第126話 妖精進化
引き続いて合成するのはゴブリン。
ただ、こういってはゴブリン達に失礼だが、ゴブリンの合成はそこまで面白みがない。
何故なら、ゴブリン戦で既に星4以上の個体はあらかた登録してある。
合成結果が分かっているので、何に進化するかのワクワク感がない。
まぁ本来はこれがあるべき姿なんだろうけどね。
「よし。じゃあホブAから順番に並べ」
「ゴブ!」
ホブが勢いよく飛び出す。
一瞬コイツもラビットAのように、最後がいいと言い出すかと思ったが、そんなことはなかった。
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ゴブリンジェネラル
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、力づく、剣術、逆境
個別スキル:棒術、魔力探知、リーダーシップ
ゴブリンの将軍。
攻守のバランスのよいゴブリン最強の存在。
こと戦うだけならば、伝説のゴブリンキングより脅威となる存在といえよう。
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やはりホブAはゴブリンジェネラルになることを選んだ。
まぁキング以外ではジェネラルがリーダー的存在だもんな。
あの時戦ったジェネラルは既にスキルになっているから、手に入ったスキルは既に知っている。
力づくは相手のスキルや魔法、耐性をある程度無視して攻撃できる。
俺が威圧を受けたのはこのスキルのせいだ。
状態異常無効の敵に状態異常を食らわせることも出来るので、シャドービー辺りに覚えさせたら強いかもしれない。
逆境はピンチの時に全能力、耐性が向上する。
フェアリーのサフォケイトを打ち破ったのは、逆境と力づくの組み合わせだったみたいだ。
「ゴブガブ!」
ホブAは進化を確認して、満足そうに頷く。
ホブAはあの時のジェネラルよりも、もっと強いゴブリンジェネラルになってくれるだろう。
「じゃあ一旦下がってろ。他のゴブリンも進化させる」
「ガブ」
ホブAは大人しく下がる。
今までだったら、ここでワガママ言いそうだけど……ゴブリンのリーダーとしての自覚が生まれたのかな?
リーダーシップのスキルはまだ詳細がわからないけど、今の態度なら納得だ。
……ラビットAにも見習ってほしいな。
引き続きゴブリンを次々と進化させていく。
――――
ゴブリンガーディアン
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、鉄壁、身体強化、自己治癒、囮
個別スキル:地の素質
ゴブリンの守護者。
頑丈な上に非常に高い回復力を持つ。
魔武器でもない限り、物理で戦うのは諦めたほうがいい。
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ゴブリンガードの進化。
ギルマスが準備していた中堅冒険者パーティーが勝てないくらい頑丈だ。
これ……魔法耐性や状態異常耐性のスキルを与えれば、無敵になるんじゃなかろうか?
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ゴブリンスナイパー
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、必中、魔力変質
個別スキル:鷹の目
ゴブリンの狩人。
ゴブリンハンターとは違い、自力で矢を生成できる。
遠距離から攻撃できるため。上位種のゴブリンパーティーと戦う際には、姿がなくとも注意が必要。
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ゴブリン戦ではナビ子に聞いた話だと、敵のゴブリンスナイパーに一番苦労したんだそうだ。
俺が返還したカードモンスターの半分以上はゴブリンスナイパーのせいらしい。
やはり意識しない場所から攻撃を受けるとどうしようもないらしい。
まぁその分殺傷能力は低いから、返還も間に合ったようだが。
スキルの魔力変質は、自分の魔力を具現化するスキル。
ゴブリンスナイパーは矢に変換していたようだけど、色々と使い勝手の良さそうなスキルだ。
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ゴブリンアークメイジ
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、火の覚醒
個別スキル:火の技量、風の素質
ゴブリンメイジの進化。
ゴブリンメイジよりも強力な魔法を使用する。
また、複数の属性を使用する個体もいる。
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ゴブリンメイジは6体いたんだが、それぞれが素質から覚醒に強化され、個別スキルに別の属性が1種類追加されていた。
現時点ではメイジと殆ど変わらないが、メイジの覚えられなかった星4の魔法を作ったら活躍してくれることだろう。
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ゴブリンネクロマンサー
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、闇の覚醒、アンデッド召喚
個別スキル:人形遣い
死者召喚出来るゴブリン。
もしゴブリンの集団と戦うことがあれば、真っ先に倒すべきゴブリン。
ゴブリンネクロマンサーを残していると、倒したゴブリンがゴブリンゾンビとして襲いかかってくることだろう。
ゴブリン種の中でも特に稀少種であるため、出会うことはまずない。
――――
ゴブリンネクロマンサーは新規追加のゴブリンだ。
流石にレアすぎて集落にも居なかったらしい。
まぁあの場に居たら、もっと苦戦していたに違いない。
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ゴブリンアサシン
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、気配隠匿、暗殺技術、身軽、闇の覚醒
個別スキル:暗器術
気配を消して忍び寄るゴブリン。
いつの間にか貴方の背後にいるかもしれない。
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……説明文がこええよ!!
