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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第4章 片翼のドラゴン
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第138話 ブルーム山の事情

「ドラゴンの棲む山だってぇ!?」


 俺は思わず大声を出す。

 ドラゴン……数多のモンスターの中で最も有名で、最も強いモンスター。

 ゲームで育った人間にとっては憧れのモンスターだと言えるだろう。


 俺としても、この世界で是非とも会ってみたいモンスターナンバーワンだ。

 しかし……


「それってさ。かなり危険なんじゃないか?」


 だってドラゴンだぞ。

 ゴブリンの比じゃないくらい強いに決まっている。


「実際にドラゴンに遭遇すればな。だが、実際の目撃情報はそんなに多くない」


 ……目撃情報が少ないってことは、少なくとも、いることは確かなんじゃないのか?


「それに、別にドラゴン退治が依頼ではない。あくまでもブルーム山の調査が依頼内容だ」


「その調査って何すればいいんだ?」


「最近山がおかしいと、ブルーム山の近くにある支援ギルドから報告があった」


 そういえば、支援ギルド同士で電話みたいなやり取りが出来るって言ってたな。


「どんな風におかしいんだ?」


「普段は山から出ないモンスターが平地に現れたり、小さな地響きが多発したりだ」


「山からモンスターが下りて、地響きが……って!?」


 何となく予想がつく。


「恐らく噴火の兆候であろう」


 やっぱり。


「そんなの調査よりも、避難する準備が先だろ!!」


 調査なんて暢気なことを言っている場合じゃない!


「慌てるな。兆候があったからといって、今すぐに噴火するか分からん。明日かも知れんし、1ヶ月後かもしれん。1年後……いや、実は噴火の兆候ではないのかもしれん」


「しかし、そんなことを言って、もし間に合わなかったら……」


「貴様はそう言うが、その場に住む者にとってはそう簡単にいかん。いつ噴火するか分からん状態で、いつまで避難し続ければいい? その間の生活はどうする? 畑は? 家畜は? 実際に噴火をすると確定できん限り、そこに住む者が逃げることはない」


 まぁ日本だって、避難しろって言っても、ウチは大丈夫だと思うと避難しない人は多いらしいからな。

 予想だけじゃ動かないってことか。


「……だから調査が必要なのか」


「そうだ。噴火をするのか、それとも他の要因があるのか。その調査を頼みたい」


「地元の冒険者はどうなんだ?」


「地元の冒険者は山から下りてきたモンスターの討伐をせねばならん」


「そんなに多くのモンスターが山から下りてきたの?」


「いや、現時点ではそこまで多くはないようだが、大量に発生した場合に備えて、防衛の準備は万全にせねばならん」


 そこに気をつけるなら、やっぱり避難する準備をしたほうがいいと思うけど……


「ちなみにどんなモンスターがいるんだ?」


「蛇や蜥蜴など、爬虫類型モンスターが多いな。当然属性は火が多い」


 なるほど。

 流石はドラゴンが棲む山だ。

 それっぽい感じのモンスターが多いんだな。


「ちなみにドラゴンはどんな種類なんだ?」


 ドラゴンと言っても形は様々だ。

 定番の恐竜のようなドレイクタイプや、ワイバーンのような飛竜タイプ。

 願いを叶えてくれそうな細長い龍タイプに、複数の頭を持つヒュドラタイプ。

 他にも蛇や蜥蜴、ワームが巨大化したようなのもいるだろう。


 外皮だって硬い鱗タイプ、毛並みのあるモフモフタイプ、ウナギのようなヌルヌルタイプだっていそうだ。


「種族までは分からんが、目撃証言では翼のあるドレイクタイプのドラゴンだそうだ」


 翼のあるドレイクタイプか。

 一番ありふれた形のドラゴンっぽいな。


「正直ドラゴンを相手にするのは止めておけ」


「……やっぱり強いの?」


「そりゃあ強いだろ。だが、それだけでなく、昔からそのドラゴンが噴火を抑えていると言い伝えられておる。もしそのドラゴンを倒した場合、本当に噴火してしまうかもしれん」


 ……そんなこと言われたら、遭遇しても倒せないじゃん。

 でもまぁ爬虫類系モンスターを手に入れるチャンスだし……本当にドラゴンが欲しかったら、そこから合成で作ればいいか。


「ちなみに場所はどこだ? ブルーム山なんて、このあたりの地図には載ってなかったと思うけど?」


「そりゃあここら辺の地図には載ってないだろうな。ここからなら、馬車で1ヶ月以上掛かる」


「1ヶ月!? そりゃあ遠すぎるだろ!」


 それから調査とかいくらなんでも遅すぎるだろ。


「心配するな。依頼を受けるなら、最速で最寄りの支援ギルドまで届けてやる」


「……どうやって?」


 俺がそう尋ねるとギルマスがニヤリと笑った。


「空を飛んでだ」

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