第13話 ホーンラビット
本日2話目の投稿です。
「さて、じゃあホーンラビットの解体をやってみようよ」
あれから数時間。
ようやく完治したらしいナビ子が元気に言う。
先ほど狩ったホーンラビットはカード化した状態のままだ。
――――
ホーンラビットの死体【素材】レア度:☆
まだ死にたての死体。
上質の素材になるかどうかは貴方次第。
――――
一応死体もレア度有りで図鑑登録できるんだ。
しかもジャンルは【素材】。
要するに再生しないから、素材を何回も抜き取ることは出来ないってことか。
しかし……やっぱり俺が解体することになるんだな。
「なぁ、カード化のスキルを使って簡単に解体できないのか?」
「あまーい!! シュートはまだまだそんなレベルじゃないでしょ!」
ナビ子に怒られた。
やはり無理か。
「ん? そんなレベルってことはレベルが上がると解体も出来るようになるのか?」
「出来ると言ってもまだまだ先のことだよ!」
やっぱり出来るのか。
次のレベルは合成だとして……一体何レべまで上げる必要があるのか。
「なぁ……言語翻訳みたいに、レベルが上がると何ができるか教えてくれないか?」
「知ってどうするのさ」
「早くここまで鍛えようってモチベーションに繋がるだろ」
「う~ん。でも……」
もう一押しだ
「じゃあさ、詳しい内容はその時でいいからさ、合成みたいにスキル名でいいから教えてくれよ」
「……分かったわよ。どっちみちレベル5までは『旅のしおり』にも載ってるし……じゃあレベル5までね」
そういえば言語翻訳もレベル5までだったな。
というか、しおりに載ってるのかよ!!
じゃあ俺がナビ子を起動しなかったら普通に知れた情報ってことだよな。
勿論旅のしおり自体は今でも読めるんだが……読もうとしたらナビ子に『セクハラっ!』って言われるんだよなぁ。
しおりが本体だから言わんとしたいことは分かるが、ナビゲーション機能の役目としては失格じゃね?
「とりあえず現時点で知ってるのはレベル1の【カード化】とレベル2の【合成】までだね。レベル3が【レシピ合成】でレベル4は【登録】。そしてレベル5が【クールタイム短縮】だよ」
なるほど。
レベル1……カード化
レベル2……合成
レベル3……レシピ合成
レベル4……登録
レベル5……クールタイム短縮
ってことか。
レベル5のクールタイム短縮は分かるけど、レベル3のレシピ合成とレベル4の登録がよく分からない。
「なぁレシピ合成と登録って何なんだ?」
「詳しい内容はその時でいいんでしょ」
くそっやっぱり教えてくれないか。
「あれっ? ウサギを解体するスキルは?」
この中にそれらしいものは見当たらない。
「だから【分解】はまだまだ先って言ったでしょ」
……そっかそっか。
分解ってスキルがあるのか。
レベル6以上みたいだけど……なんか色々と出来そうなスキルの気がする。
それにしてもナビ子は今の失言に気づいていないようだ。
意外とポンコツAIだよな。
それとも全て計算のうちか?
「ほらほら~アタイがちゃんと教えてあげるから、早く解体するわよ!!」
……うん、計算じゃないな。
****
ナビ子先生のスパルタ解体講座により、無事ホーンラビットの解体は終わった。
ホーンラビットの血抜きをして皮を剥いで……思い出しただけで気分が悪くなる。
「もうシュートは軟弱なんだから。これからは毎日のようにやるんだから、早く慣れてよね」
……図鑑の為には解体しなくちゃならないが、これ……慣れることはあるのか?
