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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第3章 ライラネートでの日常
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第136話 3度目の帰還

 ここでの話は俺とアズリアだけの秘密。

 お互いに外では絶対に話さないことにした。


「この話をするのはこの部屋のみということで。アゼにも話しません」


「……毎回この部屋なのか?」


 他言無用なのは良いとしても、毎回このラブホのような場所で話し合うのは……


「先程も言いましたが、この部屋なら外から聞かれる心配はございません」


 盗聴や防音対策はバッチリだと言っていたからそれは分かるけど……話す内容が内容なので、仕方がないか。


「ナビ子は毎月数日間だけ報告のために日本に帰る。……その時にしかここには来れないと思う」


「あら、別に店に遊びに来ると言えば付いてこないのではないですか?」


「……それだと俺の立場が悪くなるんだ」


 別に浮気とかじゃないんだし、俺は一向に構わないと思うんだけど、うるさい奴らが若干名いるからなぁ。

 それにナビ子のお土産が貰えなくなるのは困る。

 敵かどうかは分からないけど、貰えるものは貰いたいし、ビールは俺の生命線だ。


「そうだ! ファーレン商会で、ビールが作れないかな?」


「ビールは先日のパーティーで頂いたお酒ですよね? 作れるのなら喜んで作らせていただきたいのですが……と言いますか、もうお互い全てをさらけ出したのですし、日本の知識をファーレン商会で存分に発揮したいとは思いませんか?」


 アズリアが商人の顔をする。

 同じ真剣な表情でも、世界の危機と商売とではこうも違うんだな。


 とはいえ、確かにもう隠す必要はないんだから、ビールだけじゃなく、石鹸とかシャンプーとか……ファーレン商会に色々と試してもらっても良いかもしれない。

 問題は……俺に知識がないことだ。

 ビールは麦から作るってことは知ってるけど、作り方なんかさっぱり分からない。

 ……今度ナビ子に専門書でも持ってきてもらおうかな。


「……またアザレアが文句言いそうだな」


 アズリアとだけこんな風にやり取りしていたら、協力者として蔑ろにしていませんか! とか言い出しそうだ。


「ふふっ姉さんって意外と嫉妬深いですからね」


 今までボッチだったから、繋がりが欲しいんだろうなぁ。


「そういえば……アザレアは何も知らないのか? 当時は一緒に住んでいたんだろ?」


 神眼スキルを継承した時には、その場にはいなかったようだけど、同じ屋根の下と言っていた。


 だが、今の話にはアザレアは全く登場していない。

 そもそもアザレア自身が日本に関して何も知らなそうだった。

 観察眼すら神が与え給うたとか言ってたくらいだし。

 というか、3人が同時に神眼スキルを手に入れたのにも拘わらず、そこに何も違和感を覚えないとか、本当に研究者か?


 アゼリアには解析眼で協力してもらっているようだが、観察眼にも手伝ってもらえばもっと作業が捗ったんじゃないのか?


「姉さんには何も伝えていません。当時の姉さんは色々と大変でしたから……これ以上迷惑は掛けられませんでした」


 ……そういえば、親とは絶縁状態って話だったな。

 この時点で親とは暮らしてないようだし、アズリアはまだ学生……商人にもなっていないから、アザレアが一人で生計を立てていたとしたら?

