっかりと調査を頼んだよ」


 う~ん。本当に俺に調査なんて出来るのか?

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[一言] 目撃証言があるはずがないか。  →目撃証言がある筈が無いか。
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