第143話 魔水晶
ラビットAが狩りに戻った後も、ちらほらと仲間が戦果を報告しに戻ってきた。
「……これ、俺がトドメを刺せと?」
ビーナイトが頷く。
以前のように右に移動するんじゃなく、人型っぽい骨格になったので、首が使えるようになっていた。
そのビーナイトだが、ロック鳥を生け捕ってきた。
3人一緒だとはいえ、1メートルにも満たない身体で全長10メートルくらいありそうな鳥を運んでいる光景は、唖然としてしまった。
「というか、ロック鳥ってこんなに大きかったんだな」
デカいと思っていたソニックイーグルよりもさらに倍以上大きい。
これなら乗れそうではあるが、流石にデカすぎるよなぁ。
ソニックイーグルか、それよりも小さいくらいで丁度いい。
「ほら、せっかくナード達が生け捕りにしてきたんだから、早く倒しちゃわないと!」
ビーナイトの3人はそれぞれナード、ニード、ネードと名付けた。
この3人が生け捕りにした理由は分かる。
俺がトドメを刺すことにより、カードモンスターにした際に、声を発することが出来るようになるからだろう。
正直モンスターといえども、身動きができない状態で止めを刺すだけってのは気が引けるが……俺は申し訳ないと思いながらベレッタで急所を撃ち抜いた。
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「ピィィィィ!!」
甲高い鳴き声が辺り一面に響き渡る。
非常にうるさいが、初めて声をあげるんだから仕方がない。
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ロック鳥
レア度:☆☆
固有スキル:怪音、石化攻撃
個別スキル:脚力強化
巨大な怪鳥。
最も巨大な鳥類モンスター。
悲鳴にも似た鳴き声は、聴いたものを恐怖に陥れ、再起不能にする。
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うん。
俺のモンスターだから敵意はないが、敵意があったら、今の鳴き声でどうにかなりそうなのはよく分かる。
「よし、無事に声が出せるモンスターになったようだな」
「ピィ」
ロック鳥は小さめに頷く。
うん。この程度なら全然問題ない。
「じゃあ早速働いてもらいたいが、大丈夫か?」
「ピィ」
うん。いい子だ。
このロック鳥に他のモンスターの場所を教えてもらう。
それが一番効率がいいもんな。
もちろん案内を受けるのは俺ではなくナード達ビーナイト。
さて、明日の朝までにどれだけ戦果を上げてくれるかな。
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「シュートはね。もっとアタイに感謝してもいいと思うの!」
「うう……まったく面目ない」
日頃から感謝はしているが、今回は特に頭が上がらない。
何故なら仲間たちが倒してきたモンスター達を、俺が寝落ちしている間に、ナビ子が代理人スキルを使用して、カード化と分解をやってくれていた。
俺が起きた時にはすでに全員が帰ってきていて、処理も全て終わっていた。
「じゃあ時間もないし、さっさと確認するよ」
今日中にブルーム山付近の街までたどり着かなくてはならない。
俺は急いで戦果を確認することにした。
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ワイルドホーク
レア度:☆
固有スキル:凶暴化、鷹の目
鳥系下級モンスター。
鷹がモンスター化した存在。
鋭い目でどんな獲物も見逃さない。
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ワイルドイーグル
レア度:☆
固有スキル:凶暴化、鉤爪
鳥系下級モンスター。
鷲がモンスター化した存在。
鋭い爪で自分より巨体のモンスターすら獲物として捕食する。
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ワイルドファルコン
レア度:☆
固有スキル:凶暴化、風読み
鳥系下級モンスター。
隼がモンスター化した存在。
鳥類の中でもトップクラスのスピードで、どんな獲物も逃さない。
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ワイルドバット
レア度:☆
固有スキル:凶暴化、超音波
コウモリ系下級モンスター。
コウモリがモンスター化した存在。
超音波を放つことにより、暗闇でも獲物を見つけることが出来る。
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まずは定番のワイルド系モンスター。
予想通り、猛禽類モンスターが勢揃いした。
……1種類だけ、別のモンスターもいるようだけど。
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ナイトホーク
レア度:☆☆
固有スキル:鷹の目、夜目
個別スキル:月の光
鳥系モンスター。
夜行性の鷹モンスター。
夜でもその目は獲物を見逃さない。
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おそらくワイルドホークの進化系だろう。
固有スキルも持っているようだ。
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ジャイアントバット
レア度:☆☆
固有スキル:超音波、感覚妨害
個別スキル:気配察知
コウモリ系モンスター。
巨体から繰り出される超音波は獲物の感覚を狂わせる。
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バンパイアバット
レア度:☆☆☆
固有スキル:超音波、吸血、再生
個別スキル:眷属化
コウモリ系中級モンスター。
吸血することにより、獲物から生命エネルギーを吸い取る。
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ヒュプノスバット
レア度:☆☆☆
固有スキル:超音波、感覚破壊、催眠
コウモリ系中級モンスター。
感覚を狂わすだけでなく、惑わし同士討ちをさせる。
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「何でこんなにコウモリだけ種類が多いんだよ!!」
いや、原因は分かっている。
ラビットAが張り切った結果なのだろう。
しかし……本当にどこから見つけてきたのやら。
「あのね。メーブに聞いたけど、隠れた場所に洞窟があってね。そこで捕まえてきたみたいなの」
「へぇ。メーブも一緒にいたのか」
「うん。メーブが暗いところを探していたら、ラビットAが洞窟に案内してくれたって」
ラビットAはどうやってその洞窟を……と思ったけど、ラビットAは嗅覚のスキルを持っているから、探しものは得意だったな。
んで、洞窟でコウモリ狩りをしていたと。
メーブに詳しい話を聞いてみたいけど、メーブは朝が苦手だし、ゆっくり話を聞く時間はないもんなぁ。
「あのね。そこでメーブがこれを見つけてきたんだけど……」
ナビ子がアイテム図鑑を開く。
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魔水晶【鉱石】レア度:☆☆☆☆
魔力が込められた不思議な水晶。
周囲の魔力を吸収する。
魔素濃度が高く、光の届かない場所でしか見つからない。
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「えっ、なにこれ凄い」
星4の素材なんて、アンブロシアの枝くらいしか知らないぞ。
しかも鉱石……色々と使えそうだ。
「これってどれくらいあるんだ?」
「洞窟には、いっぱいあったみたいだけど、カードはこれだけしかないよ」
「えっ!? なんで……」
いっぱいあったのなら、たくさん持って帰ってほしかったのに……。
「ほら、説明文にもあるでしょ。周囲の魔力を吸収するって。触るだけで魔力が無くなるから、持って帰れなかったんだって。これだって、メーブが何とか頑張って一つだけ持ち帰ったんだよ」
カードモンスターは魔力の塊みたいな存在だから、近寄ることも困難だったようだ。
「だから洞窟にもモンスターはコウモリ以外いなかったんだって。普通だったら色々いてもおかしくないのにね」
逆になんでコウモリは無事なんだ?
それに獲物もいなかったらコウモリだって困るだろうに。
「今からその洞窟の調査は……」
「流石にそんな時間はないよ」
だよなぁ。
でも魔水晶はもっと欲しい。
多分俺が行けば……というより、その場でカードにすれば簡単に手に入れられるはずだ。
「……仕方がない。帰りにまた来ることにしよう」
洞窟は隠れた場所にあるって言うし、こんな場所に冒険者も来ないだろうから、後ででも十分に回収できるだろう。
ナビ子にこの場所を覚えてもらって、俺はこの山を後にした。




