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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第3章 ライラネートでの日常
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第117話 鑑識眼

 5日後。

 俺は約束通りファーレン商会に属性武器を納品した。

 いや、正確には約束以上だが。


 約束は剣とナイフと槍を各属性10本。

 俺は更に10本ずつと、オマケで杖を準備してきた。

 別に追加報酬を貰うため……ではなく、単純に興が乗って作りすぎただけなのだが。

 まぁ買取してくれなかったら、ゴブリン軍団に持たせればいいだけだから、何の問題もない。


「わずか5日でこんなに……」


 目の前に武器を並べられたアズリアが完成品を見て感嘆する。

 そして、1本1本手に取り確認していく。

 おそらく鑑定しているのだろうが……まさか、ここにある武器を全部確認していくのか?

 それだとメチャクチャ時間が掛かるんだが。


 鑑識眼は間違いなく鑑定系スキルだろう。

 そういえば、先日の火の剣の時も触っていたけど、手に取らないと鑑定できないのか?


「これ……微妙に性能が違いますね」


 アズリアが2本の剣を見比べながら言う。


「……分かるのか?」


 できるだけ普通に答えたが、俺は内心かなり驚いていた。

 アズリアの言う通り、同じ名前の剣でも微妙に性能が違うのだ。


 ――――

 火の剣【武器】レア度:☆☆☆


 火属性の鉄剣。

 この剣で斬られると、傷口が火傷する。

 再生持ちのモンスターの再生能力をある程度抑える。

 ――――

 これがファイアやファイアアローで合成した剣。


 ――――

 火の剣【武器】レア度:☆☆☆


 火属性の鉄剣。

 この剣で斬られると、傷口が火傷する。

 鉄の剣よりも耐久力がある。

 ――――

 そしてこれがファイアガードで合成した剣だ。


 他の属性もそうだが、どうやら攻撃魔法が威力が上がる、もしくは追加効果があり、防御魔法が耐久値が上がるっぽい。


「……アズには違いが分かるのですね」


 アザレアが悔しそうに呟く。

 ここにくる前にアザレアにも見せたけど、アザレアの観察眼では火傷までしか見抜けなかった。


「ええ。本当に細かな違いでしかありませんが……制作過程の素材の違いでしょうか? 性能が違うのに、武器の名前が同じなのが興味深いですね」


 どうやら鑑識眼は観察眼以上の鑑定能力を持っているようだ。


「なぁ、この剣を調べてみてくれるか?」


 観察眼に興味を覚えた俺は、1本の剣を取り出す。

 見た目はどこをどう見ても普通の鉄の剣にしか見えない。


 ――――

 鉄の剣【武器】レア度:☆


 鉄を鍛えて作られた片手剣。

 ロングソードよりも短く、扱いやすい長さに調整されている。

 魔力を流すことにより、ファイアの魔法を放つことが出来る。

 5回唱えると折れる。

 ――――


 鉄の剣にファイアをセットした剣だ。

 アザレアはこれをただの鉄の剣としか認識しなかったが、アズリアはどうなんだろう?


「こっ、これは!?」


 アズリアが驚愕の表情を浮かべる。

 どうやらファイアが付与されていることに気づいたようだ。


「魔剣? いえ、鑑定では鉄の剣となっております。ですが、回数制限はあるけれど、ファイアを唱えられる……シュートさん。いったいこの剣はどうなっているのですか?」


「さぁ? それは作った人にしか分からないと思う」


 まぁ作った人は俺なんだが。

 しかし、回数制限まで分かるとは……もしかしたら、図鑑の説明文と同程度の能力があるのか?


 ……もしかしたら異界シリーズも読み取れる?