 まぁ趣味の研究もしていたようだが……アザレアも色々とあったようだ。


「だから姉さんには、こんな荒唐無稽な話なんか知らずに、ただ普通に生活して、幸せになってくれるのが私の望みです」


「そっか……」


 俺はそれ以上何も言わなかった。

 だけど……アズリアの気持ちは分かるけど、アザレアは話して欲しいんじゃないかなぁ。



 ****


「ただいま~!! シュート! ちゃんといい子にしてた?」


 いつものように3日後にナビ子が帰ってきた。


「当たり前だろ。女遊びなんかしてない。それに……冒険者ギルドで依頼も達成したんだ」


 アズリアとの密談の後、俺は言い訳の為に冒険者ギルドで依頼を受け、達成させた。


「えええっ!? 依頼!? なにそれ。何でアタイがいない間に依頼なんか受けちゃってるのさ!」


 案の定ナビ子は娼館のことではなく、依頼の方に意識を向ける。


「ほら、例の下水道の依頼があっただろ? あれがまだ残っていたんだ。ナビ子はあの依頼受けたがらなかったし、丁度いいかなと思ってさ」


 最初に見かけてから1ヶ月近く経つのにあの依頼はまだ残っていた。

 だから、その依頼を受けることにした。

 まぁ色んな意味で大変だったが。


「依頼の話は後でするからさ。先にナビ子の話を聞かせてくれよ」


「うん。あのね、また新しく一人こっちに来たみたいだよ」


「えっ!? 来たって……プレーヤーが?」


「うん。だからこれでシュートを入れて4人だね」


「今度はどんな条件でやって来たんだ?」


「あのね。グローリークエストで初の大型イベントがあったの。それの最短クリアだよ」


 そんな条件もあったのか。

 俺が知っているのは、ガチャコンプ、ランキング10週1位、改造、ノーダメクリア、ガチャを一回も回さずにクリア、対人戦で百連勝の6種類。

 それに今回の大型イベント最短クリア……か。


「あと3つは何なんだ?」


「えっとね……1000万ダウンロード記念の抽選と、ストーリーで攻撃不可クリア、それからプレイ時間2400時間経過かな」


 1000万ダウンロード記念でアクティブプレーヤーに抽選で1名にメールが届く。当たったらメチャクチャ幸運ってことだ。

 ちなみに4ヶ月で700万ダウンロード。

 1000万ダウンロードをするか分からないが、十分ヒットしているっぽい。


 ストーリー攻撃不可は、プレーヤーではなく、パーティー仲間のみで戦闘しプレーヤーは何もせずにクリアという隠し縛りプレイをする。

 動画配信などしている人が縛りプレイで投稿する……とかでもない限り実現しそうにない。


 プレイ時間2400時間は、リリース開始から4ヶ月なので、リリース開始時点から毎日24時間起動し続けていれば到達している。

 まぁそんな人は居ないだろうし……いたとしても、1日10時間くらいか?

 なら240日必要になる。……最短であと3ヶ月位かな?


 う~ん。どれも時間がかかりそうな条件ばかりだ。

 ……運営は今すぐ行動を起こすとかは考えてなさそうだから、少しは安心だな。


「……今回運営はカード化に関して何か言ってたか?」


「うん! 属性武器の合成で性能が違う発見とか褒めてたよ。それに順調にレベルが上ってる所も評価してたよ。来月にはレベルMAXになるかもって期待してた」


「レベルMAXになったらどうなるんだ?」


「さぁ? どうなるんだろうね。気になるから早くMAXにしようよ!」


「……それなんだけど、少しレベル上げは止めようと思うんだ」


 アズリアと話して時間稼ぎするって決めたから、来月にレベルMAXとはいかない。


「えええっ!? なんでなんで?」


 俺の言葉が予想外だったようで、ナビ子が驚く。

 まぁ今までが今までだから驚くよなぁ。


「ほら、今までずっとレベルを上げることばかり考えていたじゃないか。だから一旦落ち着いてひとつずつ能力の再確認をしたいんだ。新たな発見もあるかもしれないだろ?」


「でも、複数枚合成の解禁とか待ち望んでたんじゃないの?」


「まぁ確かに気になるけど……今のブランクカード合成は俺だけじゃどうにもならないから、ちょっとモチベが……ね」


「別にアザレアじゃなくても、ラビットAとかに頼んでパパっとやっちゃえばいいんじゃない?」


「それがモチベの上がらない原因だよ。いつでも出来ると考えちゃうのが……ね。それにカードの種類も増えないし、自分では唱えないから、魔法はどうしても優先度が下がるんだ」


「それはなんとなく分かるけど……」


「まぁナビ子が帰る前に行ったように、近い内に遠出もする予定だしな。レベル上げと調査をしていたら一向に出掛けられないじゃないか」


「あっそうだよね! 遠出をするんだったよ!」


 どうやら無事に誤魔化されてくれたようだ。


「後は何か聞きたいことはある?」


 ちょうどいい。

 アズリアと話したことでいくつか聞いてみよう。


「運営ってさ。俺が来る前にこの世界の調査をしてたんだよな?」


「うん。監視カメラでこの世界を見て回って色々と調べてたの。それがどうかした?」


「いや、今もそれをしてるのかなぁって思ってさ」


「今はしてないよ。実は監視カメラがモンスターに壊されたりして、あまり回収できなかったから、調査した結果でスタート地点にぴったりな場所を選んで、シュート達を送り込む計画に切り替えたの」


 なるほど。

 じゃあアズリア達が見つけたのだけじゃなく、他にもこの世界に残っているのがあるのか。


「それがどうしたの?」


「いや、今もそこら辺を飛んでるなら、リアルタイムでレアなモンスターが居る場所とか発見できるかもしれないじゃないか」


「それは自分で見つけなくちゃ。それが冒険でしょ」


「まぁそうだけどさ」


「じゃあ最後にお土産ね。まずはいつものお酒と食材。それと今回は石鹸とかティッシュとか消耗品だよ」


「消耗品はアザレア達へのプレゼントだな」


「うん、そう!」


「それなんだけど、作り方の本とか持ってこれない? ファーレン商会で量産すれば、今度から必要ないだろ?」


「それはいいけど……本だと全部日本語で書かれているよ」


「……それは俺が頑張って翻訳し直すよ」


「まぁシュートが頑張るならそれでいいけど。じゃあ次はシュートの話を聞かせてよ! 依頼ってどんなんだったの?」


 ナビ子は無邪気に尋ねる。

 この世界に来てからずっと一緒にいた相棒。

 俺はこれからナビ子に隠し事をしながら生活することになると思うと……心が痛んだ。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。

先日数日お休みした後も、変わらずに読んでくださる方が多いようで本当に嬉しく思います。


ブクマや評価、感想も本当にありがとうございます。

本当に励みになっております。


誤字報告もありがとうございます。

最近また少し誤字が増えているようなので、気をつけたいと思っておりますが……本当に助かります。


さて、今回で3章「ライラネートの日常」が終了となります。

次回からは2~3話、番外編的な感じでナビ子不在時の下水道依頼の話をお届け。

特にストーリーには関係ない話なので、飛ばして問題ありません。


その後4章の開始となります。

4章はライラネートから少し離れて冒険する予定です。

タイトルは「片翼のドラゴン」


もしよろしければ、引き続きお読みいただけましたら幸いです。

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