「それで……結果はどうだった?」
「ああこれだよ」
俺は図鑑を見せる。
――――
ホーンラビットの肉【食材】レア度:☆
ホーンラビットの肉。
焼いて食べると美味しい。
――――
――――
ホーンラビットの角【素材】レア度:☆
ホーンラビットの角。
武器の素材となるが、擂り潰せば漢方の材料にもなる。
――――
――――
ホーンラビットの皮【素材】レア度:☆
なめして皮革にすれば色々な素材となる。
――――
――――
ホーンラビットの尻尾【素材】レア度:☆☆
上質なホーンラビットの尻尾。
アクセサリーの素材となる。
――――
――――
ホーンラビットの魔石【素材】レア度:☆
ホーンラビットの魔石。
――――
「尻尾以外は全部星1なのね。解体が上手になれば、魔石以外は星2になるよ!」
「やっぱり星2の方がいいの?」
「当たり前でしょ。素材として合成すればよりよい結果になるし、お肉は美味しくなるよ」
「ちなみにこれより悪くなることはあるのか?」
「血抜きが不十分だったり、皮に傷が多かったりすると、名前は同じでもレア度なしになるね。上質、普通、粗悪品に分類されるよ」
確かに尻尾の説明文に上質と書いてあった。
今回は尻尾が上質、それ以外が普通ってことか。
ちなみに粗悪品はレア度無しだそうだ。
図鑑に登録されないが、レア度のある普通と上質なら別々に図鑑登録される。
……図鑑埋めのためにも解体が上手くならないといけないな。
「はぁ……」
「何ため息ついてるのよ」
「いや、解体は気が滅入るなと思ってな」
「でも、解体の先にはご褒美が待ってるじゃない。ほら、魔石について説明するよ」
「魔石の説明?」
「うん。魔石からモンスター図鑑を埋めるって話をしたよね。実は魔石はそれだけじゃないの」
「それだけじゃない?」
「そう。魔石は大きく分けて3つの使い道があるの。一つ目が換金。冒険者の生計は魔石と素材が8割を占めているらしいわよ」
「換金か……確かにお金は後々必要になるだろうな」
しかし、ただ売るだけってのは勿体ない気がする。
「そして二つ目がモンスターカード。カードにすれば、さっきのモンスターと全く同じ性格や強さのモンスターを仲間にできるよ」
ついさっき解体したモンスターと同じモンスターを仲間に出来るとか……なんか複雑だな。
「そして三つ目がスキルカードを手に入れること。魔石は魂って言ったよね。魔石をカード化することによって、そのモンスターが持っているスキルをランダムで1つ手に入るの」
スキル……どうやって手に入れるかと思ったら、魔石で手に入れるのか。
「注意してほしいのが、一つの魔石で出来るのはモンスターカードにするか、スキルカードにするか、どちらかしか選べないの。一旦選んだら、もう魔石には戻らないからね」
「つまり……この魔石はホーンラビットにするか、このホーンラビットが持っていたスキルにするか。はたまた売却するかの三択になるってことだな」
そして、選んだら変更できないと。
「そういうこと」
……売却はあり得ない。
モンスターかスキルか……
「スキルって何が手に入るか分からないのか?」
もし事前に分かっていて有用なスキルだったらスキルに変換してもいいと思う。
「今回の場合はこのホーンラビットが持っていたスキルだけど……このホーンラビットがどんなスキルを持っていて、何が手に入るかはこの時点では分からないの」
「ちなみにモンスターって個々で持っているスキルが違うのか?」
「モンスターの種族が持っている固有スキルは同じだよ。でもそれ以外は人間と同じようにバラバラだよ。まぁバラバラと言っても種族によって取得しやすいスキルがあるから、似たようなスキル構成にはなるね」
人間と違うのは固有スキルは必ず持っている。
それ以外の個別スキルは持っているモンスターと持っていないモンスターがいて、それは分からないと。
「固有スキルの数は種族によって違うけど、個別スキルは弱いモンスターなら0~3、強いモンスターになったらいっぱい持ってるよ」
人間も大体1~3って言ってたし、強い人は10個くらい持ってると言ってたからあまり変わらないか。
「ちなみにホーンラビットの固有スキルって何か知ってる?」
「ホーンラビットは【脱兎】が固有スキルかな。個別スキルは【危険察知】や【嗅覚】辺りを持ってることが多いと思うよ」
「そのスキルって俺も使えたりするのか?」
人間じゃ取得できないモンスター専用スキルがあるって言ってた。
【脱兎】はホーンラビットの固有スキルのようだが専用スキルではないのかな?
それから【嗅覚】も怪しい気がする。
「うん。ホーンラビットの固有スキルもモンスター専用スキルじゃないから使えるよ」
どうやらこの3つに関しては俺でも使えるスキルのようだ。
まだ図鑑登録は出来ないから、詳しい説明文はないが、ナビ子から3つのスキルの簡単な内容は聞いた。
【脱兎】は敵から逃げる時に足が速くなるスキル。
敵に見つかっても逃げられる可能性が高くなる。
【危険察知】は自分の身に危険が迫ると勘が働く。
俺がホーンラビットに近づけなかったのが、このスキルの所為だ。
危険察知があれば、逃げ足はいらない気がする。
そして危険察知は気配察知のスキルを持っているナビ子がいれば必要ない。
【嗅覚】は鼻が利くスキル……ではなく、探し物が見つかりやすくなるスキルなのだそうだ。
木の実やキノコ集めに役に立ちそうなスキルだ。
俺の図鑑集めには必要そうだが……それなら嗅覚のスキルを持つホーンラビットを仲間にして集めさせた方が効率が良さそうだ。
「よし、決めた。今回はモンスターカードにしよう!」




