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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第3章 ライラネートでの日常
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第115話 商談終了

「では、最初の納品は5日後ということで」


 結局、魔武具じゃなく、属性武器の取引をすることになった。

 とりあえず初回は無属性以外の7属性分の剣とナイフと槍を各10本ずつ――計210本納品することになった。

 アズリアはその属性武器を金貨10枚で販売するとのこと。


 俺への支払いは、売上金額の半分じゃなくて、販売金額の半分だから、売れようが売れまいが関係ない。

 だから納品した5日後に金貨1050枚が支払われる。

 

 仮に売れなくても、この程度の在庫ならファーレン商会も全く問題ないとのことだ。

 まぁもし大ヒットして完売するようなことになれば、次に繋がるので、是非とも売れてほしいのだが……


「ですが、今から素材を持ち帰って、本当に5日後に納品が可能なんですか?」


 素材の鉄の剣は、帰りにファーレン商会の倉庫から貰うことになっている。

 別に210回合成をするだけだから、正直明日でも問題ない。

 ただ、作ってるのは俺じゃないことになっているから、今回は5日にしたが……それでも早かったようだ。


「まぁなんとかなるんじゃない?」


 俺は適当にはぐらかす。

 それよりも俺は5日後に金貨1050枚も手に入ることに十分満足していた。

 手元の金額も合わせると金貨約1300枚。

 これだけあれば、土地だって買えるんじゃない?


「では他に何かありますか? 何もなければ倉庫へ案内しますが」


「あっ、全く関係ないことだけど、ひとつだけ聞いてもいい?」


 ついでだから、土地について聞いてみよう。


「何でしょう? スリーサイズですか?」


 アズリアが笑いながら答える。

 それは非常に気になるところだが……


「本っ当にクズ男ですね」

「シュートさいてー」


 案の定、横にいる2人が侮蔑の目を向ける。

 全く……俺が言ったわけじゃないのに。

 理不尽じゃない?


「違うっての。そうじゃなくて……土地ってどうすれば買えるか知ってる?」


「はっ? 土地ですか?」


 俺の質問にアザレアとアズリアが同じように首をひねる。

 そういえば、アザレアにも何も話してなかったな。

 しかし……本当、仕草までそっくりだ。

 首から上しか見なかったら、区別がつかないぞ。


「あの……どういう目的で土地を買おうと思っているのでしょうか?」


 アザレアが先に質問する。


「別に深い意味はないよ。ただ宿から引っ越そうと思っているだけだ」


「あの宿でなにか問題が?」


 アザレアが少し不安げに尋ねる。

 自分が薦めた宿だから、気になるんだろう。


「いいや。あの宿はいい宿だし、サフランもいい子だけど……やっぱり他人がいる場所では、人の目が気になってね。宿や集合住宅じゃなくて、一軒家に住みたいんだ」


「ああ。そういうことですね」


 俺のスキルのことを知っているアザレアはそれだけで理解したようだ。


「確かに妖精を連れていると目を引きますものね」


 アズリアもナビ子を見て勝手に納得したようだ。


「土地と言うから驚きましたが、要するに空き家を探しているのですね」


「そういうことだ。まぁ家はこっちでどうにでも出来るから、とりあえず土地だけでもいいかなって」


「家がどうとでもなる?」


「まぁそれは秘密ってことで」


「むぅ確かに詮索はしないと約束しましたが……」


 アズリアがむくれる。


「シュートさん。わたくしには教えていただけるんですよね?」


 それを見てドヤ顔のアザレア。


「……機会があったら」


「むぅ。絶対ですよ」


 むくれ方まで似なくてもいいだろうに。


「それで……どう?」


「……借家ならともかく、土地となりますとかなり難しいですね」


 う~ん。借家か。

 やっぱり買うとなると難しいか。


「そうだ! では私が今住んでいる家に一緒に住みませんか?」


 アズリアがとんでもない事を言いだした。


「はぁ!?」

「ちょっ!? アズ何を……」


「だって、わざわざ借家を借りるなんて勿体ないでしょう。幸い私が今住んでいる家は広いですし……まぁ1人引きこもりがいますが」


 引きこもりってのは、さっき言ってた双子の妹のアゼリアのことだろう。


「いくら広い家でも駄目に決まっているでしょう!」


 当然のことだが、アザレアが猛反対する。

 そういえば一緒には住んでないみたいだけど、アザレアはどこに住んでるんだろう?


「では、姉さんがシュートさんと一緒に暮らせばよいではありませんか」


「なっなななななにを言われるのですか!?」


 いやいや、流石に動揺しすぎだろ。


「あっ姉さんは確か集合住宅に住んでいましたね。それでは無理ですね」

「むぐぅ……」


 勝ち誇ったアズリアと悔しそうなアザレア。

 しかしむぐぅって……。

 これ以上からかうと、何かに変貌してしまいそうだ。


「それ以上姉をからかうのは止めてやれ。どっちにしろ俺は一人暮らしをする予定だ」


「残念ですが、仕方がないですね。では私の方でいくつか良さそうな物件を調べておきます」


 どうやらアズリアが家を買った不動産に当たってくれるそうだ。

 アズリアの口利きなら、安く済む可能性があるそうだ。

 流石は大商会の会長だ。


 物件は5日後の納品までに調べてくれるそうだ。

 どのみちアズリアとの取引が終わらないとお金がないからちょうどいい。

 物件に関してはアズリアに全部任せることにして、まだ唸っているアザレアを連れて帰ることにした。



 ****


「ふふん。あのアズの顔……スッキリしました」


 アザレアが晴れやかな顔を浮かべる。

 アザレアが言っているのは倉庫でのことだろう。

 俺が属性武器の素材を一瞬で消し去ったので、アズリアは呆気にとられていた。

 もちろんアズリアは知りたそうにしていたが、それは契約で詮索しないことになっている。

 だからアザレアがさっきまでのお返しとばかりにやり返していた。


 ったく、本当に大人げない姉妹だ。


「でも……アズもちゃんと頑張っているんですね」


 アザレアがしみじみと呟く。


「わたくしは商売のことは分かりません。支援ギルドでもシュナさんに任せっきりです」


 シュナさん。

 初めて聞く名前だけど、おそらく昨日言ってた管理マネジャーのことかな。


「わたくしはシュートさんとアズの商談を聞いていることしか出来ませんでしたが……アズは一人前の商人の顔をしていました」


 俺とアズリアがずっと打ち合わせをしている間、アザレアはずっと無言で書記に徹していた。

 あれは邪魔しないようにじゃなくて、話についてこれなかったのか。


「アズリアを協力者として迎えたのは正解だったかもしれません。わたくしだけでしたら、魔剣の在庫を抱えて途方に暮れていたことでしょう。全く……いつの間にあんなに頼りになる妹になったのか」


 アザレアは自嘲気味に笑う。

 優秀な妹に比べて自分は……とでも思っているのだろうか。


「まぁ適材適所ってやつだな。アザレアはアザレアの分野で俺を助けてくれ」


 俺はアザレアに手を差し出す。


「ふふっ畏まりました。商売に関してはアズには劣るかもしれませんが、それ以外の部分では負けません」


 そういってアザレアは力強く俺の手を握り返した。

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