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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第144話 到着

 ソニックイーグルに乗り、空の旅を再開する。


 コンテナを持ってないから、ライラネートを出発した時よりも、さらに速い。

 ……らしいのだが、魔力で覆われて風すら感じない。

 景色も空と曇しかないから、昨日との違いはほとんど分からない。


「このペースですと、昼過ぎには到着するそうです」


 通訳係のティータが言う。

 やはり言葉が分かるって素晴らしい。


「昨日1日ゆっくり休んで英気を養ったから、元気一杯のようですね」


 考えてみたら、このソニックイーグルは一晩かけてライラネートに来てたんだよな。

 そして、すぐに俺を運んで移動。

 疲れていたに決まっている。


 昨日、俺たちが狩りをしている間、ソニックイーグルには自由にさせていたけど、十分に休めたようだ。


「とりあえずこのソニックイーグルを作るところから始めるか」


 さっき図鑑を確認した鳥モンスター。

 コウモリは別にして、ワイルド3種とナイトホークとロック鳥。

 種類はあまり多くないけど、魔石の数はたくさんある。

 本当にあの山の鳥モンスターを狩りつくしたんじゃないかと思うくらいだ。

 まぁ俺が倒したのはビーナイトが生け捕りにしたロック鳥のみだけど。


 ソニックイーグルのレシピは隼系モンスターと中級風魔法。

 ……隼系?


「何でイーグルなのに、鷲系じゃないんだ?」


 隼ならファルコンだろ。


「多分、猛禽類なら何でもいいんだよきっと」


 何でもいいって……


「そんなに適当じゃないだろ」


「いやいや、そもそも鷹や鷲の定義って、大きさだけって話だから、多分一番速い隼がレシピの一番上に出ただけだよきっと」


 へぇ、大きさの違いで鷹とか鷲とか区別しているのか。

 なら、確かにどのモンスターからでもソニックイーグルは誕生しそうだ。

 いや、それならソニックファルコンとか、ソニックホークとかもいるんじゃね?

 どのモンスターを使っても風魔法の中級で合成すればってとこだろう。


 ちょっと試したいけど……空の上での合成は危険だな。

 合成だけならともかく、確かめるために解放(リリース)ができない。

 どうせあと数時間の辛抱だから、それまで合成は待つことにした。



 ****


「ピィィ!」

「どうやら近くまで来たようです」


 ソニックイーグルの鳴き声をティータが通訳する。

 そっか。本当に早かったな。


「じゃあアタイはまたポケットの中だね」


 着陸時には少し揺れるから、ナビ子が俺のポケットに収まる。

 着陸も今回で3回目なので、手慣れたものだ。


「ではわたくしも失礼して……」


 ティータは俺の背にしがみつく。

 流石にナビ子より大きいティータは俺のポケットには収まらなかった。

 しかし……小さい妖精と言えども、美しい女性に背中からしがみつかれると、少しドキッとする。


 俺たちの準備が完了したことを確認すると、ソニックイーグルは地上へと降下していく。

 少し揺れるが、流石に俺も慣れてきたので、景色を見る余裕もある。

 ……少し離れた場所に街が見える。あそこが目的の街かな?

 そして、その先には山が――あれがブルーム山か。

 かなり大きな山だな。

 富士山と比べても遜色ないんじゃないか?

 ……まぁ九州育ちの俺は本物の富士山なんか知らないけど。

 麓には富士の樹海のように森が拡がっている。

 この森からモンスターがやって来ているのか?


 上空から見た感じ、今の所、噴火しそうな気配はない。


「はい。無事とうちゃく~っと」

「お疲れさまでした」


 ナビ子が勢いよくポケットから飛び出す。

 同時にティータも背中から離れる。

 本当、対称的な2人だな。


「まだ到着じゃないぞ。少し歩かないと」


 門までは歩いて30分くらいか?

 少し遠いけど、コンテナをカードから戻さないといけないから、人通りの少ない場所に降りる必要があった。


 俺はコンテナを解放(リリース)する。

 ……もしかしたら、カードになっている間に魔法の効果が切れているかも? と心配したがどうやら杞憂だったようだ。

 コンテナは出発時と変わらずに、重さを感じない。


「無属性の重力魔法だっけ? この魔法も便利だよなぁ」


 なんとかして手に入らないだろうか?

 帰ったらアザレアに聞いてみよう。


「んで、ソニックイーグルは本当にここでいいのか?」


 俺はティータに尋ねる。

 ティータによると、ソニックイーグルとはここでお別れらしい。


「ええ。ここからすぐ近くに、巣があるそうです」


 流石にこの巨体じゃ、街中で飼えないか。


「しかし、ギルマスにはギルドでテイマーに返すようにって言われてたんだけど……」

「ピィィ……」


 俺がそう言うと、ソニックイーグルはティータに話しかける。

 話を聞き終わったティータはソニックイーグルから羽根を1枚抜く。


「こちらの羽根が証明となるそうです」


 証明……か。


「そっか。じゃあここでお別れだ。助かったよ」


 本人がそう言うなら大丈夫だろ。


「ピィィ!」


 ソニックイーグルはひと鳴きして飛び立つ。

 初めて乗った時は怖いと思ったし、たった1日だったけど、もう乗れないとなると、少し寂しいな。


「ではわたくしはカードに戻らせていただきます」


「ああ、助かったよ」


「マスターのお役に立てて何よりです」


 ニコリとティータが微笑む。

 どこかのなんちゃって妖精と違い、街中をふらついていたら駄目なことは理解している。

 それに、ティータは妖精女王だから、もしかしたら容姿を知っている人がいるかも知れない。

 妖精女王がこんなところにいるってなったら、それこそ大騒ぎになってしまうもんな。


 ティータがカードに戻ると、残ったのは俺とナビ子だけ。

 結局いつもどおりだ。


「さっ、じゃあ街へ行こうよ!」


「そうだな」


 ナビ子の元気の良い掛け声とともに、俺は街へ向かった。

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