 試してみたいけど……いやいや、もし本当に読み取れた場合、デメリットがヤバすぎる。


「この鉄の剣は納品してくれないのですか?」


「……してもいいけど、鉄の剣ということしか分からないから、金貨1枚でしか売れないんじゃない?」


「むぅ。確かにそうですが……なんだか非常に勿体ない武器ですね」


 この剣の価値が分かるのは、俺とアズリアだけ。


 実際に試してみればいいのだろうが、回数制限があるから試しも出来ない。

 ちなみに星2の魔法なら3回、星3魔法なら1回しか使えなかった。

 だけど、鉄の剣よりも強い武器……ロングソードなら星1魔法が7回、星2と星3魔法も1回増えた。

 武器の性能で、魔法の使用回数も変わるようだ。


 もちろんカード状態なら使用回数も回復する。

 だから、まさに俺専用……というよりゴブリン専用武器だな。


「まぁしかたありませんね。今回は属性武器だけで十分です。もちろん全て買い取らせていただきます」


「えっ? いいの?」


 全部ってことは……いくらになるんだ?

 俺が計算する前に、アズリアが小さな金貨袋を取り出す。

 ……でも、これじゃ金貨千枚どころか、百枚も入ってないんじゃないか?


「ええ。ここに白金貨30枚ありますから、お納めください」


「はっ、白金貨30枚!?」


 俺は慌てて袋から1枚取り出す。

 確かに金じゃない。もちろん銀とも違う。

 白金――プラチナだ。

 白金貨って確か金貨100枚分だよな。

 あまり市場に出回らないって聞いていたから完全に失念していた。

 ……あるところにはあるんだな。


「ええ。あまり金貨をジャラジャラさせるのも大変だろうと思いまして」


 確かに金貨3000枚分を持ち歩くのは……


「って!? 多いよ! 追加の分を合わせても、せいぜい白金貨25枚だぞ」


 正確な金額は分からないけど、少なくとも元の3倍じゃないことは分かる。


「品質がよろしいので、少しだけ色を付けさせて頂きました」


 少しが金貨500枚分ってどうなのよ?


「アズ……何を考えているのです?」


 アザレアも訝しむ。


「別に何も考えてませんよ。ただ今後ともいい取引をしたいと思いまして」


 看破が発動してないので、嘘ではなさそうだが……アズリアは俺が追加武器を持ってくることは知らなかったはず。

 それなのに白金貨30枚を準備してたってことは、もしかしたら俺が追加武器を出さなくても、白金貨30枚を出す予定だったってことだ。


「……言っておきますが、条件は変えませんよ」


 なるほど。

 こっちに恩を売って、条件……詮索の方かな。

 秘密を聞き出そうとしたのかもしれないな。


「ふふっ姉さんは疑り深いですね。そんなことは考えてませんよ」


 これも看破が発動しない。

 本当に考えてなかったのか?

 ……いや、アズリアはフェイクのスキル持ちだった。

 もしかしたら俺の看破でも読み取れないのかもしれない。


「シュートさんも。今回仕入れた分が完売しましたら、こちらとしても十分利益が出ますので、どうぞお気になさらず」


「……完売するの?」


「これだけの品質でしたら、数日で完売するでしょう」


 すごい自信だな。

 まぁ疑っても仕方がないし、お金はいくらあっても困らない。


「じゃあそういうことなら、今回はお言葉に甘えさせてもらうよ」


「あとお約束していました借家の件ですが……」


 あっそうだ。

 その話もしないといけなかったんだ。

 予算が一気に増えたし、良いところが見つかるといいんだけど。


「本来ですと、これから案内したかったのですが、思ったより検品に時間が掛かりそうでして……シュートさんさえ良ければ、今回納品した商品の販売後にご案内するということでどうでしょう?」


 まぁ倍以上の商品を納品したのは俺だから、予定が狂うのは仕方がない。


「別に構わないよ」


「販売は3日後を予定しております。よろしければ見に来てください」


「ああ。もちろん行くよ」


 流石に気になるもんな。

 アズリアは初日に顔を出せば、次の日以降は従業員に任せられるとのことだったので、4日後に物件巡りをすることになった。

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