いったいどこのホラー作品かって感じだ。
レッドキャップから進化させたんだが……要するに暗殺者ってことだ。
以上がゴブリンの古参。
まだ登録されているゴブリンがいるが……古参以外の進化は後回しだ。
そして最後に俺の癒やしであるウィッチの合成だ。
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ゴブリンミスティック
レア度:☆☆☆☆
固有スキル:威圧、自然の祈り、地の覚醒
個別スキル:風の覚醒、器用、母性、下剋上
慈愛の心を持つゴブリンが進化した姿とも言われているが、ゴブリンに慈愛の心があるはずがなく、ゴブリンキングやゴブリンネクロマンサーよりも目撃がない幻のゴブリン。
魔法や自然の力を使うとされいるが、詳細は不明。
――――
幻のゴブリン……。
レシピを確認する。
慈愛の心を持った中級以上の女性ゴブリン×中級以上の女性ゴブリンになっていた。
「うんうん。やっぱりウィッチは俺の癒やしだな」
慈愛の心とか……優しさの塊だな。
それに進化したことによって、美しさと神秘度が増している。
「別にウィッチはシュートにだけ優しいわけがないからね。皆に優しい……お母さんみたいな存在だよ」
……もしかして全員がそう思っているから母性なんてスキルが有るのか?
どんな効果があるんだろうか?
「しかし……ゴブリンミスティックか。ミスティックは少し言いにくいし、ミストってのはどうだろ?」
ミス子にしたら失敗ばかりしそうな感じになりそうだし、子を付けたらナビ子が怒るだろう。
でもミストなら……ミストさんってよくない?
ウィッチ……いや、ミストの表情が華やぐ。
相変わらず喋らないようだが喜んでくれているようだ。
「シュートってさ。ウィッチ……じゃなかった。ミストのことになると、本気を出すよね。本当に狙ってない?」
「なんでだよ。でも……古参に関してはちゃんとした名前をつけようと思っているんだ」
俺は以前から考えていたことをナビ子に伝えた。
今更だけど、AとかBじゃなくて、ちゃんとした名前をつけてあげたい。
「そうだね。以前は反対したけど、進化しても性格は変わらないし、今はアタイも賛成だよ」
ナビ子だってユニコとかグラちゃんとか言ってるもんな。
「まっ、名前に関しては後日にして、今は合成の続きをしよう」
ゴブリナ関係の進化もいくつかあるが、これも古参じゃないので後回し。
次はいよいよ妖精――フェアリーとピクシーだ。
2人は間違いなく特殊進化だろうから楽しみだな。
まずはフェアリーから。
もう1人フェアリーを準備して同種合成を行う。
――――
ティターニア
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:風の極意、大自然の加護、妖精王召喚、不可視
個別スキル:魅了、カリスマ、お調子者
妖精の国を治めている妖精女王。
意外と浮気性。
――――
ティターニアきたー!!
やっぱり妖精女王と言えば彼女だよな。
しかし……説明文が酷くない?
さっきのインセクトクイーンもそうだけど、女王に厳しくないか?
中々気になるスキルも多いが……詳しい内容はピクシーの方を進化させてから。
……同じくティターニアになるのかな?
――――
メーブ
レア度:☆☆☆☆☆
固有スキル:闇の極意、月の加護、妖精騎士召喚、催眠術、不可視
個別スキル:吸収、魅了、お調子者
妖精の国を治めている夜の女王。
夜遊びが盛ん。
――――
こっちはメーブか。
確かにメーブも女王だな。
2人ともフェアリーやピクシーの頃から少し背が伸びている。
とは言っても、誤差の範囲。相変わらず手乗りサイズだ。
気品というか佇まいというか……そこにいるだけで女王っぽい雰囲気を出している。
「しかし何でこんなに投げやりな説明文なんだ?」
「アタイに聞かれても分からないよ。書いた人が女王に嫉妬でもしてるんじゃない?」
嫉妬って……まぁいいや。
「浮気性なんて失礼ですわ」
「夜遊びが盛んなんて……そんなことありませんのに」
……今の言葉は俺でもナビ子でもない。
目の前にいる2人の女王から発せられた。
「しゃ、喋ったああああ!?」
つ、ついに俺のモンスターが、意味のある言葉を発した。
えっ? これで本当に意思疏通ができるの?
「わたくしはティターニア。マスターに絶対の忠誠を誓います」
「妾はメーブ。我が主の命に従います」
2人の女王が俺の前に跪く。
突然そんな風に畏まれても困る。
「えっ、え~っと。あんまり気を負わずに気楽にな。せっかく話せるんだから、色々と聞きたいし」
ウチはもっとフランクにだ。
「ええ。マスターがそう仰るのであれば」
「妾が知っていることでしたら、何でもお答えいたしますわ」
そう言った後に2人はチラリとナビ子を見る。
「少なくとも、そこにいる紛い物よりは役に立ってみせますわ」
「アタイなどという粗忽者には負けませんわ」
「何でいきなりアタイをディスってるのよおおお!!」
……どうやらこの辺りはフェアリーとピクシーの頃から変わらないみたいだ。
……だからお調子者かな?




